病気やケガで入院しても、医療保険に入っていれば、1日入院5000円や1万円など給付金が支払われるので助かりますね。
しかし、2カ月以上入院すると給付金が支払われなくなる保険がとても多いことをご存知ですか。「そんなに入院することはないから大丈夫」と思っても、疾患によっては長期入院となるケースも少なくありません。
そこで、医療保険の「支払限度日数」に着目し、保険商品の仕組みと選び方について解説します。
医療保険の基礎知識。入院給付金や支払限度日数など確認
まずは医療保険の基本的なことについて確認しましょう。
医療保険の入院給付金と手術給付金
医療保険は、病気やケガで入院または手術をした時に給付金が支払われる保険です。
給付金には入院1日あたりの保障額が定額で決められている「入院給付金」と、手術をした時にまとまった額の給付金を受け取れる「手術給付金」があります。
手術給付金は入院給付金の倍率で決められているのが一般的で、たとえば入院給付金が1日あたり5000円、手術給付金が10倍であれば所定の手術を受けると5万円受け取ることが多いです。
手術給付金の倍率は手術の種類によって10倍、20倍、40倍など決められており、倍率設定は保険会社によってさまざまです。
医療保険の支払限度日数
入院給付金は、「入院1回あたりの支払限度日数」と「通算の支払限度日数」が決められています。
入院1回あたりの支払限度日数は「60日型、90日型、120日型」などが多く、通算の支払限度日数は1000日程度が多くなっています。
支払限度日数が60日型の保険商品では、タイトルのように2ヵ月以上の入院には対応できないことになります。これについては次項で詳しく説明します。
医療保険の保険期間と保険料払込期間
医療保険には保険期間が決められている「定期」タイプと、一生涯保障が続く「終身」タイプがあります。
一般的に定期の方が保険料は割安ですが、保険期間が終了すると更新できるタイプのものは更新のたびに保険料は高くなっていきます。一方終身は、保険料は加入時からずっと変わりません。
保険料払込期間は「短期払」と「全期払」があります。
短期払は期間を決めてその期間で払い終えてしまい、それ以降の保険料の支払いがなくなります。全期払は保険期間中ずっと保険料を払い込む必要がありますが、毎回の支払い額は小さくなります。
【医療保険】保障を付加する特約
特約を付けることで保障を充実させることができます。特約には次のようなものがあります。
医療保険の特約1.通院特約
一般的な医療保険は入院をした時に給付金を受け取ることができますが、通院でも給付金を受けることができる特約が通院特約です。退院しても経過観察のために通院するケースは多くなっているので、通院特約のニーズは高まっています。
医療保険の特約2.特定疾病に関する特約
がんや心筋梗塞、脳卒中など、特定の疾病に対する保障を厚くする特約です。給付金の支払事由や支払限度は、保険商品ごとに異なります。
医療保険の特約3.先進医療に関する特約
先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度な医療技術のことです。健康保険の適用外となるため、費用は全額自己負担となり、治療費は高額になります。特約を付ければこうした先進医療の治療費にも備えることができます。
ここで紹介した特約はほんの一部です。特約を付ければ付けるほど保障は充実しますが、保険料も高くなるため、必要性を充分に検討してから付帯するかどうかを決めましょう。
医療保険の「支払限度日数」とは
医療保険には入院1回あたりの支払限度日数が定められています。
この1回の入院とは、一度退院して、同じ病気で再度入院した場合も1回の入院とされます。ただし、前回の退院日の翌日から180日を経過して再度入院した場合は、別の入院として取り扱われます。
支払限度日数が60日の場合は、入院が60日を超えると入院給付金が支払われなくなりますが、退院したあと180日経てば、その後の入院では再び給付金が支払われるようになります。
医療保険の一つである「がん保険」は、一般的には支払日数に限度が設けられていません。この点は、がん保険に絞って加入するメリットとなっていますが、商品によって異なるので詳細はご確認ください。
実際に、支払限度日数を超えるような入院はどのくらいあるのでしょうか。厚生労働省の調査から入院日数の平均を見てみましょう。
入院日数の平均はどれくらい?
