皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで調査グループ長を務めます柏原延行です。

今回のコラムは月刊バージョンとして写真付でお送りします。9月に入り、涼しくなってきましたね。私は多摩川の近くに住んでおり、川縁に絶好のジョギング・コースがあるのですが、7月、8月は温度と湿度が高く、ついついウォーキングに変更していました。しかし、このような環境でも、私よりも年上とお見受けする諸先輩が大勢ひたむきに走られていました。そろそろ、私もジョギングに変更しないといけませんね。

サボり気味のウォーキングにおいてすら、大量の汗を書きます。最近、私の母親はスポーツドリンクでは追いつかずに、熱中症対策に、専用の経口飲料水を飲むように医師から勧められています。私もスポーツ後に経口飲料水を試してみたのですが、効果があるといわれるだけあって、相当塩辛く感じられます。

そこで、最近愛飲しているスポーツ後のドリンクは「生姜をつけ込んだ蜂蜜とリンゴ酢」を氷と炭酸水で割ったものです(生姜は体を温めるとされるため、スポーツ後に適した飲料であるかは定かではありません)。蜂蜜の甘さ、リンゴ酢の酸味、生姜のピリピリ感、氷の冷たさ、炭酸の刺激が相俟って、とても爽快な飲み物となります。本当に効用があるかは別として、スポーツ後の疲れた体を癒やしてくれるように感じます。

お気に入りのドリンク(炭酸水を注ぐ前、筆者撮影)

「生姜をつけ込んだ蜂蜜とリンゴ酢」を自分で作るのは簡単ではないように思われるため、蜂蜜屋さんが販売している商品を利用しています。私の使用量では自動販売機の500ccドリンクよりは廉価であると考えています。生姜好きの方は、是非お試しください。

さて、中央銀行総裁なども参加した有名なシンポジウムが8月24~26日に開催されました。米ワイオミング州ジャクソンホールで毎夏開かれ、ジャクソンホール会議とも称されます。ジャクソンホール会議は、1978年が初回の伝統あるシンポジウムで、中央銀行幹部や経済学者などが参加し経済政策を討議するため、市場の注目度が高いイベントとして知られます。

今年のジャクソンホール会議については、「欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁がユーロ高を牽制しなかったこと」が市場の材料となり、ユーロ高が進展しました(図表1)。 

図表1:ユーロ/米ドルの推移(直近半年)
2017年2月28日~2017年8月28日:日次

出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。

ユーロ高が進展したことは大きなニュースですが、今回のジャクソンホール会議を「ユーロ高が進展した会議」とだけ捉えることは私には抵抗感が大きいです。そこで、今回のコラムでは、本会議でのドラギ総裁、および米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長の講演内容から私が受けた印象をお伝えできればと考えます。

今回のシンポジウムのテーマは「活力に満ちたグローバル経済を育む(Fostering a Dynamic Global Recovery)」です。したがって、我々投資家にとっての会議の大きな意義は、「中央銀行幹部などが、実務に即して、経済成長のためには何が必要であると考えているか」を把握することにあると思われます。

この観点からは、今回のシンポジウムで発信された主要なメッセージは、経済成長には、「①多国間のルールに基づく自由貿易が大切であること」、「②適切な金融規制が必要であること」ではないかと考えます。

まず、ドラギ総裁は、「自由貿易は脅威に晒されている。このことは、自由貿易の後退に対応する政策こそが、活力のある成長を目指す複合的な政策のポイントであることを意味する(筆者による仮訳:openness to trade is under threat, and this means that policies aimed at answering this backlash are a vital part of the policy mix for dynamic growth)」と発言し、自由貿易の重要性を強調しました。

そして、ドラギ総裁は、「(自由貿易の後退に対応する)政策の一部は国内で実行されるが、一部は他国間の協力によってのみ効果を発揮する(同上、Some of those policies can be implemented domestically, but some can only be effectively enacted through multilateral cooperation)」と続けています。

まさに、保護主義的で、かつ環太平洋パートナーシップ(TPP)協定や北米自由貿易協定(NAFTA)などの多国間貿易協定に否定的なトランプ大統領を選択した米国や、EU(欧州連合)離脱を決定した英国の政治的な姿勢に対して、反対の意思を明確に示したものと評価できると考えます。

次に、金融規制に関して、イエレン議長は、「規制の枠組みのどのような調整も控えめにとどめ、最近の改革の成果である大規模金融機関の頑強性の向上を保つ必要がある(筆者による仮訳:any adjustments to the regulatory framework should be modest and preserve the increase in resilience at large dealers and banks associated with the reforms put in place in recent years)」と発言し、過度の金融規制緩和に反対する立場を明確にしています。

この発言も、米国の与党・共和党が目指していると思われる金融規制の緩和を牽制したものと評価できると考えます(なお、発言の順序はイエレン議長が先です)。

この講演を受けて、私は中央銀行の独立性に対する信認を強くするとともに、米国や欧州で金融政策の正常化が極めて緩慢ながらも確実に実施されるとの印象を持ちました。

米欧中央銀行のトップ2人の講演内容が、米・英という主要国の国民が支持する(支持した?)政治的な流れに、「反対する姿勢をあからさまにした」と評価できることに、一種の爽快感を感じるのは私だけでしょうか?

(2017年9月1日 9:00執筆)

柏原 延行