INPEX(1605)の株価は2022年末にかけて下落が続いたのちは、一時緩やかな上昇を見せた後、3月の金融セクターの不安を背景に再び2022年末付近の価格まで下落したと考えられます。足元にかけては、再び回復傾向にあります。
石油の開発を主要事業としているINPEXは原油価格や景気動向の影響を受けやすいという特徴があると考えられます。今回はINPEXについてみていきましょう。
※株式分割の影響は、株価や配当金、株式数など全て遡及修正して株価を調整しています。
※記事中で記載の株価は全て終値となっています。
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1. INPEX(1605)の株価は2023年初までは原油価格の影響を受けたか
2022年11月~2023年1月までのINPEXの株価とアメリカの原油価格の指標の一つである原油先物の推移を並べると次のようになります。
INPEXは日本有数の石油開発の会社で、原油の販売・輸出により収益を挙げています。そのため原油価格が上昇すれば同社の収益拡大要因、下落すれば悪化要因となるため、原油価格との連動性が高いのが特徴のひとつといえるでしょう。
2022年の末にかけてはフランスをはじめ欧州諸国で高騰するエネルギー価格に対する支援策などが出されたため、燃料源となる原油の価格下落が進む一因になったと考えられます。2023年1月ごろまで下落は続いたのち、追加で値を下げる材料がなかったため、下げ止まりに至ったと考えられます。
この時期のINPEXの株価は他に注目すべき材料がなかったこともあり、原油価格と高い連動性を持って推移していたと思われるでしょう。
2. 2022年12月期の好決算が株高を後押しか
原油価格が下げ止まったのちは、1~3月初めに横ばいが続きましたが、この間INPEXの株価は概して堅調でした。
2月始めに2022年12月期の年度決算が発表され、売上高が前年同期比+87%の2兆3246億円、純利益が同+97%の4382億円となるなど堅調な決算になりました。
円安や販売単価の増加効果はある程度予測されていたものの、相場要因ではない販売量の増加も売上拡大に寄与したことは投資家に好感されたと思われるでしょう。
3. 3月の金融セクター不安の波及
2023年3月に発生した米シリコンバレーバンクの破綻やクレディ・スイスの買収にともなう影響は金融セクターだけの株安にとどまらず、幅広いセクターの株価を下落させることとなりました。INPEXのような資源開発系の企業は、景気動向に反応しやすい傾向にあります。
3月の件ではさらなる経済危機に発展するのではという懸念も一時的に高まったため、景気に敏感な同社の株は日経平均と比較しても大きく下落したと考えられます。
INPEXは3月7日の終値1540円から3月20日に1323円まで下落し、14%強の下落率となっています。
下落率でいうと同期間の日経平均の下落率の3倍弱となっており、景気敏感株であるがゆえに下落幅が大きくなったと思われます。
4. 2023年度の配当金予想は年間64円に
3月の下落は追加の悪材料がなかったため一時的なものにとどまり、足元は株価は回復傾向となっております。2022年12月期の決算のあとには、増配や自社株買いの方針が発表されています。
配当については、2022年度の実績を62円と前期比+14円の増配としたうえ、2023年度も64円とさらなる増配方針を発表。2020年以降の3年連続増配を目指していることが明らかになっています。
さらに、業績が悪化しても配当の下限は30円として株主還元への姿勢をコミットしたことが好感されたと思われます。
また、同社は2022年12月期に自社株買いを前期比+500億円となる1200億円の規模で行っています。2023年12月期においても業績を見ながら実施する方針であると公表しています。
一時的な株安の影響が一巡した後は、このような方針が株価の上昇を後押ししたものと考えられます。
参考資料
- 株式会社INPEX「2022年12月期決算説明会」
- 株式会社INPEX「株主還元・配当情報」
- Silicon Valley Bridge Bank「Silicon Valley Bridge Bank – Open for business」
- UBS「UBS to acquire Credit Suisse」
- CREDIT SUISSE「Archegos info kit」
- Hausse des prix de l’énergie : renforcement des dispositifs d’aides aux entreprises
宮野 茉莉子