2022年7月2日にログミーFinance主催で行われた、第38回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第1部・タキロンシーアイ株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:タキロンシーアイ株式会社 執行役員経営企画部長 金原一弘 氏
元・ファンドマネージャー/元・ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
タレント、ナレーター 飯村美樹 氏
第38回 個人投資家向けIRセミナー
金原一弘氏(以下、金原):タキロンシーアイ株式会社執行役員経営企画部長の金原でございます。本日はよろしくお願いいたします。
本日、みなさまへお伝えしたいことは3点です。1点目は当社タキロンシーアイについて、2点目はビジョンと戦略、3点目は業績推移および見通し・株価情報についてです。
数字で分かるタキロンシーアイ
金原:まず、会社概要についてです。当社はプラスチック加工業を生業としており、従業員数は約3,200名、売上高は約1,419億円、営業利益は約86億円となっています。製造拠点は国内に25拠点、海外に6拠点あります。当社の歴史としては、1919年に創立し、今年で創業103年目になります。
こんなところにタキロンシーアイ
金原:当社の事業は、BtoBビジネスがメインになっており、普段の生活の中で当社の製品を見かけることはあまりないと思いますが、実はいろいろなところで使われています。
スライドには赤色の印がたくさんありますが、これらすべてに当社の製品が使用されています。その中でもマンション共用廊下の塩ビシートや、農業用ハウスのフィルムなどは当社で製造・販売しており、どちらも業界トップシェアとなっています。
会社情報・株式情報
金原:会社情報として、株主数は今年3月末で1万2,681名になりました。昨年3月末時点では9,960名でしたが、この1年間で株主が約27パーセント増えました。その内訳については、国内法人が66.65パーセント、個人株主が14.73パーセントとなっています。
沿革
金原:沿革についてご説明します。当社は1919年に創業者の瀧川佐太郎が現在の大阪市生野区に「瀧川セルロイド工業所」を創業し、再製セルロイドの販売から始めました。その後、燃えやすい性質のセルロイドからプラスチック加工業に業種転換し、2017年にはタキロン株式会社とシーアイ化成株式会社が統合して、現在のタキロンシーアイに至っています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):海外進出はおそらく1990年代後半から行われていたと思いますが、現在の海外売上比率を教えてください。
金原:今年3月末の時点で、海外売上比率は17.7パーセントとなっており、前年から1.7パーセント増加しています。実は、2023年度に海外売上比率20パーセントという目標を立てて、現在は海外事業拡大に注力しています。
それでは、沿革についての2分間の動画を用意してきましたので、ご覧いただきたいと思います。
飯村美樹氏(以下、飯村):動画を拝見すると、かなり身近な製品が多いですね。
坂本:そうですね。BtoBと言いながらも、身近なところにある製品が多い印象です。
連結決算ハイライト
金原:連結決算ハイライトです。売上高は1,419億円3,600万円、営業利益は86億5,100万円で、売上高は前年同期比5.6パーセント増、営業利益は前年同期比1.6パーセント増という内訳になっています。
昨年はコロナ禍からの回復途上において販売が増加しました。また、原材料価格の高騰により、製品価格に転嫁させていただきました。コロナ禍からの回復と製品価格の値上げにより、このような内容になっています。
売上高の円グラフをご覧いただくと、事業セグメントが大きく4つあることがわかると思います。売上高はそれぞれ、建築資材事業セグメントが444億円、環境資材事業セグメントが538億円、高機能資材事業セグメントが216億円、機能フィルム事業セグメントが213億円です。同様にスライド右側には営業利益の割合も記載しています。
国内製造拠点
