表面的にはまったりした動きの1週間
先週(2017年6月19日-23日)の世界の株式市場は落ち着いた値動きでした。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースで上海総合が+1.1%、TOPIXが+1.0%、米S&P500が+0.2%、独DAXが▲0.2%となりました。
先週は債券、為替の両市場が「なぎ」のような状態になりました。マクロ面では米中の住宅市場が堅調であること、欧州の消費者信頼感が回復基調にあること、欧州の製造業とサービス部門の購買担当者景気指数(PMI)が高水準にあることが確認されましたが、新味のある材料ではなかったようです。
為替市場では、米ドルは対円、対ユーロで小幅の値動きに終わりました。また主要国の長期金利は対前週末比ほぼ横ばいで終わり動きはありません。
株式市場では台湾、インドネシア、上海、ベトナム、日本などのアジアの市場が上昇しましたが、欧米の指数は小動きでした。大きな下落を示した市場はないため、株式市場もなぎに入ったと言えるでしょう。
しかし個別にみるとバイオ株の躍進が注目されます。米国では薬価引下げに対する懸念が後退し新薬への期待も高まったためナスダックバイオテクノロジー指数は+10%急騰し、ノバルティス、メルクなど大手医薬品株も上昇しました。アップル、アマゾン、アルファベット、フェイスブックなどのテクノロジー株を上回る上昇率となり、物色の矛先がかわってきたことを示しています。この流れは日本でも見られており、電機株に加え医薬品株の上げが目立っています。
一方、米国では、止まらない原油安を嫌気してエネルギー株が下落し、通信・公益株も軟調でした。また経営者交代で上昇していたGEが早くも▲5%下落するなど銘柄を選ぶ視線は厳しくなっていると感じられました。
アウトルック:トランプ離れが進むのか。選別物色継続の1週間に
今週(2017年6月26日-30日)は主要国のマクロ経済指標がラッシュする週になります。これらが重要なことは変わりませんが、注目したいのはトランプ離れが進むのか、バイオ物色が続くのか、アマゾンの脅威はどこまで広がるのか、の3点になります。
医薬品の価格圧力の緩和期待といい、フォードの中国での生産能力増強といい、トランプ政権の当初方針とはやや異なる動きが出てきました。テクノロジー株一辺倒だった米国株市場で物色の受け皿が増える可能性が出てきています。バイオ株を中心に、引き続きこの流れのゆくえを見ていきたいと思います。
またアマゾンによりホールフーズ買収を契機に、アマゾンを軸とした流通構造の変革の流れが見え始めました。今週決算予定のナイキはデジタルシフトを掲げ、アマゾンとの協業を進めると言われますので、ナイキの決算からも目が離せません。
なおマクロ指標で特に注目したいのは中国の6月の製造業購買担当者景気指数と米国の5月の個人消費支出コア・デフレーター(インフレ指標)です。後者が低めの数値になれば、昨今のテック&バイオへの物色傾向がさらに続きそうです。
椎名 則夫