2. 一般企業は不動産投資を副業と見なすのか
実は不動産投資が副業に該当するのか、という点について明確な答えは存在しません。
何をもって「副業」と見なすかは、各企業が独断で設定する「社内規定」によるものなので、ここまではOK、という明確な線引きは存在しないのです。
一般的に不動産投資は株やFXと同じ投資の一種であり、企業に雇用されて行う業務とは違うため、副業の定義には当てはまらないと見なされることが多いです。
しかし、だからといって勤め先に黙って不動産投資を始めるのはお勧めできません。
副業を禁止している企業は、あなたの所得について自社から支払った「給与所得」だけだと考えています。
しかし、あなたが副業に取り組み、不動産投資など別の方法で所得を得ていた場合、あなたにかかる住民税は給与所得のみの場合に比べて高くなってしまうのです。
給与から天引きされる住民税が本来の額より高額であれば、一目で副業をしていることが勤め先にバレてしまうでしょう。
減給や解雇といった処遇が下される可能性も否定できず、勤め先に内緒で不動産投資に取り組むリスクは非常に高いといえます。
不動産投資を始める前に、あらかじめ勤め先に確認をとっておくのが一番よいでしょう。
「不動産投資は副業に入らないので取り組んでもよい」という返答が得られた場合、安心して不動産投資に取り組むことができます。
2.1 不動産投資は公務員も副業として取り組める
副業は原則禁止されている公務員ですが、実はある一定の規模を超えない範囲であれば、公務員でも許可なく不動産投資に取り組んでよいことになっています。
国家公務員法での規定を分かりやすくまとめると
- 営利を目的とする私企業(営利企業)の役員を兼業すること、または営利企業を自営することを制限する
- 上記以外で、事業・事務に継続的または定期的に従事し、報酬を得る兼業をする場合、内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可を必要とする
とあります。
つまり不動産投資はあくまで資産運用の一種であり、一定の規模以上でない限り、どちらの規定にも抵触しないのです。
ただし、先述の通り「一定の規模」以上となると、国家公務員法に定められている「自営」に該当します。人事院規則14-8に明記されている「一定の規模」の基準には
- 独立家屋が5棟以上
- 独立的に区画された一の部分の数が10室以上
- 土地の賃貸契約10件以上
- 駐車場の場合、駐車台数10台以上
- 賃料収入の合計額が年額500万円以上
などの条件があります。
もしこれらの規模以上の不動産経営をする場合でも、自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)を提出し、承認を得られれば問題なく不動産投資を継続することが可能です。
この承認には、規模や収入といった数値的な条件の他に、
- 職員の官職と不動産や駐車場賃貸の間に特別な利害関係があるか
- 職務の遂行への支障がないか
- 公務の公平性及び信頼性の確保への支障がないか
などを含めて承認の可否が判断されます。
自営兼業承認申請書を提出する場合、2番目の「職務遂行への支障」について特に気を付けるようにしましょう。
不動産経営が一定の規模以上となると、副業に気を取られて本業に支障をきたすのではないか、また本業以外の業務が増えることで疲労が増え、本業に悪影響が及ぶのではないか、ということを特に危惧されます。
一定の規模を下回る不動産投資が許可なく認められているのは、その規模であれば本業に支障がないと判断されているからです。
そこで本業への支障をなくすために、不動産管理会社へ賃貸管理を委託するとよいでしょう。家賃回収や集客などを管理会社にお任せすれば、オーナーの仕事を減らすことができます。
不動産投資の規模が一定の規模を下回っていたとしても、本業に悪影響が及ばないよう、また自らの負担を軽減するためにも、管理会社を利用することをお勧めします。
地方公務員の場合は、各自治体の規定に従う必要があります。上記で紹介した規定とは別に、必ず自治体ごとの規定を確認してください。
2.2 副業を後押しする政府の方針
2018年は副業元年とも呼ばれ、政府主導で副業を許可しようという流れが生まれています。
働き方改革を推進する政府は、2018年1月「モデル就業規則」を改訂し、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除しました。さらに企業に対しても「副業・兼業を認める方向で検討することが求められる」とするガイドラインを発表しています。
それに伴い、SoftBank、DeNAなど副業を許可する企業もじわじわと増えてきました。
今後、副業として堂々と不動産投資ができる環境が増えていくかもしれません。