「プチローソン」始動
2017年7月3日、ローソン(2651)は交通系電子マネー専用セルフレジを導入した設置型オフィス内コンビニ「プチローソン」を東京都23区内で先行的にサービスインすると発表しました。
ローソンはほんの少し前までは国内第2位のコンビニでしたが、ユニーとファミリーマート合併後は大手2社に規模面で水を開けられた格好です。こうした文脈のなか、ローソンは今回セルフレジを利用した無人のミニコンビニを強化すると宣言したのです。
発表によると、2017年7月末までに約100か所、2017年度末までに1,000か所に導入するという積極的な意気込みが示されています。これでどこまでセブン-イレブン・ジャパンとファミリーマートに迫ることができるのか、少し考えてみたいと思います。
現代版“富山の薬売り”、プチローソンの仕組み
プチローソンの標準セットはお菓子BOXと先に述べたセルフレジになります。さらにオプションで冷蔵庫、冷凍庫、コーヒーマシンなどの設置もできるとされています。決済はこのセルフレジでSuicaやPASMOによってキャッシュレスに行います。
また、販売および在庫はレジデータをベースにクラウド上で管理します。商品補充は当面ローソンが行うと推察されますが、将来的にはフランチャイズ加盟店からの配送を検討するようです。
実は、ローソンは2016年5月より現金による設置型オフィスコンビニを実験してきました。今回はSuicaやPASMOによる無線セルフレジを導入することで従来に比べて決済・管理コストを下げ、本格展開に踏み出したのです。
エキナカからビルナカへ
では、オフィスにプチローソンができるメリットはどうでしょうか。
街中の路面店のコンビニも利用するが、ちょっとしたもの(飲料やお菓子など)を買うにはKioskや駅のコンビニが便利だと思う方も少なくないと思います。しかし、オフィスにこのような商品があるのであれば、暑さ・寒さ、雨・雪などを全く気にすることなく、簡単に欲しいものを最短の時間で手に入れることができます。
オフィスでの休息にお菓子を食べている人は男女を問わずたくさんいるとの調べもあるようですので、身近にプチローソンができたらありがたいと密かに思っているような需要はかなりありそうです。
今後コンビニの場所取り合戦が路面からエキナカ、そしてビルナカ(オフィス)に移っていくのかもしれません。
ビルナカの場所取り合戦本格化
このように期待の高い「プチローソン」ですが、冷静に考えてみると「どこに置くのか」が最大の問題になりそうです。
多くのオフィスでは既に飲料やパン・菓子の自販機、コーヒーメーカー、ウォーターサーバーなどが置かれていることでしょう。スペースには限界がありますので、積極的な経済合理性が必要になります。
また、有名な「オフィスグリコ」も同様のサービスを行っていますし、ライバルであるファミリーマートも「オフィスファミマ」を既に展開しています。キャッシュレスのセルフレジの仕組みもローソンが独占できるとは言えないでしょう。さらに新たな参入も考えられますので、競争条件は厳しそうです。
なお、サンプルの棚のサイズを見る限り、「プチローソン」1か所あたりの収益は大きくないと思われます。ローソンが収益化を狙うならば相当多数の設置が必要でしょう。しかし、本格的にプチローソンが普及すると、今後は逆に実店舗の加盟店から不満が出る事態になりかねません。
このように、既にオフィスにある自販機や他社のプチコンビニサービスに対してどう差異を出していくのか難しい面もありそうです。しかし、やる以上は圧倒的トップにならないと上位2社との距離は縮まりません。ローソンの本気度に期待したいと思います。
LIMO編集部