最近では女性のおひとりさまも社会において定着してきたように見受けられるでしょう。
50歳代のおひとりさま女性の中には、仕事に励んでいる方やご自身のペースでゆったりとした暮らしを営まれている方も多くいるはずです。
おひとりさまだと自分の好きなことに没頭しやすく、自宅で他人に気遣わずに過ごせ、給与のほとんどを自分のために使えることも多いです。
とはいえ、この年代におけるおひとりさまの多くが心の片隅で老後に関する不安などを抱えているのではないでしょうか。
厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年3月分結果速報」によれば、物価上昇を加味した実質賃金が12カ月連続で減少となっており、生活を苦しく感じる方も多いと思います。
本記事では50歳代のおひとりさま女性のリアルについて、満足度や月々の支出額、貯蓄額などの観点から見ていきましょう。
【増えるおひとりさま】男女ともに未婚率は年々「増加」へ
内閣府「令和3年度少子化の状況及び 少子化への対処施策の概況」では50歳時の未婚率の割合を男女別に明らかにしています。
男性の50歳時の未婚率は1970年から一貫して右肩上がりとなっています。
一方、女性の50歳時の未婚率は2005年頃を境に急速的に上がっているのが特徴です。そして、2010年頃には10%を超え、現在は17%以上ものおひとりさまがいます。
一昔前であれば、大卒や短大卒の女性であっても結婚を前提とした雇用形態での入社は珍しくありませんでした。
現代社会では多くの企業においてジェンダーロールが取り去られているため、女性でもキャリア思考であれば男性同様にキャリアを重ね、年収をアップしやすくなりました。
50歳代おひとりさま女性の「半数」が現在の生活に満足している
ジブラルタ生命保険株式会社は「おひとりさまに関する調査2022」で、全国の20歳〜69歳の未婚男女4700名を対象にした、おひとりさまの満足度についての調査結果を公表しています(2022年12月22日公表)。
上記の調査における50歳代おひとりさまの満足度は、満足している派とそうではない派が半々となっています。
50歳代になるとさまざまな経験を重ねる中で自分に合った暮らし方が分かってきたり、自分が置かれている状況の中で幸せを見つけることがうまくなったりします。
その一方で、現在の生活に満足している50歳代女性のおひとりさまは半数いるとはいえ、他の年代と比べると少ない点は注目に値するでしょう。
定年退職が近づき、自分や周囲の老いを実感するようになってくると、将来について不安に陥りやすくなるのではないかと考えられます。
しかし、60歳代になると、20歳代に次いで現在の生活に対する満足度が高まります。
60歳代の生活が始まってみると、その年代ならではの楽しみを見つけられる人や、なるようになっていると感じる人が多いのではないかと思われます。
50歳代女性の月々の支出の平均額と費目構成は?
総務省統計局「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果 結果の概要」は単身世帯の消費支出の費目構成を年代別に出しています。
50歳代女性の月々の支出額の平均は17万6193円です。毎月の支出額は40歳代より下の年代よりも高くなっています。
50歳代になると40歳代未満よりも構成に占める割合において「住居」が少なくなる一方、「被覆及び履物」「教養娯楽」「交際費」などが増えています。
このくらいの年齢になってくると、自分の趣味や好きなことなどをする余裕が出てくる人や、お金を費やしてでも楽しみたいと思えることに出会える人が増えてくるといえるでしょう。
注意しなければならないのは、50歳代になると「保険医療」が生活に占める割合が40歳代未満よりも高くなる点です。歳を重ねるごとに心身に不調をきたしやすくなるため注意してください。
50歳代はそれよりも下の年代と比べて月々の支出額がやや高いとはいえ、大きな差はありません。
この結果からも、おひとりさま女性も給与が年功序列などで著しくアップしている傾向にあるとは考えにくいかもしれませんね。
50歳代のおひとりさまの貯蓄額の平均と中央値は?
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和4年調査結果」を元に、おひとりさまの平均貯蓄額を年代別にをまとめてみました。
20~70歳代「おひとりさま」貯蓄の平均・中央値
- 20歳代 176万円・20万円
- 30歳代 494万円・75万円
- 40歳代 657万円・53万円
- 50歳代 1048万円・53万円
- 60歳代 1388万円・300万円
- 70歳代 1433万円・485万円
※上記の調査結果には女性だけでなく、男性も含まれています。
50歳代の貯蓄額の平均は1048万円です。
60歳代、70歳代になると、平均貯蓄額はさらに上がっています。贅沢はできないかもしれませんが、大きな出費がなければ14万円前後の年金収入(※)があれば問題なく暮らしていける貯蓄額という見方もできるでしょう。
※厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 」によると、厚生年金の平均月額は14万3965円となっています。
まとめにかえて
おひとりさまの女性に対して経済的にも時間的にも余裕があるといったイメージを抱かれている方は多いかもしれません。
たしかに、結婚・出産を機に独身時代よりも美容や交友などにかけられるお金が減ったという女性も少なくないでしょう。
しかし、50歳代おひとりさま女性の毎月の支出の平均は17万円程度と堅実さが垣間見える金額となっています。また、貯蓄額の平均についても老後2000万円問題をクリアできていません。
給与の手取り額の減少、物価高、年金問題といった問題が深刻な昨今では、おひとりさまであっても経済的に余裕があるわけではなく、財布の紐を堅くせざるおえないと考えられます。
ただし、人間の幸福度は収入に比例するわけではないため、自身が置かれている環境や趣味などから現在の生活に満足されている方は多い傾向にあるでしょう。
参考資料
- 内閣府「令和3年度少子化の状況及び 少子化への対処施策の概況」
- ジブラルタ生命保険株式会社調べ「おひとりさまに関する調査2022」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和4年調査結果」
- 総務省統計局「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果 結果の概要」
- 厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 」
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年3月分結果速報」
西田 梨紗