暮らしに欠かせない家具。その家具におしゃれさと価格面の魅力を両方求めたいというニーズは多いのではないかと思います。そうした場合、読者の皆さんはどこで買い物をされるでしょうか。無印良品でしょうか。それともニトリやイケアでしょうか。今回はイケアについて見ていきたいと思います。

イケアの売上高や利益はどのくらいか

IKEA Group(イケアグループ)の2016年8月期(2016年度)の売上高は351億ユーロ(1ユーロ=130円換算で4兆5,596億円)。また、売上総利益は161.6億ユーロ(同2兆1,003億円)となり、粗利益率は46%。営業利益(ここではオペレーティング・インカム)は45億ユーロ(同5,849億円)で、営業利益率は12.8%となります。また、当期純利益は42億ユーロ(同5,460億円)となっています。

このイケアグループの規模を日本の小売り企業と比較してみましょう。

業態は異なりますが、日本の小売企業を代表するセブン&アイ・ホールディングスの2017年2月期の営業収益が5兆8,357億円、営業利益が3,646億円です。

では、国内家具小売り大手のニトリホールディングスはどうでしょうか。ニトリホールディングスの2017年2月期の売上高は5,130億円、営業利益が858億円、営業利益率は16.7%となっています。

また、業績の立て直しを図っている大塚家具は、2016年12月期の売上高が463億円、営業損失が▲46億円という状況です。

こうしてみると、特に家具小売り分野におけるイケアグループの巨大さが分かります。

ただ、イケアグループは短期間で急激に現在のような姿になったわけではありません。2007年度に200億ユーロであった売上高は2016年度には351億ユーロとなっています。その売上高成長率を年率換算すると約6%です。着実に売上高を拡大してきたと言えるでしょう。

収益率に関して見てみると、イケアグループの営業利益率は2桁を達成していますが、上述のニトリホールディングスの収益性はイケアグループと比べても魅力的な水準にあるのではないでしょうか。

また、イケアグループの財務体質は健全です。総資産540億ユーロ(同7兆157億円)に対して、自己資本が389億ユーロ(同5兆579億円)あり、自己資本比率は72%となります。現預金や投資有価証券の合計は232億ユーロ(同3兆96億円)もあるなど、強固な財務体質と言えるでしょう。

イケアの構造とは

では、イケアは一体誰が運営し、誰がオーナーシップを持っているのでしょうか。少し複雑ですが、同社の開示資料をもとに見ていきましょう。

イケアグループのオーナーはオランダの Stichting Ingka Foundationという基金です。この基金の資金は2つの目的のためだけにしか使われません。その1つがイケアグループへの再投資。そしてもう1つはチャリティ目的への寄付です。

また、イケアグループは Ingka Holding が親会社として存在し、その傘下企業から構成されています。イケアグループの中にはセンター、小売り店、顧客対応、サービス、全社対応、資産管理などの機能が含まれています。

話が複雑になるのですが、そのイケアグループはイケアの店舗運営をする13の加盟店の1つに過ぎません。加盟店のフランチャイズ契約は Inter IKEA Systems(インター・イケア・システムズ) と結ばれ、3%の加盟料をインター・イケア・システムズに支払います。

インター・イケア・グループとは

オランダを拠点とするインター・イケア・システムズ は、Inter IKEA Group(インター・イケア・グループ)の一部です。改めて整理すると、インター・イケア・グループとイケアグループは別々の会社です。それぞれに異なる経営者と異なる株主がいます。

つまり、イケアグループだけを分析してもイケアの全貌は見えてきません。インター・イケア・グループについても見ていきましょう。

2016年8月にグループ内の再編により、インター・イケア・グループは Inter IKEA Holding を親会社として、フランチャイズ管理のインター・イケア・システムズ、そしてIKEA of Sweden、IKEA Supply、IKEA Industry Holdingを抱えることになりました。

では、インター・イケア・グループの売上高や利益はどうなっているのでしょうか。2016年はそれまでの12月から8月に決算期を変更しているため、ここでは2015年12月期の数値を取り上げます。

商品売上高は20億ユーロ(1ユーロ=130円換算で2,649億円)、フランチャイズ加盟料が11億ユーロ(同1,416億円)およびその他の収入もあり、売上収益で33億ユーロ(同4,254億円)となっています。また、営業利益は9億ユーロ(同1,121億円)です。

このように、イケアグループとインター・イケア・グループを両方見ていくと、イケアの事業規模はさらに大きいことがわかります。

まとめにかえて

いかがでしたでしょうか。2016年8月期におけるイケアの店舗は世界で389店舗。そのうち、イケアグループが運営する店舗が28カ国に340店舗あり(北米54店舗、欧州235店舗、ロシア14店舗、アジア30店舗、オーストラリア7店舗)、それ以外を他の加盟店が運営していることになります。

このように、グローバルでブランドや品質、流通を管理しながら、さらに拡大を続ける同社には注目です。

青山 諭志