ナスダック指数の下落が目立った1週間
先週(2017年6月5日-9日)の世界の株式市場は、欧米株がわずかに下げるなか、上海株の上昇と日本株の下落がやや目立つまちまちの展開になりました。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースで上海総合が+1.7%、独DAXが▲0.1%、米S&P500が▲0.3%、TOPIXが▲1.3%となりました。
先週は、英国の総選挙、米国のコミーFBI前長官の議会証言、欧州中央銀行(ECB)理事会という大きなイベントがありました。しかし相場への影響は限定的だったと見て良いでしょう。
英国では与党保守党が過半数割れとなり、EU離脱の道筋が見通しづらくなりました。このため英ポンドは対ドルで▲1%ほど下落しましたが、株式・債券への影響は限定的でした。コミー証言には新規性が乏しく材料になりませんでした。
また、ECBでは従来の金融政策の維持が決定されましたが、ユーロが対ドルでやや下落したものの独仏の金利や株式への影響は小さいものでした。米国のS&P500は軟調でしたがその幅はごくわずかです。なお、発表されたマクロ指標は硬軟混じり、ネットでは中立的だったと思います。
こうした動きのなかでは目立つのが、▲1.6%下落したナスダック指数です。今秋のiPhone新製品への期待が後退したり、アップルをはじめとするテクノロジー主力株(アルファベット、アマゾン、フェイスブック等)のバリュエーションに対する警戒感が高まったことが調整の主因と思われます。
アウトルック:いよいよ米利上げへ。米国の次の利上げの時期を探る週に
今週(2017年6月12日-16日)は米国の金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)が最大の注目です。
6月の利上げはほぼ既定路線と思われますので、焦点は今後連銀のバランスシートの縮小ないし次の利上げへの道筋をどう示してくるかです。
先週、ナスダック指数の下落が目立ったことは既に述べましたが、価格が上昇した資産を利上げ前に一部現金化しておこうというポジション調整だったと見るのがオーソドックスな解釈と思います。したがって、今後の金融政策が「しばらく様子見」となれば、ナスダック指数に資金が案外早く回帰してくることのではないでしょうか。
一方、筆者は個人的にその可能性は低いと思いますが、仮にもう少しタカ派的(金融引き締め的)なトーンの声明であれば、物色の流れがナスダックから金融株や景気敏感株へとシフトする可能性も出てくるでしょう。物色の流れが変わるかどうかの見極めがポイントになるでしょう。
これ以外に、米国については景気の体温を測る5月の小売売上高、鉱工業生産、住宅着工、消費者物価などの重要指数が発表されます。欧州では4月の鉱工業生産と6月のZEW景況感調査、中国では5月の主要マクロ指標、日本では日銀金融政策決定会合が予定されています。日銀から新たな一手が出てくるのか見守りたいと思います。
椎名 則夫