iDeCoとNISAの共通点と相違点とは?
今年1月から、投資信託の積立運用に関してiDeCo(個人型確定拠出年金)という重要な優遇税制が開始されました。来年1月にも金融庁の肝煎りにより、NISA、ジュニアNISAに続く第三弾として積立NISAが始まりますので、今年から来年にかけては積立運用に関心を持つ方が増えそうです。
「貯蓄から投資」への制度面での促進や年金制度の綻びに対する自己防衛の観点から、税制メリットは大きなポイントとなりますので、サラリーマン世帯など毎月少額でも投資が可能な方は利用しない手はないでしょう。筆者もiDeCo口座を開設し、家内とともに最近積立を始めました。
各々の制度については既に様々な執筆者のウェブ記事やマネー関連雑誌等に詳しく載っているのでそちらに譲り、本稿では大まかな特徴と差異についておさらいしたいと思います。
iDeCoと積立NISAの共通点
- 毎月積立
- 運用益(インカム、キャピタルゲイン)が非課税
異なる点
- iDeCoは拠出金も非課税(=所得控除)。すなわち税率20%の人は拠出額の20%が税還付を受けられるため、時価より20%低く投資し、いきなり20%の含み益を得るのと同様の経済効果を享受できる
- iDeCoは60歳以降にならないと受給できない(50歳以降に積立を開始した場合は60歳までの積立期間に応じて各々61歳から65歳に受給開始となる)
- 積立NISAは据置要件はなくいつでも解約自由だが、他口座との損益通算は不可、損失の繰越控除も不可
積立運用に適しているのはどんなファンド?
この共通点を最大限生かすためにはどういうファンドが適するのか、考察を加えてみました。
まず、販売会社の商品ラインナップを見ると、iDeCoでは各社ともコアファンドと位置づけられるGTAA型※、すなわちグローバルな資産に分散投資し、資産配分の変更は運用会社が市場環境やリスクレベルに応じて行う「プロにお任せタイプ」を必ず配置し、その他は日本株、外国株、外国債券等の基本的な資産のインデックス型等がサテライトとして置いてあるケースがほとんどです。
この場合、「コア」とは資産形成の主軸となるファンド、「サテライト」とは市場環境や投資家のリスク選好度に応じて配分する味付け的なファンドを言います。
※GTAA:Global Tactical Asset Allocation(=戦術的世界資産分散)
来年導入の積立NISAについては、10月から金融庁の定めた適格要件を満たすファンドの届出が開始される予定ですので、販売会社のラインナップはまだわかりませんが、適格要件を見る限り、廉価版のGTAA型とパッシブ型が中心になると見られます。
コツコツ型の資産形成の観点からは、GTAA型はチョイスから外せないのは言うまでもないと思います。ただ、「ドルコスト平均法」から考えると別の見方もできます。ドルコスト平均法とは、定額積立で基準価額が安い時に口数を多く買い、高い時には少なく買うことにより購入平均単価が下がる効果があるとされるものです。
GTAA型は運用者が資産配分を機動的に変えるのがミソで、あまり投資の時期を選ばないので「毎月積立」による時間分散効果をフルに享受していないタイプのファンドです。また、いろいろな資産に分散して着実な成長を目指しているため、値動きは抑えられており、その意味でも価格のアップダウンを前提としたドルコスト平均法のメリットをフルに使っていないことになります。
「時間分散の効果」および「運用益が非課税」の効果に純粋に着目すると、むしろ新興国株式や新興国債券、ハイイールド債等、リスクは高いが大きなリターンを見込める資産に投資するという考え方もあります。すなわち、価格のアップダウンが激しく、ワンチャンスを捉えて売買するのが難しいため、積み立て方式による時間分散が効果を発揮しやすい、また大きなアップサイドが期待できる分、節税枠をより有効に活用できるといった側面があるのです。
当然リスクが高い分、損失が出る時は大きいのですが、節税枠を最大限に活用するという理屈から考えれば、ハイリスクハイリターン資産の選択も検討に価するでしょう。
いずれにせよ、多寡に関わらず損が出ても他口座と通算できないのは同じですし、また相当長期にわたる投資なので長い目で見れば損から回復するチャンスもめぐってくるでしょう。何か他人のサイフだからと無責任な話に聞こえるかも知れませんが、筆者は実際こうしています。
もし、全額をハイリスク商品に突っ込んで「資産形成」のつもりが「老後不安」の元になるのを避けたいと思われる場合は、個人の毎月積立でGTAA型とハイリスク型を半々にする、あるいは自分と家族の口座で分ける等のやり方もあるのではないでしょうか。
林 俊宏