ある程度ボディが冷えたらバケツにシャンプーを入れ、水流を強めてたっぷりの泡洗剤を作る。高いところから低いところに向けて洗うことが基本なので柔らかいスポンジにたっぷりと泡を載せて優しく丁寧に力を入れずに洗う。それはあたかも赤ちゃんの肌を洗うように優しさと愛情もたっぷり添えて。
泡洗車したボディを水洗いして隅々まで丁寧に洗い流し終わるころには、お日様もすっかり傾き、日差しがあったとしても、もはや横方向からで、愛車の屋根やボンネットは斜めからの光によりその表面状態がどれだけ傷ついているかはっきりと判るようになる。
そもそもシャンプー洗車しただけの状態でも、充分にキレイなクルマと言われるほど状態はいいのであるが、これはもっぱらクルマが手元に来た時に行う「下地作り」に全てが懸っている。
この下地作りの磨きを生きがいとしている私は、プロの磨き屋さんおすすめの数種類の3M製コンパウンドと、異なる動きをする(シングルアクション/ダブルアクション)2つのポリッシャーを使い分けながら、自らの手で、まさに鏡のように周囲の景色を鮮明に映し出すボディに仕上げていく。ただ、下地作りは、磨きすぎてもいけないので、この工程だけプロに任せてもいいかもしれない。
この鏡面のようなボディの状態を保つために、昼間の太陽光では気づかない小傷(ヘアスクラッチ)を、わざわざ夕方の日差しの中で探しつつ、コーティング処理によるメンテナンスを行う・・・。まさに趣味の世界であり、尋常ではないことは自覚している。
メンテナンスに私が重宝しているのは、「スパシャン」や「グロスマジック」など本来はコーティングシャンプーに分類されるケミカル剤。これをシャンプーに使ってしまってはもったいないので、10:1に希釈して、園芸用噴霧器を使ってコーティング剤として活用している。
ほぼ毎週、仕上げにコーティングを重ねることで、黒いボディならばピアノの如く、赤いボディならば漆塗りのお盆の如く、ピカピカというよりもシットリ感を持たせたような、ヌラヌラあるいはテラテラの状態まで深みが増していくことに、暮れゆく夕焼け空の下、ひとりほくそ笑んでいるのである。
今日は金曜日。毎日通勤で使う三号機はそこそこ汚れている。天気予報によれば明日は朝から雨模様。であるならば、この開放感に満たされた金曜の夜に洗わずして、いつ洗うというのだろうか・・・。
鈴木 琢也