長期金利の急騰がようやく一服、ドル全面安・世界同時株高になった1週間

先週(2017年7月10日-14日)の世界の株式市場は全面高でした。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースで独DAXが+2.0%、米S&P500が+1.4%、TOPIXが+1.1%、上海総合が+0.1%でした。日米独を円ベースで見ると、独DAXが+1.3%、TOPIXが+1.1%、米S&P500が+0.2%の上昇となり、日本の投資家にとってドイツ株が優位な展開になりました。

最大の注目だったイエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言は株式市場にとってハト派的と受け止められました。米国経済は健全に拡大しており連銀のバランスシートの縮小は早期に着手可能であるが、利上げについては足元の弱含みつつある物価指標の今後の進捗を踏まえながら追加利上げを進めることが語られました。また、当面の利上げ幅は大きくないことも示唆しました。この証言のあと米国の6月の鉱工業生産指数がしっかりした一方で、コアCPIと小売売上高が予想を下回る数値となり、米国の利上げのペースについて慎重な見方が広がりました。

この結果米ドルは全面安となり、長期金利もドイツを除いて世界的に低下しました。2週間にわたり急騰した金利は一服する局面に入ったようです。

この恩恵は特に新興国の通貨と株価、そして米国のテクノロジー株に顕著でした。ブラジル、メキシコ、オーストラリア、カナダなどの通貨が上昇し、ブラジル株、メキシコ株、インド株などの上昇が際立ちます。米国ではニューヨークダウ、S&P500が最高値を更新し、テクノロジーセクターが週間で+4%上昇しました。アップル株やFANG株(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)ばかりでなく、エヌビディア株が+12%上昇するなど半導体セクターにも注目が戻りました。テスラ株も反発しています。

一方、米決算シーズンの幕を切った金融株は軟調でした。JPモルガンチェース、ウェルズファーゴは予想を上回る決算でしたが、下落して週を終えました。さきに述べた金利観が影を落としたものと理解されます。また恐怖指数(VIX指数)は再び一桁台に低下しました。

アウトルック:金利の落ち着きどころが見え、決算で業績の強さを確認する1週間に

今週(2017年7月17日-21日)は、米国の決算発表が本格化します。世界的な景気の体温の高まりと漸進的な脱金融緩和の動きという現在のメインシナリオを、日本と欧州の金融政策を決める会合や中国の4-6月期のGDPと6月の新築住宅価格などで確認することになりますが、シナリオに変更がないとすれば、企業業績が最も重要な材料になるでしょう。

ネットフリックス、ジョンソン&ジョンソン、バンクオブアメリカ、ゴールドマン・サックス、ユナイテッドヘルス・グループ、IBM、TモバイルUS、フィリップ・モリス・インターナショナル、ビザ、マイクロソフト、GE、ハネウェル・インターナショナルなど幅広いセクターの主要企業の決算動向を追いかける週になりそうです。

さて2017年7月15日の日本経済新聞によれば、QUICK資産運用研究所調べの国内における投信の資金流出入状況は、国内株式、海外REIT、海外・先進国債券、国内REITから5月、6月と2カ月連続で資金が流出し、他方で海外・先進国株式、海外・新興国株式、バランスなどに2カ月連続で資金流入したとのことです。

欧州株、新興国株あるいは米国株に投資を振り向けてきた方には先週は快適な一週間になったと思われます。海外株が優位な展開を続けるのか注目したいと思います。

椎名 則夫