厚生労働省の「令和2年 患者調査の概況」によると、入院日数の平均は32.3日(病院33.3 日、一般診療所19日)となっています。
さらに詳しく、令和2年9月1日~30日に病院を退院した患者を対象とした入院期間別の構成割合を見てみましょう。
入院期間別の患者数の構成割合
入院期間別の患者数の構成割合1/2
出所:厚生労働省「令和2年 患者調査の概況(3 退院患者の平均在院日数等)」
入院日数の平均は33.3 日ですが、内訳をみると、2週間以内に退院している患者が66.8%いることがわかります。平均にすると1カ月ちょっとであっても、多くは2週間以内に退院していることがこの調査から知ることができます。
一方で、1カ月以上入院するケースも約17%あります。入院日数は病気の種類やケガの程度によるので、長期入院になりやすい傷病を次に見ていきたいと思います。
長期入院になる可能性が高い傷病とは
厚生労働省の「令和2年 患者調査の概況」から、令和2年9月1日~30日に退院した患者を対象とした傷病別の平均入院日数を紹介します。
<傷病分類別の平均入院日数>2/2
出所:厚生労働省「令和2年 患者調査の概況(3 退院患者の平均在院日数等)」をもとに筆者作成
認知症や統合失調症、うつ病などが分類される「精神及び行動の障害」が294.2日という長期入院となっていることがわかります。
他にも神経系の疾患であるアルツハイマー病が273日、結核が59.5日、脳血管疾患が77.4日、慢性腎臓病が53.4日と期間が長くなっています。
一方で、長期入院になると思われる悪性新生物、いわゆるガンは19.6日と意外と短いことがわかります。退院後は通院による治療や経過観察になると考えられます。
このように、全体をみた入院日数の平均は30日程度であっても、疾患によっては長期入院となるものがあり、特に精神及び行動の障害や神経系の疾患は入院が長期化することがこの調査から見て取れます。
8割以上が1ヵ月以内に退院するので、支払限度日数は60日で充分と考えるか、長期化したことを考えて支払限度日数が多いものを選ぶかは、各々の事情によりますが、疾患の種類によって入院日数におおよその傾向があることは知っておくとよいでしょう。
医療保険は公的保険の不足を補うもの
今回、支払限度日数に着目して平均入院日数を見てきましたが、医療保険で入院費用のすべてを賄う必要はありません。
保険適用の治療であれば原則3割負担で済み、自己負担額が高額になっても高額療養費制度があるため、所得に応じた還付を受けることができます。
こうした公的保険ではカバーできない費用(差額ベッド代、食事代、保険適用外の治療など)を医療保険でカバーすると考えましょう。そのため、貯蓄が十分にあれば、そもそも医療保険はいりません。
所得補償保険や就業不能保険が役に立つケースも
長期入院をしたとしても、保険適用の治療を受けていれば、医療費が高額になっても先述した高額療養費で負担を軽減できます。
問題は、入院によって働けなくなった場合の収入源です。会社員であれば、傷病手当金が給料の3分の2相当額支給されますが、自営業者の場合は無収入になってしまいます。
医療保険は基本、入院した時と手術した時にしか受け取れないため、自営業者の場合は医療保険よりも所得補償保険や就業不能保険を検討した方がいいかもしれません。所得補償保険や就業不能保険は、入院や自宅療養を問わず給付金が支払われます。
医療保険に入っているから大丈夫と安心していたものの、思った以上に長期入院となり給付金がおりなくなったケース、入院よりも通院での治療が長く続き、医療保険が役に立たなかったケースなど、思わぬ落とし穴もあります。
医療保険を選ぶ際は、公的制度を利用できるか、貯蓄がいくらあるか把握してから保障額を決め、保障内容を理解した上で自分にあった保険を選びましょう。
参考資料
石倉 博子
