子どもの小学校入学などをきっかけに4月からパートタイマーとして働き始める女性も多いのではないでしょうか。
夫の社会保険の被扶養者として働きたい場合、年収「106万円の壁」と「130万円の壁」を意識する必要があります。年収の壁を越えると社会保険に加入しなければならず、社会保険料の自己負担が発生し、手取りが減るからです。
また、2024年10月からは106万円の壁の要件となる事業所の基準が改定されるため、注意が必要です。
今回はパート主婦の社会保険加入のボーダーとなる収入についてと社会保険加入のメリット・デメリットについて解説します。
パートタイマーが社会保険に加入する要件と年収の壁
パートタイマーも加入の条件を満たした場合、社会保険に加入することになります。最初に、社会保険加入の条件について解説します。
社会保険の加入基準
厚生年金・健康保険などの社会保険に加入するのは正社員だけではありません。1週間の所定労働時間または1カ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上であれば、パートタイマーでも加入対象です(4分の3ルール)。
「106万円の壁」とは?
特定適用事業所で働くパート・アルバイト等の短時間労働者が、一定の要件を満たすと、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。
特定適用事業所とは?
特定事業所とは、短時間労働者を除いた従業員数が100人を超える事業所のことです。
2024年10月からは従業員数100人から50人に変更されます。つまり、適用対象になる事業所が増えるわけです。
短時間労働者が被保険者となる要件
勤務先が特定事業所に該当する短時間労働者が社会保険に加入する要件は、以下のとおりです。
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出所:日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が2カ月以上
- 賃金月額8万8000円以上
- 学生でない
賃金月額8万8000円の12カ月分が約106万円となるため、「106万円の壁」と呼ばれます。
「130万円の壁」とは?
勤務先が特定事業所に該当しない場合でも、年収130万円以上になると配偶者の社会保険の扶養から外れます。
勤務先の社会保険に加入できる場合、社会保険料は労使折半の負担となります。しかし、社会保険に加入できない場合、自分で国民年金と国民健康保険に加入することになるため注意が必要です。
社会保険に加入するメリット3つとデメリット
パートタイマーが社会保険に加入すると社会保険料の負担で手取りが減りますが、社会保険加入による恩恵も受けられます。
パートタイマーの社会保険加入の主なメリットは、以下のとおりです。
社会保険加入のメリット1.将来の年金額が増える
社会保険に加入すると国民年金に厚生年金が上乗せされ、老齢年金が増えます。
若い人は老後の年金より今の手取りを優先したいかもしれません。しかし、公的年金は一生受け取る老後生活の柱です。
長い目で見ると、少しでも増やせることは大きなメリットと考えられます。
社会保険加入のメリット2.傷病手当金・出産手当金が受けられる
健康保険からは出産のために休業し給与が支給されなければ、出産手当金が受けられます。また、病気やけがで仕事を長期間休んで給与が支給されない場合に傷病手当金が受けられます。
いずれも休業前の賃金の3分の2程度を受け取れるため、家計にとって大きな助けになるでしょう。
社会保険加入のメリット3.障害年金や遺族年金が増える
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出所:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
社会保険加入によって障害年金や遺族年金も2階建てになり、障害厚生年金と遺族厚生年金の対象になります。基礎年金だけの場合よりも給付が増え、いざというときの経済的な不安が軽くなります。
社会保険加入のデメリット
社会保険加入のデメリットは、保険料の自己負担分があるために手取り収入が減ることです。
東京都の協会けんぽの場合、賃金月額が8万8000円の厚生年金保険料の自己負担分は8052円です。介護保険代2号被保険者の健康保険料は5038円、第2号被保険者でない場合は4316.4円です。
以下、自己負担分をまとめると以下のとおりです。
【賃金月額が8万8000円の社会保険料自己負担分】(小数点以下切り捨て)3/3
出所:協会けんぽ東京支部「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」より
社会保険料の年額を試算すると、介護保険代2号被保険者で15万7080円、第2号被保険者でない場合で14万8416円でした。月収の約15%が社会保険料の自己負担分として差し引かれます。
決して小さくない負担であり、社会保険の扶養を受けることを前提にしている人は働く時間を減らすなどの対策が必要になるでしょう。
将来いくら増えるのか、目安を確認
社会保険に加入して老齢年金が増えるのは魅力ですが、どの程度増額されるのでしょうか。賃金月額8万8000円のケースで見ていきましょう。
賃金月額8万8000円のパートタイマーが厚生年金に1年加入すると、厚生年金(報酬比例部分)が月額450円(年額5400円)増額されます。10年加入すると月額4500円(年額5万4100円)の増額です。
収入が増えれば納める保険料も増え(上限あり)、将来受け取る年金額に反映されます。
子どもの手が離れたら働く時間を増やしたり、正社員になったりして社会保険料を多く納めると、老後の年金もさらに多く受け取れます。もちろん、収入も増えるので一石二鳥です。
将来の生活までトータルに考えて働き方を選びましょう
家計の足しにするつもりでパートに出たのに社会保険料の負担で手取りが減ると、損をしたような気持ちになるかもしれません。
しかし、将来に年金が増えたり、いざというときのセーフティネットが手厚くなったりするメリットも魅力的です。
子育てや介護で長時間は働けない人は、年収106万円未満で働くのもよいでしょう。時間的な制約のない人は、働く時間を増やして収入と年金額を増やすことも検討してみましょう。
目先のお金だけでなく、将来の生活まで考えて働き方を選ぶことが大切です。
参考資料
- 日本年金機構「厚生年金・健康保険制度のご案内」
- 日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
- 協会けんぽ東京支部「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
松田 聡子
