エネルギー移行に向け、年数兆米ドルを利用可能に

HSBCはアジアで幅広く事業を展開しており、150年を超える歴史を持ちます。アジアは世界が期限内にネットゼロを達成できるかどうか、成否を左右するとみなされている地域です。当該地域においては、エネルギーシステムの2050年までのネットゼロ移行のコストだけでも、2020年~2050年に37兆米ドルかかると推定されています。

ただ、アジアや他の地域では、エネルギー移行に向けての投資が十分なスピードで進んでいないというのが厳しい現実です。当社は、GFANZなどの組織と連携し、グリーン資産への投資不足というパターンを打破することを目標としています。このためには3つの主要な要因が存在します。

①現在のエネルギー危機は再生可能エネルギーと幅広いクリーンエネルギーに対する投資のリスクを取り除くために、従来よりも優れた一貫性のある政策決定を促進すると考えられます。

これは大規模な一貫したカーボンプライシング、信頼できるカウンターパーティとの長期入札、または固定価格買取制度、補助金、その他の価格インセンティブという補助的かつ安定した組み合わせによるものです。

②サステナブル投資プロジェクトのパイプラインの障害物は取り除かなければなりません。

投資家はしばしばプロジェクトが本当に環境に優しいかどうか確認することが困難であると考えます。情報開示基準は低く、法管轄地域によってばらつきがみられます。適切な場合、これが開発保証を提供するにしても、ファースト・ロス・トランシェを取るにしても、公的融資がさらに民間投資を引き付けるために(いわゆる「ブレンド・ファイナンス」)、プロジェクトのリスクを軽減することが必要です。

GFANZを通じ、一連の問題克服を支援するための新たなパートナーシップを構築することが可能です。クリーン・インフラ投資を加速させるためには新たな独創的なソリューションが必要ですが、これはまたレガシーである石炭資産の早期終了を促すためでもあります。

③規制当局は健全性に関する資本規制をネットゼロ問題に合わせて調整し、それによってセクターのシステミック・リスクに取り組むことが可能です。

現在の気候ストレステスト(健全性審査)によって特定されたブラウン資産の移行リスクは、秩序だった移行を阻害する可能性があるグリーン資産(再生可能エネルギーの展開、クリーン燃料、または電動化インフラなど)に対する投資不足のリスクと併せて判断する必要があります。

現在の資本取引の処理においては、金融機関による気候テクノロジーの一定基準で調整されたバランスシートの支援や長期に渡る大規模プロジェクトの融資を禁止しています。これらは極めて重要な初期段階にある気候テクノロジー、クリーンで公平かつレジリエントな未来のエネルギー、モビリティ、インフラ、産業システムを構築するためには不可欠といえます。

エネルギー移行に向けた金融システムの再構築は進行中で、これによって期限内にネットゼロを達成する我々の能力は劇的に改善することが見込まれます。ただし、まだ初期段階にとどまっており、金融機関と顧客、投資家、そして重要なことに、規制当局と学術団体とも徹底した連携を必要とする多くの取り組むべき作業が存在しています。

金融機関にとっての「通常業務」は変化しました。つまり、ここにきて金融業界は自らがネットゼロ移行の中心に位置しなければならないという点を理解しています。

※この文章は世界経済フォーラムのウェブサイト(weforum.orgに掲載されました