この記事の読みどころ
日本はゴールデンウィーク明け、連休中の米国の経済イベントを見逃した方も多いかと思われます。今からすべてを振り返るのは一苦労ですが、5月5日に公表された4月の米雇用統計を振り返れば、連休中の米国経済イベントの概要は把握できると思われますので、お付き合いください。
4月米雇用統計:非農業部門雇用者数、失業率は予想を上回る改善、賃金はやや軟調
米労働省が2017年5月5日に発表した4月の非農業部門雇用者数は前月比21.1万人増と、市場予想(19.0万人増)、前月(7.9万人増で速報値9.8万人増から下方修正)を上回りました。
家計調査に基づく4月の失業率は4.4%と、市場予想(4.6%)、前月(4.5%)を下回りました。平均時給は前年同月比で2.5%増と、市場予想(2.7%増)、前月(2.6%増で2.7%増から下方修正)を下回りました。前月比では0.3%増と市場予想(0.3%)に一致しましたが、前月は0.1%と速報値の0.2%から下方修正されています。
どこに注目すべきか:民間サービス、U6失業率、雇用コスト指数
ゴールデンウィーク直前の4月28日、米国の1-3月期GDP(国内総生産)が公表されましたが、前期比年率で0.7%と、前期(2016年10-12月期)の同2.1%を大幅に下回りました。
気候変動などによる一時的な落ち込みなのか、それとも米国の景気回復を懸念すべきか判断が分かれるところです。しかし、4月の米雇用統計で、雇用者数の増加や失業率の低下を見る限り、米雇用市場の回復が示されたと見られ、米国景気について過度の心配は必要なさそうです。
なお、5月3日に米国では米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、政策金利を据え置くとともに、声明で先の1-3月期のGDP減速について一過性との認識を示しています。4月の米雇用統計はFOMC の声明とも整合的と見ています。
では、改めて4月の米雇用統計の内容を振り返ると、非農業部門雇用者数が前月比21.1万人増と市場予想を大幅に上回ったことに加え、幅広い業種で雇用が増加した点がプラス要因です。
たとえば、雇用の受け皿としての期待が高い民間サービス部門での雇用者数が大幅に増加しています。また、3月はマイナスであった小売は、小幅ながらプラスに転じ、家計需要と連動する傾向が見られる娯楽・宿泊関連や教育・医療サービスが大幅に改善しています。これらは米1-3月期GDPの低下は一過性であることを示唆する内容と見ています。
次に、4.4%と市場予想以上に低下した失業率も労働市場がタイトで、人手が足りない状況であることを示唆しています。その上、失業率は質の点でも改善が見られます。たとえば、U6失業率(経済的理由によるパートタイム等を含めた失業率)は8.6%と、前月から0.3%低下しています。
また、平均失業期間は24.1週間と短期化しており、2009年の水準に回復しています。労働参加率は62.9%と、前月の63%から低下するなど注意が必要な面は見られますが、全体的には改善傾向と見ています。
反対に、前年同月比で2.5%増となった平均時給は回復が鈍いことを示唆しており、賃金インフレの加速は見られませんでした。しかしながら、他の賃金データには回復も見られます。
たとえば、ゴールデンウィーク直前の4月28日に、米金融当局が注視している雇用コスト指数(ECI)は1-3月期に前期比0.8%上昇と大幅な伸びを示しました。このように、賃金データによっては回復を示唆するものもあり、少なくとも毎月公表されることから変動も大きい、今回の平均時給データを過度に悲観する必要は無いと思われます。
このように、4月の雇用データは、軟調であった1-3月期のGDPは一過性であったことを印象づける内容と見ています。したがって、6月利上げのシナリオに変更を迫る要素は雇用統計には見られなかったと言えるでしょう。