投信1編集部による本記事の注目点

  •  国内では現在、人手不足解消や省人化のためにロボットがサービスを提供する事例が増えつつあります。
  •  大半のコミュニケーションロボットはクラウドに接続して処理を行うため、ロボットが言葉を返すまでに相応の時間がかかるなど会話のリアルタイム性に課題があります。
  •  関連各社の発表や動向からは、2017年もサービスロボットを導入する企業は増えると見られます。

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ロボット市場の2016年の動向や17年の見通しを考察する連載の第3回。今回は国内のサービスロボットを取り上げる。

国内では現在、人手不足解消や省人化のためにロボットが人を代替しサービスを提供するという事例が増えつつあり、特にソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper(ペッパー、冒頭写真)」が導入されるケースが目立つ。

ペッパーはもともと家庭用ロボットを標榜していたが、15年10月より開始した法人向けモデル「01Pepper for Biz」の販売を機に業務用での拡大が進み、現在までに1,700社以上が導入。ネスレ日本、明治安田生命保険相互会社、日産自動車、イオンモールなどは100台以上を導入する方針を掲げている。

ハウステンボスもロボットの導入に積極的だ。同社のテーマパーク内にサービスロボットを多数導入した「変なホテル」を15年7月に開設し、フロント、ポーターサービス、ロッカーサービス、客室清掃などにロボットを導入している。開設当初は72室を約30人のスタッフで運営していたが、ロボットの活用ノウハウが蓄積された現在は144室を10人で運営している。

さらに16年7月には、ロボットを多数導入したレストラン「変なレストラン」をハウステンボス内に開設。おすすめメニューや空きテーブルの情報を客席案内ロボットが来店者に伝えるほか、双腕ロボットがお好み焼きを調理したりする。各テーブルにはMJIのコミュニケーションロボット「Tapia(タピア)」が設置されており、注文の受付などを行う。

日立製作所は16年9月、ヒューマノイドロボット「EMIEW3(エミュー3)」を活用した実証実験を羽田空港で実施。エミュー3が立ち止まっている人を見つけて自律的に移動し、施設案内や目的地への誘導など行った。

同年12月には家電量販店を展開するノジマと連携し、売り場の案内や商品の紹介などを行い、小売業におけるロボット活用の可能性を検証した。17年2月ごろから販売管理システムと連携した接客も検討している。

このように16年はコミュニケーションロボットを販売、受付、案内などのサービス用途で活用するケースが目立った。こうしたロボットは外国語への対応能力も高いため、20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて同様の取り組みが増えていくと予想される。

しかし、人とのコミュニケーションは技術的なハードルが高く、導入企業でも会話機能の改善を求める声は多い。

大半のコミュニケーションロボットはクラウドに接続して処理を行うため、ロボットが言葉を返すまでに多少の時間を要し、会話のリアルタイム性に課題がある。そのため利用者が何度もロボットに話しかけるケースや、付帯のタッチパネルで性能を補っているケースも散見される。

音声認識技術は近年急速に進化しているが、自然なコミュニケーションを実現できているとは言い難く、「人とロボットがスムーズな会話を実現させるには、少なくみても5年、おそらく10年はかかる」(ロボット企業関係者)という意見もある。

また、「人手不足解消などの解決策としてテクロノジーの活用は必須だが、必ずしもロボットでなくてもよい」という意見も少なくない。

米国ではアマゾンが人工知能やセンサー、コンピュータービジョンなどを組み合わせ、店舗でのレジ精算を不要にできるシステムを開発。その技術を活用したコンビニエンスストア「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」を17年前半にシアトルにオープンする予定で、こうした技術が増えると、人の作業をロボットで代替する必要性は薄れてくる。

関連各社の発表や動向をみると、17年もサービスロボットを導入する企業は増えるとみられる。その一方で、ロボットの導入・運用時の課題が鮮明になることも予想され、会話機能の改善に加え、その会話機能をベースに特徴ある機能をロボットにいかに付帯させるか、「ロボットでなければいけない理由」をいかに明示できるかといった点も重要になりそうだ。

電子デバイス産業新聞 記者 浮島哲志

投信1編集部からのコメント

サービスロボットは、ハードウェアに何かをさせるという意味で目的が明確です。一方、消費者との接点という面からは、アマゾン・エコーのように音声認識で目的を達成させる機能が目先は普及が進むのではないでしょうか。ロボットに求めるものが必ずしもハードウェアの機能ではなく、音声認識によるサービスの提供が普及のポイントになるという点から当業界を見ていく必要性を最近特に感じます。

電子デバイス産業新聞×投信1編集部

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