10月に入り、生命保険料控除のハガキが届いたり、会社から年末調整の書類を渡されたりと、所得税や節税などを考える頃になりました。

公的年金にはいろんなものがありますが、その中でも一般的な存在である老齢年金は税法上、雑所得として扱われます。

年金だけで生活している場合でも、一定額以上を受け取れば、所得税や住民税がかかります。しかし、公的年金の中には、多くの額を受け取ってもまったく税金のかからないものもあります。

今回は、税金のかかる年金、かからない年金について紹介します。

【注目記事】厚生年金を受給する男性が「年金振込通知書」の内容に衝撃を受けたワケ

1. 老齢年金は一定額までは所得税がかからない

老齢年金にかかる所得税は、年齢と受給する年金額によって変わってきます。

というのも、老齢年金は雑所得として扱われ、受け取った年金から、公的年金控除額を差し引くことになるからです。

1/2

出典:国税庁「 No.1600 公的年金等の課税関係」

出典:国税庁「 No.1600 公的年金等の課税関係」

実際に、65歳未満と65歳以上の場合で所得が「0円」となる場合をみていきましょう。

1.1 年金を受け取る人:65歳未満の場合

年金受給額、年間108万円で「所得税」を計算

  • 年金受給額(108万円)-公的年金控除額(60万円)=雑所得(48万円)

さらに、所得税を計算するときは、所得控除の1つである基礎控除を差しいた後の金額に課税されます。

  • 雑所得(48万円)-基礎控除(48万円)=所得(0)

これより、年間108万円までであれば所得税はかかりません。

年金受給額、年間108万円で「住民税」を計算

  • 年金受給額(108万円)-公的年金控除額(60万円)=雑所得(48万円)
  • 雑所得(48万円)-基礎控除(43万円)=所得(5万円)

所得5万円となりますが、所得控除には社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などがあり、それらを含めて計算すると、所得は「0」に近くなると考えられます。


そのため、前年の所得金額をもとにして計算される「所得割」は、ほぼかからないといえます。しかし、住民税には、所得金額にかかわらず個人が等しく負担する「均等割」があります。

均等割額は、道府県民税が1000円、市区町村民税が3000円の合計4000円となっています。しかし、2014年(平成26年)から2023年(令和5年)までの10年間については、それぞれ500円ずつ加算され、合計5000円になります。

1.2 年金を受け取る人:65歳以上の場合

年金の受給額、年間158万円で「所得税」を計算

  • 年金受給額(158万円)-公的年金控除額(110万円)=雑所得(48万円)
  • 雑所得(48万円)-基礎控除(48万円)=所得(0)

これより、年間158万円までであれば所得税はかかりません。

年金受給額、年間158万円で「住民税」を計算

  • 年金受給額(158万円)-公的年金控除額(60万円)=雑所得(48万円)
  • 雑所得(48万円)-基礎控除(43万円)=所得(5万円)

所得5万円となりますが、前述のとおり、所得は「0」に近くなると考えられ、所得割は、ほぼかからないといえます。均等割についても前述のとおり、道府県民税が1500円、市区町村民税が3500円の合計5000円となります。

2. 遺族年金には税金がかからない

遺族年金は、公的年金の被保険者が亡くなったときに、その被保険者が生計を維持していた遺族に支払われる年金です。

遺族年金は、法律で「公課を課することができない」(国民年金法25条・厚生年金保険法41条2項)とされているため、どれだけ多くの額を受け取ったとしても所得税や住民税はかかりません。

遺族年金には、遺族基礎年金、遺族厚生年金、寡婦年金、死亡一時金があります。それぞれについて、詳しく解説します。

2.1 遺族基礎年金

遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等であった人が受給要件を満たしている場合、亡くなった方の遺族に対して支払われる年金です。

遺族というのは、亡くなった被保険者に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が該当します。

支給される遺族年金は、年77万7800円と子の数に応じた加算額の合計です。子の加算額は、第1子・第2子は、1人につき22万3800円、第3子以降は、1人につき7万4600円になります(以下、断りのない限り金額はすべて2022年度)。

2.2 遺族厚生年金

遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者等であった人が受給要件を満たし亡くなったときに、その被保険者の遺族に対して支払われる年金です。遺族は、遺族基礎年金よりも範囲が広くなり、

  • 第一順位:配偶者と子
  • 第二順位:父
  • 第三順位:孫
  • 第四順位:祖父母

となります。いずれの場合も、亡くなった被保険者に生計を維持されていたことが前提です。

2/2

出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

支給される遺族厚生年金は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。

2.3 寡婦年金

寡婦年金は、亡くなった夫が、国民年金の第1号被保険者として保険料を10年以上納めるなどの要件を満たしている場合、その夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあった妻に対して、60歳から65歳になるまでの間支給される年金です。

支給される寡婦年金は「夫が受け取れるはずの老齢基礎年金の4分の3」です。

2.4 死亡一時金

死亡一時金は、国民年金保険料の第1号被保険者として36か月以上保険料を納めた方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時、その方によって生計を同じくしていた遺族(1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に支給されます。

支給される死亡一時金は、保険料を納めた月数に応じて12~32万円です。

3. 障害年金にも税金がかからない

障害年金は、病気やケガで障害認定を受けた際に支給される年金です。この障害年金も、遺族年金と同じく所得税や住民税はかかりません。

障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。

3.1 障害基礎年金

障害年金とは、病気やケガなどで障害が残ってしまった時に、一定の要件を満たしている場合、障害の等級にあわせ支払われる年金です。

支給額は、2級が77万7800円、1級は1.25倍となる97万2250円です。もし、生計を維持している子供がいれば、1~2人目には1人につき22万3800円、3人目以降には1人につき7万4600円が加算されます。

3.2 障害厚生年金

障害厚生年金は、厚生年金の被保険者である間に、一定要件を満たした場合、障害の等級に応じて支払われる年金です。

支給額は以下のとおりです。

  • 【1級】(報酬比例の年金額)× 1.25
  • 【2級】(報酬比例の年金額)
  • 【3級】(報酬比例の年金額) 最低保障額 58万3400円

さらに、1級・2級においては、障害厚生年金を受給する方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいれば、加給年金が22万3800円加算されます。

4. まとめ

公的年金には、65歳以上になって受け取る老齢年金以外に、遺族年金、障害年金などいろいろな種類があります。

所得税や住民税は、ほとんどの場合かかりませんが、一部かかる場合もあります。この機会に整理してみるとよいでしょう。

参考資料

舟本 美子