「夏の甲子園大会」は日本の夏の風物詩

8月のお盆休みも終わりましたが、高校野球は熱戦真っ盛りです。甲子園球場で行われている第99回全国高等学校野球選手権大会(以下、「夏の甲子園大会」)は、もうすっかり日本の夏の風物詩と言えましょう。

夏の甲子園大会に出場するのは全国都道府県代表の49校(注:北海道は南北2校、東京は東西2校が代表)で、これは毎年変わりありません。ちなみに、来年(平成30年)は第100回記念大会として、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡の7府県も2校が代表となるため、甲子園に出場するのは56校に増加する予定です。

地方大会の参加校数は15年前のピーク時から▲324校減少

しかし、地方大会(代表校を決める都道府県大会、硬式野球部)の参加校数を見ると、現在の日本が抱える少子化・人口減少問題と、それに対処する学校教育の取り組みを垣間見ることができます。

まず、地方大会に出場する学校数は、年々減少しています。今年の参加校数は昨年より▲35校減少の3,839校となり、これで14年連続の減少となりました。平成14年と15年には過去最高の4,163校が参加したので、それ以降の15年間で▲324校減少となっています。

少子化の影響で増えつつある“連合チーム”

また、今年の地方大会には、連合チームが63あることも特徴の1つです。連合チームとは、部員が不足している複数の学校で結成するチームです。その中には、学校の統廃合が予定されているために結成された連合チームも含まれています。

少し前まで、“連合チーム”は想像できなかった事態です(離島など特殊事情を除く)。日本高等学校野球連盟(以下、日本高野連)では、原則として1校1チームとしています。しかしながら、少子化による部員不足や学校の統廃合という構造変化に対応せざるを得なくなっている事情が見て取れます。

日本高野連への加盟校数も減少が続く

なお、地方大会に参加するためには、日本高野連に加盟しなければなりません。ほとんどの加盟校が甲子園を目指して地方大会に出場します。

今年の例で言うと、加盟校数が3,989、前述したように地方大会への参加校数が3,839でした。この生じた差は、何らかの理由(不祥事による出場停止を含む)で出場を取りやめたためです。ただ、その中には、部員数が減った学校で、連合チームでの参加を断念した学校もあると推測されます。

なお、この加盟校数で見ても、ピークは平成17年の4,253校であり、現在はそこから▲264校減の状況になっています。

日本全国の高校数はもっと減少している

しかし、ちょっと待って下さい。

日本における高等学校の校数は、ピークが平成2年の5,506校、最新データ(平成28年5月時点)が4,925校です。ピークから▲581校減っています。また、日本高野連の加盟校数がピークだった平成17年の全国校数は5,418校で、そこから見ても▲493校減っています。

もちろん、減少した高校の中には、女子高などもともと硬式野球部がない学校もあるでしょう。しかし、そうした事情を勘案しても、日本高野連の加盟校数の減少は、全国高校数の減少より緩やかと見ることができます。つまり、減少の一方で、新たに日本高野連に加盟する高校が増えているのではないかと推察されます。

高野連への新たな加盟高数が増えているのはなぜか

実際はどうなのでしょうか? 残念ながら、新規加盟校数のデータは公表されていません。しかし、少子化が懸念され始めた平成初期以降、1)男子校・女子高の共学高への転化増、2)大学付属校の新設の増加などの動きが鮮明化しています。

いずれも、少子化に伴い入学生徒数を確保するためと考えられます。特に、共学高への転化は、文科省から認可を受ける手続きが比較的簡単であることから、年々増えていると見られます。また、後者の大学付属校の場合は、大学への入学学生数を高校時から囲い込むというものです。

女子高が共学高になり、大学付属校が新設されたりすると、数年後には公式野球部が誕生している可能性は非常に高いと言えるでしょう。

日本の大きな社会問題である少子化・人口減少問題は、高校野球1つを取ってみても、“連合チーム”のように以前は起こり得なかったような事象が発生しているのです。最後に、女子高の共学化の1つの例を紹介しておきます。

山口百恵さんが卒業した有名な女子高校にも野球部が誕生

東京(品川区)に、多くの芸能人がタレント活動を行いながら通う有名な女子高がありました(注:現在も)。古くは山口百恵(敬称略、以下同)も卒業生ですし、現在活躍している女優・タレントの卒業生は、仲間由紀恵、相武紗季、新垣結衣、剛力彩芽など数え切れません。

その女子高は、2005年に共学高となり、現在は学校名から「女子」はなくなっています。そして、現在では硬式野球部も創設され、今年の東東京大会にも出場しています。また、ホームページで硬式野球部の体験入部(主に中学生向け)を集うなど、さらなる強化に向かっています。

これと同じような動きは、ここ15年近くで数多くあったと思われ、これからも増えるでしょう。

LIMO編集部