会社員などが加入する「厚生年金」と自営業者などが加入する「国民年金」では、将来受け取ることができる年金額にどのくらいの差があるのでしょうか。
厚生労働省の調査による平均受給額で比較してみたいと思います。
また、現状の年金だけでは足りないといわれる国民年金受給者が、年金を増やす方法もご紹介します。
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1. 厚生年金と国民年金「月の平均額」はいくら違うのか
会社員や公務員が受給する「厚生年金」と自営業者や専業主婦(主夫)などが受給する「国民年金」では、平均受給額はどのくらい違うのでしょうか。
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和2年度)」によると、厚生年金受給者の平均年金月額は14万6145円、国民年金受給者の平均年金月額は5万6358円となっています。
厚生年金の平均年金月額は、国民年金のおよそ2.6倍です。
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出典:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和2年度)」をもとに筆者作成
厚生年金を月額14万4366円受給できる人の年収の目安は約444万円(40年間同じ年収で就業した場合)となります。
国税庁の「民間給与実態統計調査(令和2年分)」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は433万円なので、ほぼ平均的な年収の会社員が受給できる年金額といえるでしょう。
ちなみに、国民年金の保険料を20歳から60歳までの40年間納めた場合の満額は6万4816円(令和4年度)です。免除期間や未納期間がなければこちらの金額が参考になるでしょう。
2. 老後「ひとり暮らし」の生活費はいくらか
年金の平均受給額がわかったので、次に年金だけで暮らした場合の生活費を見てみましょう。総務省の「家計調査/家計収支編(2021年)」から65歳以上の無職単身世帯の消費支出を参考にします。
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出典:総務省「家計調査 家計収支編 第6表 2021年 単身世帯」をもとに筆者作成
この調査データから、生活費はおよそ13万円かかることがわかります。年金が厚生年金であれば、マイナスにはなりませんが、余裕がある生活とはいえないでしょう。
問題は、国民年金だけの場合です。国民年金を満額受給できても、およそ6万5000円不足する結果となりました。
年間では78万円の不足となり、90歳まで生きた場合は1950万円不足することになります。
3. 年金が「国民年金だけ」の人の備え方3選
このように、国民年金だけでは、老後の生活は厳しいことがわかりました。そこで、国民年金受給者の老後の備えとして有効な方法を3つご紹介します。
3.1 国民年金だけの人の備え方1:付加年金
付加年金は、国民年金第1号被保険者(自営業者や学生など)に認められている老齢基礎年金の上乗せ制度です。
月々の保険料に400円の付加保険料を上乗せすると、老齢基礎年金に「200円×付加保険料納付月数」分が上乗せされて支給されます。
たとえば、20年間付加保険料を払い続けた場合、
- 400円×240月=9万6000円
9万6000円、本来より多く払った計算になります。
これに対し、受け取れる年金額は、
- 200円×240月=4万8000円
老齢基礎年金に4万8000円、上乗せされた金額を生涯受け取ることができます。
つまり、2年間で元がとれる計算です。
このように年金を増やすのに効果的な制度なので、自営業者などの第1号被保険者であれば利用しない手はないでしょう。
デメリットとしては、物価の変動に対応していないため、インフレになった時に払った保険料分の利益が得られない場合もあります。ただ、長生きすればするほどリターンが得られるので費用対効果は高いといえます。
3.2 国民年金だけの人の備え方2:iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは原則、20歳以上60歳未満の全ての人が加入できる公的年金の上乗せ給付を目的とした制度です。
掛金には加入者の区分によって上限が設けられており、国民年金第1号被保険者は6万8000円(国民年金基金または国民年金付加保険料との合算)となっています。掛金は全額所得控除の対象となるため、税金が軽減できます。
iDeCoの特徴は、掛金を加入者本人が運用し、運用成績によって将来受け取る年金額が変化する点です。運用の仕方によっては年金額が減るリスクもありますが、インフレに対応できるというメリットもあります。
注意点は、原則60歳まで中途解約ができないことと、加入期間中ずっと手数料がかかること。この点に留意すれば、税制面での優遇があるため、老後資金を蓄える方法として利用するメリットは大きいと思います。
3.3 国民年金だけの人の備え方3:繰下げ受給
老齢年金は、65歳で受け取らずに66歳以降75歳まで※の間で繰り下げて受給すると、繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額された年金を一生涯受け取ることができます。
1カ月の繰り下げで0.7%分増額され、最大で84%年金額が増額されます。
国民年金受給者は退職がない自営業者が多いと思います。つまり、65歳に囚われずに働くことができるので、繰り下げ受給をしやすいといえます。
老後のプランや健康状態にもよりますが、年金の受け取り方の選択肢に入れておくといいでしょう。
※昭和27年4月1日以前生まれの方は、繰下げの上限年齢が70歳までとなります。
4. 公的年金やそれ以外を増やす方法を考えよう
厚生年金受給者と国民年金受給者の平均年金月額の差は2.6倍ほどありました。
国民年金受給者は満額を受給できたとしても、毎月6万5000円ほど生活費が不足する可能性があるので、公的年金以外の年金や貯蓄を準備しておかなければなりません。
また、公的年金を増やすための方法も試みるとよいでしょう。老後のために今できることを考えておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和2年度)」
- 総務省「家計調査 家計収支編 第6表 2021年 単身世帯」
- 日本年金機構「令和4年4月分からの年金額等について」
- 国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査|
- iDeCo公式サイト「iDeCoってなに?」
- 日本年金機構「付加保険料の納付のご案内」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
石倉 博子
