欧州中央銀行(ECB)の6月政策理事会議事録公表を契機に、先週の金融市場はECBの金融緩和縮小を意識し、債券安という形で影響が現れました。その結果、ユーロに加え一足先に米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和縮小を表明しているドルが買われる展開に。

金融緩和縮小が相場を動かすテーマとして浮上しましたが、今週もその流れが継続するかどうかに注目です。

先週の振り返り

先週は7月4日(火)が米国独立記念日ということもあり、金融市場の実質的なスタートは5日、そして7日に米雇用統計発表という慌しい週となりました。

金融市場の値動きは米雇用統計待ちかと思われましたが、6日のECB議事録公開を契機に、ECBの金融緩和縮小を意識した欧州の金利が上昇しユーロ高となりました。

その結果、7日の雇用統計への注目度が相対的に下がり、その内容も市場予想から大きく外れなかったため大きな値動きは生じませんでした。ただし、雇用統計を契機にドル/円は上昇を再度開始し、114円台に突入しました(先週の終値は113円台)。

また、ECB、FRBとも金融緩和縮小に向かうとの観測の中、日銀は金融緩和縮小の手段が取れる状況になく、ユーロに対し円が売られ、ユーロ/円も130円台にまで上昇しました。

金が下落もリスクオンには至らず

金価格は6月上旬より下落トレンド入りしていましたが、先週の下落により5月に形成されたサポート&レジスタンスを下抜け。3月に形成されたサポレジに向かいつつあります。

金価格は下落したものの、アメリカの株価も上昇とは言えず、ナスダックはどちらかと言えば下落傾向。日本市場は日経平均20,000円を割れて週の取引を終えており、リスクオンには傾いていません。

一方、恐怖指数と言われるVIX指数は歴史的な安値水準から脱しつつあります。まだ安値水準には位置していますが徐々に上昇中で、VIX指数から見るとリスクオフに向かいつつあると言えます。

また、先々週1バレル当たり43ドル台から47ドル台まで一気に値を戻した原油価格(WTI)は、再度43ドル台にまで下落するなど乱高下を繰り返しています。

商品市場や株式市場から見ると先週は様々な面で乖離が生じた週と言えます。この乖離が広がるのか、解消されるのか、今週以降の金融市場の見どころと思われます。

今週の見通し

今週は7月12-13日にイエレンFRB議長の議会証言があります。

既に3月と6月に2度金利を引き上げ、さらに年内のテーパリング(量的金融緩和縮小)開始を表明しているFRBですが、イエレン議長からテーパリング開始時期等についての発言がなされるか注目されます。

ECBのドラギ総裁の発言以降、金融市場は欧州発の金融緩和縮小についてナーバスな状況になっており、先週の金利上昇を受けて一足先に金融緩和縮小に走っているイエレン議長の発言をどう織り込んでいくのか、興味深い部分です。

個別の通貨ペアでは米雇用統計後に114円台にまで乗せたドル/円がさらなる高値を目指すのかが注目点。5月の最高値は114.3円台であり、サポレジという観点ではまだ同水準までは目指せる状況です。

ユーロ/ドルも先週の上昇で週足ベースではレンジ相場の上限に到達しています。先週の金利上昇で買われたユーロですが、ドルも同時に買われた結果、ユーロ/ドルの上昇はそれほど勢いのあるものではありませんでした。

ただ、ここから先さらにユーロ/ドルが上昇してレンジブレイクするのか、それともレンジ相場の上限で値動きが止まるのか、ユーロ/ドルは重要なポイントに位置しています。

セオリー通りなら金融緩和縮小はいずれ株価下落に繋がります。ECBは実際に金融緩和縮小を表明したわけではありませんが、金利上昇など市場は金融緩和縮小を織り込むような値動きを開始しています。

まとめ

FRBの金融緩和縮小にはそれほど反応を示さなかった金融市場ですが、ECBの金融緩和縮小については、正式発表ではないものの大きく反応しています。今後の金融市場は金融緩和縮小が相場のテーマになる可能性が高いと考えられます。

まずはイエレン議長の議会証言の内容、そしてその証言を受けて市場がどのような反応を示すかで、今後の方向性が占える可能性もありそうです。金融緩和縮小というテーマを踏まえつつ、各通貨の値動きおよび株式や商品の値動きをフォローすべき週が今週から当面続くのではないでしょうか。

LIMO編集部