金原:国内製造拠点は25拠点あります。分布はスライドに記載しているような状況で、写真の工場は、タキロンシーアイ本体の工場となっています。それぞれ各工場で製造している製品は異なります。
海外製造拠点
金原:海外製造拠点については、アメリカ、イタリア、中国、インドネシア、ウルグアイの5ヶ国、中国は上海に2拠点あるため、計6拠点で生産しています。
グループ概要
金原:グループ概要として、国内16社、海外7社のグループ会社があります。大部分がそれぞれの事業セグメントに紐付いているかたちになります。
グループ企業理念
金原:グループ企業理念についてご説明します。当社は昨年度、企業理念を「使命」と「実現したい企業文化」という2つに整理しました。使命として「人と地球にやさしい未来を創造する」、実現したい企業文化として「重ねていく誇りと変革する勇気」を掲げています。
使命である「人と地球にやさしい未来を創造する」というメッセージは、従来の「プラスチックテクノロジーで人と地球にやさしい未来を創造する。」から継承したもので、多様な分野で社会に貢献する社会課題解決型の企業を目指しています。その姿勢を明確にする意味で、基本的な思いはそのまま残しつつ、よりシンプルなものに変更しました。
また、実現したい企業文化の「重ねていく誇りと変革する勇気」を新たに定めました。当社が100年の歴史を刻むことができたのは、技術を磨き、社会やお客さまの信頼に応え続けてきたからです。これを誇りとして、現状に満足せず、自らを常に変革し続ける企業風土を育んでいく、という姿勢を示しています。
サステナビリティビジョン
金原:昨年9月には「サステナビリティビジョン」を制定しました。内容として「今日を支える、明日を変える。」というメッセージが込められています。
サステナビリティの根底にある、自らが長期的かつ持続的に成長していくことが社会全体のサステナビリティにつながる、という思いからこのメッセージを発信しています。今後は「サステナビリティビジョン」に沿って、サステナビリティ経営を推進していきたいと考えています。
具体的には、今年4月からサステナビリティ委員会を社長直下で創設しました。環境、ガバナンス、ソーシャル、経営基盤などのサステナビリティ課題に対し、計画的かつ長期的に取り組んでいきます。優先的に取り組むマテリアリティ10項目に関しては、すでに2019年に制定しており、昨年制定した中期経営計画にも反映しています。
サステナビリティ活動で特に注力することは、CSR調達と気候変動対応の2点と考えています。CSR調達については、新たに制定したCSR調達方針に基づいて、バリューチェーン全体に及ぶ人権と生物多様性の尊重に努めていきたいと考えています。
気候変動については、昨年5月にTCFD提言へ賛同表明しました。今年度中に中長期の社内分析を行い、当社のリスクと機会を開示する予定です。
坂本:御社は、タキロンとシーアイ化成が経営統合して現在に至るわけですが、この両社のシナジーと経営統合の理由を教えていただけたらと思います。
金原:その理由は2点あります。1点目は合成樹脂加工総合メーカーとして、企業規模および事業ドメインを拡大するということです。タキロン、シーアイ化成ともに、売上はもともと700億円から800億円の規模でしたが、統合により事業規模と事業ドメインが拡大しました。
2点目に、2社統合後の事業ポートフォリオの再編とシナジー効果を狙いとしていました。すでに統合して5年が経過していますが、実際に、製造拠点および販売拠点の統廃合もすでに実行しています。今後も、プラスチック加工業界におけるリーディングカンパニーを目指していきます。
建築資材事業
金原:当社の4つの事業セグメントについて、それぞれ順番にご説明します。まず、建築資材事業セグメントに関しては、要となる住設建材事業、床・建装事業の2つの事業部から構成されています。
住設建材事業はポリカーボネート樹脂や塩化ビニル樹脂を使用した建材用途の材料を製造しており、ポリカーボネート樹脂板や波板、雨どいや管工機材などの製品があります。これらの製品の使用例をスライドにいくつか記載していますが、赤色で囲った部分のポリカーボネート樹脂板と防滑性ビニル床シートに関しては業界トップシェアになっています。
主要事業の強みとして、建築資材事業セグメントは、ポリカーボネート建材における国内随一の製造能力を誇っていること、そして、採光建材、防滑性塩ビ床材などが業界トップシェアとなっていることが当社の強みです。
