共通ポイントサービス市場が4強時代に突入

共通ポイントサービス市場が今、活況です。共通ポイント業界の大手3社は、カルチュア・コンビニエンス・クラブの「Tポイント」(会員数約6,100万人)、三菱商事系のロイヤリティマーケティングの「Ponta(ポンタ)」(同約8,000万人)楽天の「楽天スーパーポイント」(同約1億1,400万人)です。

この3強に加えて、2015年12月にはNTTドコモが携帯電話の利用者などに向けて「dポイント」のサービスを開始しました。後発ながらドコモの契約者数約7,000万人がそのまま会員になるのが大きな特長です。共通ポイント業界は一気に4強の時代に入りました。

共通ポイントとは、その名のとおり、小売店などが自店以外のさまざまな業界の企業とポイントを共通化することです。ポイントの会員はある店で貯めたポイントを別の店で使うことができます。

ところで、この会員に付与される共通ポイントはそもそも誰が提供しているのでしょうか。共通ポイント事業者でしょうか。答えはノーです。お金の流れはとしてはそうですが、ポイントの原資という意味では異なります。

共通ポイントの原資を出しているのは加盟店

答えを言えば、共通ポイントの原資を出しているのは小売店などの加盟店です。加盟店がポイント事業者に支払う手数料から付与されます。

手数料の支払い形態や金額はポイント事業者や契約の内容などによって異なります。たとえば、「Tポイント」の場合、月々7,500円の月額固定の手数料に加え、Tポイントの関与売上の3%となっています(加入加盟店の数やTポイント関与売上の額によって手数料の軽減措置あり)。このほか、自店の会員に付与したポイントも加盟店の負担です。

では逆に、会員がポイントを還元(ポイントを使用)する場合にはどのような流れになっているのでしょうか。この分は、ひとまず加盟店が立て替える形になります。後日、ポイント事業者からポイント分の金額が戻されます(手数料から差し引かれる場合もあり)。

共通ポイント導入のメリットは顧客の囲い込みやマーケティング

Tポイント加盟店の手数料が関与売上の3%と書きました。加盟店にとっては、決して安い額ではありません。それだけの費用を負担してでも、共通ポイントを導入するメリットはどこにあるのでしょうか。

いくつか挙げることができます。まずは、顧客の囲い込みです。たとえばポンタなら、「ポンタ会員なので、コンビニはできるだけローソンを利用する」という人もいます。野村総合研究所の調査によれば、「ポイント付与の有無により購入する店舗を変える」と答える人が年々増えており、特に男性よりも女性にその傾向が高いそうです。

既存顧客の再来店を促すだけでなく、ある店で貯めたポイントを別の店で使えるのも共通ポイントの特長です。つまり相互送客の機会も増えます。のぼりやステッカーなども支給されるので、集客につなげることができます。

このほか、マーケティングデータが入手できるのも大きなメリットです。ポイントを利用した会員の属性(個人情報は除く)や利用情報などをもとに、現状分析や販促活動などが行えます。

ポイント事業者の中には、これらをもとにした、データ分析、ダイレクトメール、メルマガ、広告などのマーケティング活動の支援を行っているところもあります(一部有料)。

マルチポイント化が進むとポイント事業者の差別化が難しくなる

小売店だけでなく、電力、ガス、銀行、証券会社などでも共通ポイントを導入する企業が増えています。今後はさらに加盟店が増えるでしょう。利便性はさらに高まると考えられます。

ただし、加盟店が増え続けるといずれは、「あの店ならポイントが貯まるから」という理由がなくなります。

さらに、今でも、航空会社のマイルや「nanaco」、「楽天Edy」 など電子マネーのポイントと交換できるようになっていますが、今後はいっそうマルチポイント化が進むと考えられます。特に仮想通貨でも使われるブロックチェーンが普及すると、さまざまなポイントをすぐに交換できるようになると言われています。

そうなると、ポイント事業者の差別化も難しくなります。生き残りのためには、加盟店の経営に貢献するような、付加価値の高いサービスの提供が求められるようになるでしょう。

下原 一晃