4月に初任給を受け取り、社会の一員になったことを実感された新入社員の方はとても多いでしょう。
しかし、5月に受け取る給与は初任給より少なくなることが多いです。ただし、理由を知っておけば慌てることはありません。
今回は新入社員の給与が5月から少なくなる理由や、天引きされる社会保険料について解説していきます。
初任給と5月の給与はなにが違う?
新入社員が5月の給与を受け取ると、初任給よりも減っていて「え?」と思うこともありますが、これは「社会保険料が天引きされる時期のズレ」によって生じるものです。
社会保険料の納付方法には「当月徴収」と「翌月徴収」の2種類があります。
当月徴収とは、4月に発生した社会保険料を4月中に徴収する、というもの。
一方で翌月徴収は、4月分の社会保険料を5月(翌月)に徴収する仕組みです。
そのため、お勤めの会社が「給与は当月払い + 社会保険料は翌月徴収」の仕組みになっていると、5月の給与が初任給より少なくなる現象が起きるのです。
社会保険料が控除されるタイミングについて会社から周知されないケースもありますが、もし5月の給与が少ない時は「翌月徴収なんだな」と思っておけばよいでしょう。
給与明細の「控除」欄の内訳を解説
実際に給与から天引きされている内訳について解説していきます。
給与明細のサンプルは各企業で書式が異なりますが、天引きされる内容はほぼ同じです。
それでは見ていきましょう。
●健康保険料
健康保険には会社員や公務員が加入し、翌5月から天引きされるようになります。
月給や賞与に健康保険料率をかけた額を事業主と折半して支払う仕組みです。
医療保険者(健康保険組合・共済組合など)ごとに違いますが、同じ「全国健康保険協会」であっても保険料率が都道府県によって異なります。
詳しく知りたい方は全国健康保険協会HPをご覧いただくか、勤務先の窓口で確認しましょう。
●介護保険料
40歳以上になると、天引きされる健康保険料に介護保険料が上乗せされます。
納付する保険料については、健康保険事業を運営する医療保険者(健康保険組合・共済組合など)ごとに計算方法が異なります。
ご自身がどの医療保険者に加入しているかは、健康保険証下部に記載されている「保険者名称」で確認できますよ。
●厚生年金
厚生年金の保険料も、会社員や公務員が加入し、翌5月から天引きされるケースが多いです。
月給や賞与に保険料率をかけた額を事業主と折半して支払います。
●雇用保険
雇用保険料は初任給からも天引きされています。給与をもらうたびに天引きされていると覚えておきましょう。
雇用保険は、将来失業した時に受け取れる失業保険などの支払いに当てられます。2023年度の雇用保険料率は、厚生労働省のHPでもご確認いただけます。
●源泉徴収税(所得税)
源泉徴収税とは、給与を受け取っている人の所得税を会社が代わりに納めるものです。
本来であれば1月1日から12月31日の1年間で受け取る給与に課税されますが、正確な税額を事前に計算するのは困難です。
そのため、毎月の給与からだいたいの所得税を天引きし、年末調整で過不足を調整しています。
●住民税
住民税が天引きされるのは、入社2年目の4月からです。会社員の場合はその年の6月〜翌年5月まで、毎月分割で支払います。
住民税は前年の収入から計算される都合上、天引きが翌年以降となるのです。
そのため、入社2年目からの給与明細を見て驚かないようにしましょう。
●給与からの控除合計
控除の欄に記載された健康保険〜住民税までの金額を合計したものです。
●差引支給額
いわゆる「手取り額」になります。「総支給額」 - 「控除合計」で算出されたものです。
なお、会社が独自に取り入れている福利厚生費が天引きされる可能性もあります。
給与での「基本給」と「手取り額」の違い
手取り額と混同しやすい言葉に「基本給」がありますが、これは各種手当を含まない給与のベースとなる賃金です。
給与は「基本給 + 各種手当」の金額から社会保険料などを天引きし、最後に残ったものが「手取り額」です。
ちなみに、基本給は残業手当やボーナス、退職金を算出する時の基準になります。
手取り額は一定ではない。今から計画的に貯蓄をしよう
入社1年目は天引きされる保険料や税金が少ないため、ついお金を使いすぎてしまうかもしれません。
しかし、2年目以降はしっかりと天引きされるため、手取り額が少なくなった時に慌てないようにしましょう。
また、入社直後からつみたてNISAやiDeCoなどを活用し、計画的に資産を作るのも大切です。
参考資料
- 電子政府の総合窓口e-Gov「健康保険法「(保険料の源泉控除)第百六十七条・2・3」」
- 電子政府の総合窓口e-Gov「厚生年金保険法「(保険料の源泉控除)第八十四条・2・3」」
- 全国健康保険協会「令和5年度の保険料率」
- 全国健康保険協会「令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)」
- 厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内」
小見田 昌