主要製品(住設建材事業)
金原:ポリカーボネートの具体的な使用例です。スライドの写真は高速道路の透光性遮音板です。スライドの写真中央に赤色のマークがついていますが、この透明の板がポリカーボネート樹脂板の「ポリカーボネートプレート」です。
こちらは騒音の防止だけではなく、運転者に圧迫感を感じさせないようにするというメリットもあり、高速道路運転時の快適性に役立っていると考えています。
坂本:御社はポリカーボネート樹脂板に非常に強みがあるということですが、さまざまな建材の中で、ポリカーボネート樹脂板の優位性、また特長があれば教えてください。
金原:ポリカーボネート樹脂板は、透明性と、プラスチックの中でも非常に高い耐衝撃性という、2つの特長があります。さらに、プラスチックのため、ガラス代替としての使用を考えた時にガラスよりも軽いため、軽量という点も1つの特長です。
例えば、警察で使用するシールドや防弾バイザーなどにも採用されていると聞いていますので、道路透光板だけではなく、ガラス代替としてもさまざまな用途に使用いただいています。
主要製品(床・建装事業)
金原:主要製品である床・建装事業の使用例です。スライドの写真は、マンションの共用廊下やバルコニーの床に全面に使われているもので、防滑性や意匠性が特長の材料です。当社は廊下に敷き詰めた「タキストロン」と、階段に敷く「タキステップ」という製品ラインナップを保有しています。特にマンションの大規模改修工事で塗装工事や防水工事とともに実施される、床シートの張替工事で多く採用されています。
マンションは「ストック市場」と言われていますが、今後もリニューアル市場は伸びていくと考えられますので、マンション改修市場に注力し、トップシェアを維持していきたいと考えています。
坂本:品目によって異なると思いますが、国内トップシェアの屋外の床材では、どの程度のシェアなのか教えてください。
金原:国内において、おおむね50パーセント前後のシェアです。屋外の樹脂の床材では、マンションの開放の廊下、屋外の階段、バルコニーなどへの使用が主な用途になっていますが、マンション市場においては、非常に高いシェアをいただいています。
坂本:大規模改修時は床材を張り替えますので、マンションが建築され、その後の改築、リニューアルの時に売れそうですね。
環境資材事業
金原:環境資材事業セグメントについてご説明します。こちらはアグリ事業、インフラマテリアル事業の2つの事業部で構成されています。
アグリ事業では、農業用フィルムを生産しています。インフラマテリアル事業は、スライド右側にそれぞれの使用例を掲載していますが、遮水シートは、ため池や廃棄物処理場に敷き詰めるシートです。その右側にダムの写真を記載していますが、こちらはダムの止水板になります。
左下の水膨張性止水材は、コンクリートの継目に入れて使います。また、その右側の写真にある大きな黒い管の写真は高耐圧ポリエチレン管です。
環境資材事業セグメントに関しても、スライド内で赤色の枠で囲ってあるものが、業界トップシェアということになります。
坂本:多くのトップシェアがある環境資材事業セグメントですが、「主要事業の強み」に生産技術力と記載されていますが、どのあたりが優れているのか教えてください。
金原:強みは、お客さまのニーズを製品にする技術力や企画力と考えています。詳しくは、この後のページでご紹介します。
主要製品(アグリ事業)
金原:アグリ事業における農業用フィルムの使用例です。スライド左下に図示していますが、外側が当社が作っている農業用フィルムです。農業用ハウスの内側には水滴がついてしまうため、防滴の特殊なコーティングを施すことで、水滴がフィルムに沿って下に落ち、流れていくという仕組みです。
緑の葉のイラストは農作物ですが、水滴がフィルムに沿って流れず、そのまま下にポタッと落ちると、水滴の落ちた部分から作物が病気になってしまい、育ちません。それを防ぐため、つまり作物に水滴が落ちないように工夫しています。そのあたりの企画力、技術力が当社の強みになっています。
主要製品(インフラマテリアル事業)
金原:インフラマテリアル事業の製品の使用例です。スライドの写真は、東京湾アクアラインです。地下トンネルで使われている、水膨張性止水材の「ビノンハイドロタイト」は、止水用途で当社の土木関係の大きな強みとなっています。
