2023年5月22日。日経平均株価がバブル期以来、33年ぶりに高値を更新しました。
最近は、物価上昇や少子化対策に伴う社会保険料の負担増加など、気が重くなるニュースばかりでしたね。そんな中、日本の景気が上向いてきたと感じられるニュースがでて、嬉しい気持ちになる方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、突然、給与や年金がアップするわけではありません。特に、年金においては、急激に増額されるような仕組みではないため、現在のシニアの年金受給額をベースに老後の資産形成を考える必要があります。
そこで今回は、今のシニアの年金受給額について「厚生年金15万円」にフォーカスして確認していきます。
いざ年金受給が始まると「振込額が少ない…」とガッカリする方も少なくありません。具体的に年金生活をイメージできるよう、年金から天引きされるものも含めて、一緒に詳しく見ていきましょう。
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1.【日本の公的年金制度】「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造
最初に、日本の公的年金制度についておさらいしておきましょう。
日本の公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造です。
1.1 1階部分:国民年金(基礎年金)
- 加入対象:原則20歳から60歳未満の日本に住む全ての方
- 保険料:一律(年度によって異なる)
- 年金額:2023年度満額(年額)79万5000円×調整率(※既裁定者:79万2600円)
※480ヶ月に未納期間がある場合は差し引かれます
1.2 2階部分:厚生年金
- 加入対象:主に会社員、公務員
- 保険料:報酬比例制(標準報酬月額に保険料率を乗じて決定)※事業所と折半
- 年金額:加入期間や納付保険料によって決定。国民年金に上乗せで支給
一般的に国民年金だけを受給する自営業やフリーランス、専業主婦(主夫)の方よりも、国民年金と厚生年金の両方を受け取れる会社員や公務員の方が老後の年金額は多くなります。
では、2023年度の新規裁定者(67歳以下)の国民年金満額(年額)79万5000円に対して、厚生年金の受給額はどれくらいなのか。見ていきましょう。
2.【老齢年金】「厚生年金」ひと月15万円超受け取れる人はどれくらいいる?
厚生労働省の「令和3年度 厚生年金・国民年金事業の概況」より、今のシニアの厚生年金の平均受給額を見ていきましょう。
2.1《厚生年金保険(男女計)》平均年金受給額(月額)
平均年金月額:14万3965円
- 1万円未満:9万9642人
- 1万円以上~2万円未満:2万1099人
- 2万円以上~3万円未満:5万6394人
- 3万円以上~4万円未満:10万364人
- 4万円以上~5万円未満:11万1076人
- 5万円以上~6万円未満:16万3877人
- 6万円以上~7万円未満:41万6310人
- 7万円以上~8万円未満:70万7600人
- 8万円以上~9万円未満:93万7890人
- 9万円以上~10万円未満:113万5527人
- 10万円以上~11万円未満:113万5983人
- 11万円以上~12万円未満:103万7483人
- 12万円以上~13万円未満:94万5237人
- 13万円以上~14万円未満:91万8753人
- 14万円以上~15万円未満:93万9100人
- 15万円以上~16万円未満:97万1605人
- 16万円以上~17万円未満:101万5909人
- 17万円以上~18万円未満:104万2396人
- 18万円以上~19万円未満:100万5506人
- 19万円以上~20万円未満:91万7100人
- 20万円以上~21万円未満:77万5394人
- 21万円以上~22万円未満:59万3908人
- 22万円以上~23万円未満:40万9231人
- 23万円以上~24万円未満:27万4250人
- 24万円以上~25万円未満:18万1775人
- 25万円以上~26万円未満:11万4222人
- 26万円以上~27万円未満:6万8976人
- 27万円以上~28万円未満:3万9784人
- 28万円以上~29万円未満:1万9866人
- 29万円以上~30万円未満:9372人
- 30万円以上~:1万4816人
※国民年金部分を含む
厚生年金の平均受給額は月額14万3965円でした。
ボリュームゾーンは8~10万円未満です。また、今回フォーカスしている「15万円超」の年金(月額)をもらっているシニアは、全体の半数以下でした。
2.2《厚生年金保険(男女別)》平均年金受給額(月額)
厚生年金は、加入期間や年収によって受給額が決まります。出産や育児を機に働き方を変えるケースが多い女性は、男性よりも全体的に平均年金受給額が少ないようです。
- 男性平均年金月額:16万3380円
- 女性平均年金月額:10万4686円
男女別に見てみると、男性「16万3380円」、女性「10万4686円」と6万円もの差があることがわかりました。
近年、働き方改革や労働環境の整備、子育て支援制度などが進み、女性もキャリアを積み上げやすい社会になりつつあります。しかし、「出産・育児」については、女性の方が働き方をセーブするケースが多いと考えられます。
女性については、男性に比べて将来の年金額が少なくなるリスクが高いという事は留意しておきましょう。
3. 【老齢年金】「厚生年金」から天引きされるもの4つ
年金受給開始後は、年金振込通知書で1回に支払われる「年金支払額」を確認することができます。ただし、年金振込通知書の年金支払額は控除前の金額です。ここから保険料や税金など が天引きされるので把握しておきましょう。
3.1 厚生年金から天引きされるもの①:介護保険料額
現役時代に給与から天引きされていた「介護保険料」は、年金から控除されます。
3.2 厚生年金から天引きされるもの②:国民健康保険料・後期高齢者医療保険料
介護保険料と同様に、国民健康保険料や75歳以上になると後期高齢者医療保険料が年金から天引きされます。
3.3 厚生年金から天引きされるもの③:所得税額および復興特別所得税額
社会保険料と各種控除額を差し引いた後の額に5.105%の税率を掛けた額が記載されています。
3.4 厚生年金から天引きされるもの④:個人住民税
所得税と同様に、個人住民税も天引きされます。
4.【老齢年金】「厚生年金」振込額が少ない…落胆の理由
給与明細と実際に振り込まれる支給額の差にショックを受けたことがある人は多いのではないでしょうか。年金に関しても、各種社会保険料や税金が差し引かれるため、実際の受取額にショックを受ける方は多いです。
最近は少子化対策で社会保険料の負担が増えるかもしれない、といったニュースもよく耳にします。私たちが年金を受け取る頃になっても、まだまだ社会保険料の負担が増加していることも十分に考えられるでしょう。
最終的に、社会保険料や税金の負担がどのくらいになるかについて予想をすることは難しいです。しかし、あらかじめ「年金からは社会保険料や税金が差し引かれる」と把握しておくと、実際の振込額とのギャップに落ち込むことは避けられるかもしれませんね。
5.老後に向けて早いうちから対策を
年金制度は、現役世代が支払う社会保険料をもとに高齢者へ支給される仕組みとなっています。そのため、少子高齢化が囁かれている日本では、「年金だけではやり繰りできない」という声も非常に多いです。
いま現役世代で働いている私たち現役世代は、想像以上に厳しい老後が待ち構えているかもしれません。
老後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、早いうちから老後資金の準備にとりかかってみてはいかがでしょうか。
参考資料
鶴田 綾