6. 繰下げ受給のデメリット(5):税金や社会保険料が増える場合がある
年金の額が増えることにより、税金や社会保険料などが増える場合もあります。
6.1 所得税が増える
65歳以上かつ年金収入のみの人は、受け取る年金額が、年間158万円以下(公的年金等控除額110万円+基礎控除48万円)であれば、確定申告は必要ありません。しかし、それ以上になれば、所得税がかかってくることもあります。
6.2 後期高齢者の医療費の窓口負担が増える
課税所得が28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯の場合200万円以上、複数世帯の場合合計320万円以上となれば、窓口負担割合が2割になります。ただし、2022年(令和4年)10月~2025年(令和7年)9月末までは緩和措置があります。
6.3 高額療養費制度の上限額が上がる
年金などの収入が約156万~約370万円ぐらいであれば、世帯のひと月ごとの医療費上限額は5万7600円(外来・個人ごと:1万8000円)です。それ以上の年収となれば、高額療養費の上限は上がり、負担する医療費が増えます。
繰下げ受給をして年金が増えれば、上記以外に、負担する国民健康保険料や介護保険料、住民税なども増加します。
7. まとめ
老後の資金準備は多ければ多いほど、安心感があります。しかし、年収が増えれば、その分、税金や社会保険料などの負担が増える場合もあります。メリットとデメリットのバランスを見ながら、計画的に繰下げを検討しましょう。
参考資料
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
舟本 美子