高機能材事業
金原:高機能材事業セグメントでは、半導体分野向けが主力製品です。近年の非常に旺盛な半導体需要により好調を維持しており、半導体装置向け材料の素材でトップシェアとなっています。
当社と半導体分野との関係性について、関連製品の価値創造モデルをご用意していますので、そちらに沿ってご説明します。
高機能材事業 社会や顧客に常に新しい価値と品質を提供
金原:スライド中央の写真は当社の網干工場ですが、こちらで「FM/制電プレート」といわれる塩ビの樹脂板を作っています。その右側に記載している図が、当社が直接販売しているお客さまの加工業者です。この加工業者が、当社が納入した板を切断したり曲げたり、あるいは溶接したりします。
そのような加工を施し、半導体製造装置の部品や筐体の一部を作ります。それを半導体製造装置メーカーさまに納め、半導体製造装置として完成し工場に納品されるというようなバリューチェーンになっています。
スライド左下には競争優位性を記載していますが、国内外、中小から大手まで、多数の競合メーカーがあります。ただし半導体分野では高品質を求められるため、例えば半導体FPD製造設備分野へ製品を供給できる会社は、限られています。その中で、当社は半導体製造設備向けの「FMプレート/制電プレート」において、総合的な製品ラインナップを持っており、他社との差別化を図っています。
業界で長きにわたりビジネスを展開しているため、培った技術をベースとして、顧客要求に応え、高品質の製品を製造・販売し続けてきました。それによりお客さまからの信頼を獲得し、現在の当社のブランドにつながっていると考えています。
主要製品(高機能材事業)
金原:当社の「FMプレート」が使われているのは、スライドの写真の赤色の印がついている部分で、硬質塩化ビニル樹脂板です。その他、制電性能を付与したポリカーボネート樹脂板などもあり、クリーンルームのパーテーションなどの仕切りの板などにも使われています。
機能フィルム事業
金原:機能フィルム事業セグメントは、ボンセット事業(熱収縮フィルム)とサンジップ事業(ジッパー)の2つの事業部から構成されています。
ボンセット事業では、主にペットボトルのラベルに用いられる熱収縮フィルムを製造しています。スライド右側の写真がサンジップ事業で、食品包装のパウチと、パウチに使用されるジッパーテープを製造、販売しています。
ボンセット事業はこちらにペットボトルの写真を掲載していますが、みなさまに身近なペットボトルのラベルに使用され、これが主力用途となっており、ワールドワイドでトップクラスのシェアになっています。
先ほどご紹介しましたが、アメリカとウルグアイにも拠点があり、ボンセット事業に関しては、アメリカ、ウルグアイでも、シュリンクフィルムを製造して、グローバル展開しています。
サンジップ事業の製品は、主に食品や医薬品等の包装用パウチに使われており、「中からは開きにくい、外からは開けやすい」という工夫をしており、お客さまのニーズに従って、ジッパーテープを製造、販売しています。
そして、機能フィルム事業セグメントの強みは、先ほどお伝えしたようにワールドワイドであることです。スライド一番下に記載していますが、現在は環境問題が非常にホットな話題になっていますので、生分解、モノマテリアル、バイオマスなど環境配慮型製品のラインナップに注力しています。
主要製品(ボンセット事業)
金原:シュリンクフィルム、または熱収縮フィルムの使用例になります。スライドの写真のようにペットボトルの包装に使われており、当社では赤色の円で囲ってあるようなロール状で販売しています。
主要製品(サンジップ事業)
金原:サンジップ事業で製造しているジッパーテープの使用例です。食品包装用のパウチで、スライド内の写真に赤色の印がついていますが、チャックテープに使われています。以上が4事業セグメントの事業の内容の説明になります。続いて、ビジョンと戦略をご説明します。
長期ビジョン
金原:昨年、「タキロンシーアイ2030ビジョン」を制定しました。「創造的進化で地球の未来に確かな『安心』と『心地よさ』をとどける企業グループ」としています。
当社グループは、安心して暮らせる地球の未来を実現するために貢献したいと考えていますので、これまで培ってきた技術と知恵をもって、人々の暮らしを支え、明日の社会を変えていくという考えが根底にあり、こちらの長期ビジョンを制定しました。
