たとえば外部とのやり取りが必要な案件や自分があまり得意ではない領域は、部下に丸投げにしたり「関わらない」と宣言することで心の安寧を保ちます。でもこれは任せたということではありません。自ら作った”知らない”というシチュエーションも彼らを傷つけてしまうのです。部下からすれば本来一度で済んだ話を何度もしなくてはならず「本当にそれでいいのか」「あの部署はOKといっているのか」などと口まで出されてヘトヘトになります。手が空いているときであれば対応も可能ですが、横パス上司の部下は往々にして忙しいものです。
傷つきたくないストライカー=横パス上司にとって「決める」ということは大変な重圧なのです。その結果、プロジェクトに関する横パスも多くなり、いくらグループウェアやテレワークが導入されても、仕事そのものの進め方は昔のままです。
部下が「横パスせずに上に突き進めよ」と心の中で念じても改善するはずもなく、横パスのパスワークが延々と続くことになってしまいます。
働き方改革そのものは歓迎すべきだが、その前に必要なことは
今「働き方改革」が叫ばれるなか、様々な仕事の仕方、多様性が模索されています。働く場所に縛られずに仕事ができるようになれば、たとえば女性が産休・育休から復帰しやすくなり、男性も育児に積極的に参加しながら仕事をしやすくなる可能性があります。こうしたことは誰にとっても歓迎されるべきものでしょうし、今後日本の労働力人口が大きく上昇する可能性が低いと想定した場合にも、必然的に求められてくるでしょう。
保育園に預けることができず、日本の社会に落胆をした親の発言が以前大変議論を巻き起こしましたが、保育園に預けられれば親は安心して仕事ができるかというとそうでもありません。朝保育園に預けたばかりの子供が会社に着くか着かないかのうちに熱を出し、飛んで戻るというような経験は子育て中には誰もが経験することだと思いますし、職場に子育て中の同僚がいるという方はそれが思った以上に頻繁だと実感しておられることでしょう。厳しい”保活”を乗り切り保育園に子供を無事預けられることができたとしても、一安心というわけにはいかないのが残念な現実なのです。
こうしたとき、家からテレワークなどを活用して仕事ができる選択肢があれば、個人の時間の使い方はかなり効率的になるはずです。しかし、横パス上司の行動に振り回され、常にその場にいてケアしなければ話が進まないといったことでは本来有効に機能するはずの仕組みも使えなくなってしまいます。それ以前に会社をダメにしてしまうことさえありえるのではないでしょうか。
まとめにかえて
いかがでしたでしょうか。仕事環境や働き方改革の前に、横パス上司の意識改革と横パス上司が存在しない組織づくりという発想こそ、実は最も日本の仕事の効率化には必要かもしれません。
LIMO編集部