米国では労働者の35%を占めるミレニアルズ世代
「ミレニアルズ」という言葉を聞いたことがありますか。21世紀に18歳になった人たちを米国ではミレニアルズと呼び、具体的には18歳から35歳の若年層が該当します。総人口の25%、労働者の35%を占める規模を誇ることから、米国の社会や経済への影響力が大きいことは容易に想像できます。それ故にこの世代の囲い込みはどの産業にとっても重要な課題といえます。
一方、日本の18‐35歳人口は総人口の19%に過ぎませんが、やはり産業界からの注目度は同様に高いように思えます。特に、顧客の6割以上が60歳以上と言われ、将来顧客となる層の育成と囲い込みが喫緊の課題である日本の金融業界にとっては、ミレニアルズ世代こそ目が離せない存在のはずです。
事実、このところ金融業界から若年層向けのメッセージが増えていますし、金融関連の制度、たとえば2017年にスタートする個人型DC(iDeCo、イデコ)の拡充や2018年にスタートする積立NISAもそうした層をターゲットにしています。
信頼への希求が強く、親世代が重要な役割を果たす
では、具体的にどうやってミレニアルズ世代にアプローチすればいいのでしょうか。米国財務省が行った2013年の調査ではこの世代の41%が学生ローンを抱えていますが、その一方で米国Fidelity の調査では47%が何らかの金額で老後の準備を始めていることもわかっています。
また考え方として、不況の時代を生きたことからリスクを避ける傾向が強く、インターネットやオフラインのメディアの情報も信用しきれないようです。自分のライフステージにあった身の丈の提案を求め、いわゆる一般的なものは受け入れず、専門家の意見を欲している点も特徴のようです。
ミレニアルズ世代は「信頼できる」 情報に対する希求が強いことから、米国Fidelityでは、信頼を寄せる情報元と想定する「親世代」を、資産形成のためのコミュニケーションの仲介役とする「ファミリー・シェアリング」というプログラムを始めました。米国Fidelityが用意した資産形成のためのコンテンツのなかから、家族や友人が自分の子どもや友人のために選び、それをメールで送ります。ミレニアルズにとっては自分の実情に沿ったコンテンツが選ばれ、送られてくるだけにその情報への信頼度も高まるというわけです。
日本でも同様な傾向がある20代の若年層
フィデリティ退職・投資教育研究所の調査によると、「日本の20代も47%が老後資金を保有しているもののその金額は極めて少ない。またお金の情報の入手先として家族を挙げる20代は1割に達する」ことがわかりました。お金や情報は国境を越えやすく、同じような傾向を共有するのかもしれません。日本でも「親世代」を若年層とのコミュニケーションに活用するアイデアは重要なのではないでしょうか。
合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史