三菱商事(8058)と三井物産(8031)は共に直近の通期決算で史上最高益を更新し、かつ純利益1兆円を達成しました。

両社とも事業投資先からの利益の増加や市況の改善などが収益のドライバーとなっています。

また、堅調な業績を背景に、増配も発表しており、株主還元に積極的な姿勢でも共通しています。

今回は三菱商事と三井物産の業績や株価について見ていきましょう。

※株式分割の影響は、株価や配当金、株式数など全て遡及修正して株価を調整しています。
※記事中で記載の株価は全て終値となっています。

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1. 三菱商事(8058)の2022年度通期決算は増益で純利益1兆円規模に

まず三菱商事の2022年度の通期決算は純利益で1兆1807億円となり、初の純利益1兆円を達成しました。もちろん前年比の9375億円からの増益となります。

セグメント別の状況を見ると、多くの事業で増益を達成しております。食品産業においては海外事業の固定資産の減損が響いて減益となっているものの、それ以外の事業については投資先の持分利益の増加などによって増益となっています。

また、金属事業では原料炭の市況上昇なども利益の加速要因となりました。

セグメント別の純利益(増益幅上位5事業と減益となった食品産業を抜粋)

出所:三菱商事株式会社「2022年度決算及び2023年度見通し 説明会資料」をもとに筆者作成

2023年度については資源価格高騰の影響の剥落や為替の影響をふまえて減益を想定しておりますが、引き続き9200億円という高水準の純利益を想定。

LNG事業の損益改善や一部銅山での生産量増加を見込んでいます。

2. 三井物産(8031)も純利益1兆円越えで過去最高益を達成

三井物産も2023年3月期の純利益は1兆1306億円で前年の9147億円から増益。史上最高益の更新、かつ初の1兆円越えを達成しました。

こちらは金属資源については鉄鉱石価格の悪化や投資事業からの受取配当の減少に伴い減益となりましたが、原油・LNG価格の高騰を捉えたエネルギー事業が増益のドライバーとなりました。

三井物産の事業別純利益(「その他」を除く増益幅上位3事業と減益3事業を抜粋)

出所:三井物産株式会社「中期経営計画2023の総括及び2024年3月期事業計画」をもとに筆者作成

次年度にあたる2024年3月期の事業計画では、三井物産も減益の見通しとなっています。

2023年3月期の1兆1306億円から8800億円の見通しです。同社は金属資源とエネルギーにおいて、それぞれの市況悪化を理由にそれぞれ1488億円、1794億円の減益を予想しており、減益の主要因となっています。

3.【三菱商事と三井物産】配当金の状況は?

三菱商事は2022年度の配当水準を年間180円とし、前年比+30円としています。

さらに2023年度も200円とさらに配当を増やす予想を立てています。2023年5月時点で確認できる2016年度以降は一貫して増配となっています。

三菱商事の配当推移(年間)

出所:三菱商事株式会社「配当情報」をもとに筆者作成

三井物産についても2018年3月期以降は、概ね増配傾向となっています。

三井物産の配当推移(年間)

出所:三井物産株式会社「株主還元」「中期経営計画2023の総括及び2024年3月期事業計画(説明骨子)」をもとに筆者作成

どちらも株主への積極的な還元姿勢が伺えます。

4.【三菱商事と三井物産】株価推移を確認

両者の去年末から5月12日までの株価推移も確認しましょう。

三菱商事の株価推移(2022年12月30日~2023年5月12日)

出所:各種資料をもとに筆者作成

三菱商事は3月の金融セクター不安が波及したタイミングでは一時的に株価が下がる局面もありましたが、両社とも堅調な業績を背景に、年初来では概ね右肩上がりの堅調な株価推移となっています。

三井物産の株価推移(2022年12月30日~2023年5月12日)

出所:各種資料をもとに筆者作成

三井物産はやや3月の下落幅が大きかったものの、それを除くと概ね右肩上がりとなりました。

参考資料 

宮野 茉莉子