敬老の日も間近。夏の帰省で世話になった親にこの日、改めて何かしたいと考えている人もいると思います。
旅行、グルメ、お花や手作りの記念品などのプレゼントもいいものですね。しかし、この機会に親の生活がどのような状況か、よく観察し、子供として対策できることがあればしておきたいものです。今回は老親の生活回りにまつわるトピックをまとめました。
親元への不審電話
ある日、会社で働くS子さんのもとに母親から電話がかかってきました。母親は都内自宅に一人暮らし。S子さんは会社近所にマンションを借りていて別居しています。さて、母親からの電話で聞いたのは「都内有名デパートのお客様係を名乗るKなる人物から電話で、あなたのカードが使われているが偽造らしい。今、手元にあるカードを確認させてください」と言われたそう。「娘から折り返します、と返事したからデパートに問い合わせてみて」といいます。
「それはおかしな話」と感じたS子さん。早速デパートに電話するとお客様係にKはいないとの返事。どうやら電話で詐欺の新手法のようです。デパート側では「最近当社を名乗る不審な電話がお客様の元にかかっております」とホームページで注意喚起していました。幸いS子さんの母親は騙されずに済みましたが、危なっかしい例もあります。
話好きすぎる独居母
W太郎さんの独居母Xさんのもとには「〇〇さんの紹介です。あなたのお手持ちの和服を高価買取します」と男から電話がかかってきました。Xさんには〇〇という名前の友達がいたため、すっかり信用。聞かれるままにあれこれ回答。
男は「これから着物の査定にうかがいます」といいます。さすがに見知らぬ男に訪ねてこられるのは怖いので「別居している息子に聞いてから」と断りました。いきさつを聞いたW太郎さんは「駄目じゃないか、お母さん。見ず知らずの男に一人暮らしだとか、離れて暮らしている息子に相談するなど情報を与えちゃ!」と強く注意。Xさんは話し好きなので、これまでも電話がかかってくると誰彼なしにいろんな話をしています。前から「すぐ切るように」と何度も注意しますが「それじゃあ、相手に失礼だから」となかなか改めません。
そこでW太郎さんはせめてもの対策にと非通知番号はつながらないサービスの導入を手配。常時、留守番電話も設定しました。さらに持たせている携帯電話にW太郎さんから定期的に電話していますが、気が抜けない状態です。
節約志向から熱中症寸前に
B男さんが電車で40分くらい離れた場所に独居する母Z子さんの元を訪ねると、酷暑なのにクーラーもつけず、居間のサッシが開けっ放し。Z子さんは脱水症状を起こしているのか、横たわっており「3日ほど水しか飲めない」と弱っていました。慌てて病院に連れて行き事なきを得ましたが、Z子さんは何かにつけ節約志向で特に「クーラーをつけると電気代がもったいない。窓を開けておくと風が入ってくる」とクーラーをつけたがりません。
「外の温度は35度だよ。そんな風に当たっていると具合が悪くなるよ」。B男さんはサッシに大きな字で「天気予報で30度を超えそうだ、と伝えていたら、迷わず窓を閉めクーラーをつけること」と書いた紙を貼り付けました。そして、「節約しても具合が悪くなれば医療費などがかかるんだよ」と説明し、1ヶ月クーラーをつけ続けても熱中症になるよりはマシなのだと言い聞かせました。しかし、その後もZ子さんはクーラー=贅沢という考え方からなかなか脱却できないようです。
気づかなかった親の生活困窮
D也さんの元に親が借りている住居の大家さんから配達証明が送付されてきました。内容は親が借りている住居家賃が半年以上滞っており、更新期に入っても更新書類の返送や更新料の支払いもしないまま、月日が経過しているとあります。保証人のD也さんに対する家賃の支払い請求と今後についての問い合わせだったのです。早速、親に電話すると、アルバイト職を失い、生活するのもやっとなのだとしぶしぶ告白します。元気でやっている、とばかり思っていた親が生活困窮状態に陥っているとは驚きでした。さっそく家賃の安いアパートに引っ越しさせる手配をし、滞納分の家賃を肩代わりすることに。
滞納家賃と諸費用合わせて思いがけない出費になりましたが、聞けば親は貯蓄ゼロ。年金だけでは生活できないといい、今後も金銭的に支援しなければいけないようです。D也さん自身のマンションのローン支払いや子供の教育費もかかり頭が痛い日々。
D也さんは今、親ともっと早い段階から老後生活について話をしておけばこんな展開にはならなかったかも、と省みているところです。
塩漬けのまま大量保有する株式、どうすれば?
F子さんの母親は株式投資が趣味。しかし、買う一方で売らないため、ベストタイミングを逃し、多くは売るに売れない塩漬け状態の株を大量保有しているようです。それなりに配当や優待品の送付があるため、特に親子で株式に関して突っ込んだ話をすることはなかったのですが、最近、母親は物忘れが激しくなり、うつろな表情でいることも多くなったように感じられます。
万一のことがあれば自宅や株式等、相続するのはF子さんなのでいろいろ気にはなっているのですが、そういう話もできかねて、つい手つかずに。証券会社からは母親と同じ証券会社にF子さん名義の口座を開設し、毎年、時価110万円未満の株式を贈与しておけば、万一の時、慌てなくて済むし、場合によっては相続税も軽減できると聞くのですが、話を切り出せない状況が続いています。
親の再婚が思わぬ展開に
長年連れ添った妻と死に別れ、ふさぎ込んでいた老父。ところが再婚専門の見合いパーティで娘のV子さん(40歳代)と年齢の違わない相手と再婚することになったと連絡してきました。「父の老後の面倒を見てくれるなら」と思い、会ってみましたが、一目で「あ、この相手は後妻業だ」とぴんと来ました。70歳代後半のしょぼくれた老父と地味な服装ながら肉食系の匂いがする再婚相手はどうみても不釣り合い。大反対をしたものの老父は彼女との再婚に踏み切りました。それまでの住まいを処分して都内に中古マンションを購入。新婚生活をスタートさせたのです。
ところが、3ヶ月ほどした頃、老父は身一つでV子さんのもとに転がり込んできました。入籍し、同居を始めた途端、再婚相手は連日、お金のことばかり言い始めたそうです。これに嫌気と恐怖を感じた老父は結婚解消を申し出、慰謝料としてマンションを渡すのと引き換えに離婚届を出すことで決着。その後、日を置かず飛び出してきたのだそう。
結局、ひと財産巻き上げられた老父。「もとから女性がそばにいないとさびしくて耐えられない人ですが、いい薬にはなったと思います」といいながら、V子さんは割り切れない気持ちでいっぱいです。
まとめ
いかがでしたか。遠く離れていたり、日頃忙しかったりすると、なかなか気づかないことがあります。親から言い出せないでいるお困りごと、本音があるかも知れないな、という気持ちで今一度、親のことを考えてみたいですね。問題が見つかったとしてもここで挙げたいくつかの例のように時間をかけて解決策を見出していくことが必要になるケースもあるでしょう。今回の記事が親とコミュニケーションをとるキッカケになれば幸いです。
木村 佳子