4. 標準的な夫婦が受け取る「モデル年金」は約22万円

冒頭でふれた「モデル年金」についても詳しく見てみましょう。厚生労働省が1月20日に公表した「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」を参考にします。

出所:厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」

これによると、夫(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の2023年度の支給額は、「22万4482円」とされています。

ただし、これは「サラリーマンの夫と専業主婦の妻」という組み合わせです。今の年金受給世代にとっては標準的な夫婦の類型の例といえますが、現役世代が年金を受け取り始める頃には、「標準的な夫婦世帯」の定義はまた変わってくるかも知れませんね。

ちなみに、生命保険文化センターの意識調査によると、老後に必要な「最低日常生活費」は月額23万2000円、さらに「ゆとりある老後生活費」は37万9000円という結果に。

もちろん老後に必要となる生活費は世帯差があります。調査結果だけを鵜呑みにする必要はありませんが、公的年金だけで老後の出費をカバーすることは簡単ではないといえそうです。

年金だけに頼らない老後を迎えるために、現役時代からしっかり準備をしていく必要があるでしょう。

5. まとめにかえて

現役世代の私たちには、長い老後が待っています。

若い頃から「年金以外の老後資産を、どう準備するか」が大切になりそうですね。国民年金のみの受給者であれば、付加保険料の納付、もしくは国民年金基金への加入など年金額そのものを増やす工夫を取り入れることから始めてもよいでしょう。

また、サラリーマンで厚生年金を受給する場合、いまの年収が老後の年金額に響く点を忘れずにいたいものです。スキルを磨き年収アップを目指す発想もありますね。

また、働き方が多様化するいま、目先の収入を増やして貯蓄に繋げたいならば、副業も一つの選択肢になりそうです。

こうした工夫に加え、「資産運用」でお金で働いてもらうのも一つの選択肢となり得るでしょう。いつでも引き出せる預貯金をしっかり確保しておくことは大切ですが、低金利が続くいまお金は育ちにくいです。

2022年度から高校家庭科で資産形成の授業がスタートし、2024年からNISA制度も大きく変わろうとしています。

私たちの暮らしに身近なものとなりつつある「資産運用」。複利のチカラで上手にお金を育てていければ、長い老後を見据えたお金の準備の有効な手段の一つとなるでしょう。

参考資料

荻野 樹