「お値段以上。ニトリ」というフレーズが頭から離れない方も多いのではないでしょうか。そのニトリの業績は2017年2月期時点で30期連続の増収増益という偉業を達成しています。その背景について、ニトリとイケアの決算データをもとに見ていきましょう。消費者にどのように支持されているのでしょうか。
売上高は30年で50倍、経常利益は164倍
2017年2月期のニトリの売上高は5,130億円、営業利益は858億円、当期純利益(親会社株主に帰属する)は600億円。対前年度比でいずれの数値も2桁増という実績です。
ただ、それ以上に驚きなのが、30期連続で売上高と利益がともに拡大していることでしょう。1988年2月期に103億円だった売上高は2017年2月期は5,130億円になり、5億円だった経常利益は876億円にまで拡大しています。
100店舗増えるスピードがどんどん加速
その原動力となるのが、店舗数の拡大です。1988年2月期には16店舗だったものが、2017年2月期には471店舗にまで増えてきています。店舗を増やすことができているというのは、適当な立地があったというだけではなく、消費者の支持を得ながら市場を開拓し育てることができたからといえるでしょう。
2017年2月末時点で471店舗ある同社ですが、店舗数を拡大するペースも会社の成長フェーズとともに変化してきています。
1968年2月期に1店舗だったものが、100店舗となったのは2004年3月期。実にここまで36年を費やしています。
その後、2010年2月期末時点で店舗数は217店舗となりました。100店舗から200店舗を超えるのに費やした期間は6年ということになります。
ここから、200店舗から300店舗に至るまではその期間をさらに短縮しています。300店舗を達成したのが2013年2月期。つまり、約3年で100店舗増を達成したことになります。300店舗から400店舗への100店舗増にも要したのは3年。そして今、同社は400店舗から500店舗への100店舗増を2年で達成しようと計画しています。
店舗拡大ペースだけではないニトリの高収益性と強いバランスシート
ニトリの出店ペースはここまで見てきたとおりですが、同社は収益性を犠牲にしてまでも出店(投資)をしてきたということではありません。同社の営業利益率を見ると、2017年2月期の営業利益率は16.7%と、日本の上場企業でみても非常に高い水準にあります。
また、借入を増やし、財務レバレッジをかけて店舗数を増やしてきたかというと、決してそうではありません。短期と長期借入金は6億円で、総資産が4,878億円であることを考えると自己資金が店舗拡大で大きな役割を果たしたといえるでしょう。自己資本比率は2017年2月期には81%となっており、非常に健全な状況です。
イケアはどうか
では、ニトリの競合企業ともいえる外資系のイケアはどうでしょうか。
イケアは実は非常に複雑なガバナンス構造になっています。今回はそのうち代表的な IKEA Group(イケア・グループ)を見てみることとしましょう。
イケア・グループの2016年8月期(2016年度)の売上高は351億ユーロ(1ユーロ=130円換算で4兆5,596億円)。また、売上総利益は161.6億ユーロ(同2兆1,003億円)となり、粗利益率は46%。営業利益(ここではオペレーティング・インカム)は45億ユーロ(同5,849億円)となり、営業利益率は12.8%となります。当期純利益は42億ユーロ(同5,460億円)となっています。
こう見ると売上高や利益水準をみるとイケアは巨大ですが、営業利益率はニトリの方に軍配が上がります。ただ、イケアの商品群を見るとその安さに驚きますが、それでもなお2桁の利益を計上していることにも驚きます。
ちなみに、2016年8月期でイケア・グループが運営する店舗は28カ国で340店舗(北米54店舗、欧州235店舗、ロシア14店舗、アジア30店舗、オーストラリア7店舗)。それ以外に他の加盟店がイケアの店舗を運営し、世界で389店舗あります。
店舗規模や立地が異なるので、店舗数で単純な比較はできませんが、ニトリはしっかり店舗数を国内で積み上げてきたといえるでしょう。
まとめにかえて
渋谷にも出店するなど、ニトリは近年、郊外だけではなく積極的に都心にも店舗を展開してきています。車を持たない層にもますます身近になっているといえるでしょう。
とはいえ、EC市場の拡大の動きにも目が離せません。同社の通販の売上高は2017年2月期は対前年同期比で+33%増の226億円と拡大していますが、店舗拡大ペースとどのようにバランスをとっていくのかにも注目です。
青山 諭志