最悪なのは、アパートメーカーのサブリースです。

ちなみに、アパートメーカーの建物の質は決して悪くありません。むしろいい方です。膨大な設備投資をして研究開発をしていますから当然です。

ただ、一方で膨大な広告宣伝費、人件費等の一般管理費がかかりますから、建築コストは一般の工務店に比べて3割ほど高くなります。粗利は3割が当たり前。もともと、ハウスメーカーはこれだけ利益を出さないと経営できない体質なのです。

しかし、さすがに一般の工務店に比べ建築コストが3割も高ければ採算が合いません。通常、普通に建てて貸せば10%の表面利回りが出る地域でも、アパートメーカーの企画では5〜7%しか回らないというお粗末な企画を私は過去に数多く目にしてきました。

この利回りがいかに低いことか! たとえば、表面利回りが6%だとフルローンで新築した場合、実質利回りは1%未満か限りなく0%に近くなります。仮に事業費1億だとすると年100万円、月8万3,000円のキャッシュフロー。1戸空室なら手残り無し。金利が1%上がっても手残り無し。そのダブルだと確実にマイナス。という非常にお粗末なレベルなのです。

銀行は大家さんのためでなくアパートメーカーのために融資をする

このような、表面利回りが6%しか回らないリスキーな企画に、融資するバカな銀行はいません。そこで、家賃保証が登場するわけです。大手のアパートメーカーが家賃保証を行うとなれば、銀行は家賃保証という担保を得ることができるため、融資OKとなるわけです。

このスキームは明らかにおかしいでしょう? なぜなら、銀行は大家さんが6%の利回りしか得られない事業には融資しないといっているのに、家賃が保証されるから融資をするというのは、大家さんのために融資をするのではなく、アパートメーカーのために融資をしていることに他ならないからです。

高い建築費を高い保証家賃で煙に巻く

このような異常な事業形態が、バブル以降、特に都市郊外で爆発的に増えました。

ハウスメーカーは自らの高コスト体質により、どうしても高くなってしまう建築費を煙に巻く必要があります。そこで、利回りを良く見せるため相場より高い家賃設定をして、高い保証率でサブリース契約を行っていきました。

当時の新築物件は、礼金、敷金、更新料などが常識であり一時的な収入も多く、ある程度の空室損はこの利益収入で薄めることができました。しかし、環境は激変。深刻化する空室問題に対応するため、敷金0、礼金0、更新料0、というような物件がどんどん増えています。加えて、不動産会社から要求される広告料も1カ月から2カ月へと増えてきています。

このような状況で契約時の保証条件を維持し続けると、サブリース業者はどんどん赤字になってしまうのです。

恐らく10年前の家賃設定を変えず今も90%の保証率でサブリースをして黒字が出ているサブリース業者はいないのではないでしょうか。民間の賃貸住宅の空室率は既に25%以上といわれていますから、相当苦しいということは容易に想像できます。

どう手仕舞するかをサブリース業者は真剣に考えている

このように、相場より高い設定家賃、高保証率でサブリースをしていれば、数年で保証がきつくなってしまうのは当然です。しかも、そもそも地方で、しかもアパートが供給過剰なところに、さらに近隣営業をかけ、新築供給をし、自らの首を絞めるようなことをしているのですから、これが行き詰まらないわけがないのです。

30年保証などをうたうサブリース業者が、当初の保証家賃を最後まで維持し続けることは1000%あり得ないと、断言してもいいくらいです。

サブリース契約書には、必ず2年毎に家賃改定ができる旨をうたっています。したがって、サブリース契約をしている大家さんのもとには、遅かれ早かれ、保証家賃の値下げ交渉に営業マンが訪れることになるのです。

ではその時に、具体的にどういう交渉がされるのか?
その交渉に対してどう切り返せばいいのでしょうか?

具体的な対策方法については、次回書きたいと思います。

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浦田 健