長期目標の設定とバックキャスト
金原:今回の長期目標「タキロンシーアイ2030ビジョン」は、現在の延長ではなくて、まず10年後の2030年度の目標を設定しました。
具体的に売上高は2,000億円、営業利益は200億円、営業利益率は10パーセントを長期目標として設定しました。これらを達成するために、「Phase1」「Phase2」「Phase3」において、それぞれどのように行動していくかを制定したかたちです。現在は「Phase1」の「変革への決意」の3年間にあたりますが、バックキャストで、計画を制定しました。
中期経営計画
金原:中期経営計画の、「Phase1」「変革への決意」についてご説明します。2021年から2023年の3年間の中期経営計画になります。
中期経営計画 CX2023定量目標
金原:「CX2023定量目標」として、売上高は1,570億円、営業利益は110億円、連結純利益は75億円を設定しています。これらの目標を達成するために、6つの重点実施項目と2つの成長原資、2つの支援体制を設定しています。
CX2023 6つの重点実施項目と成長原資/支援体制の新設
金原:6つの重点実施項目の1番目は「社会課題の解決」です。サステナビリティを強く意識し、社会課題の解決を目指します。
2番目は「新事業・新製品・新技術の獲得」です。次世代を担う新事業・新製品・新技術を絶えず作り出していくチャレンジが必要なため、2番目の実施項目にしています。
3番目の「ボーダレスの加速」には、いわゆる海外展開やダイバーシティの2つの要素を盛り込んでいます。いずれにしても企業価値向上と事業成長を追求するかたちになります。
4番目は「デジタルの実装」に関しては、昨年10月にデジタルの専門組織を設置し、デジタル化を進めています。
5番目の「グループ経営の再整備」は、複合的な事業協働や投資効率最大化を目指し、グループが一体となって連結経営をしていく方針で進めているところです。
6番目の「経営基盤の進化」ですが、実は2019年に「充実人生 経営宣言」を標榜しました。社員の充実した人生のために良質な職場を提供するという経営宣言のもと、そのような人生を支援するワークライフバランスの向上に取り組んでいます。また、工場では無事故の実現、ハラスメントの撲滅、職場環境向上に向けて、日々、経営基盤を強化しています。
以上が6つの重点実施項目ですが、それをバックアップするために2つの成長原資があります。
1つ目は、330億円の投資枠の設定です。これは3年間で330億円になりますが、そのうち30億円はDXに伴うもの、残りの300億円は環境や新規事業、グローバル展開の原資です。
2つ目は、研究開発費総額を売上高比率の2パーセント以上に設定しています。現状は半分くらいの1パーセント弱ですが、当社はやはりメーカーですので絶えず新製品・新技術を生み出していく必要があるため、研究開発への注力を考えています。
そして、2つの支援体制の新設については、先ほどお伝えしたとおり、1つ目にデジタル戦略組織を昨年10月から設置しています。
2つ目に関しては、前回未達で終わった中期経営計画の反省点として、モニタリングが欠けていた中期経営計画の進捗状況を絶えずモニタリングするために、社長を委員長とした中計・マテリアリティ管理委員会を設置し、毎月モニタリングをしています。
CX2023 定量レビュー
金原:定量レビューについては、中期経営計画の初年度にあたる2022年3月期は営業利益率が前年より少し下がっていますが、それ以外の項目に関しては前年実績を上回る結果になりました。
坂本:前年実績より上振れた理由を簡単に教えてください。
金原:昨年以来、コロナ禍から徐々に回復している動きが出ていることが要因の1つです。そしてもう1つは、値上げ前のいわゆる駆け込み需要です。原材料価格が上がったため、当社としても製品価格に転嫁していますが、アナウンスしてから値上げを行っていますので、特に昨年前半は駆け込み需要が顕著でした。その結果、トータル的に売上増につながりました。
CX2023 定性レビュー
金原:6つの重点実施事項に関しても、各項目でKPIを設定してモニタリングとレビューを行っています。
CX2023 定性レビュー
金原:それぞれ6つの実施項目ごとにKPIを設定し、それを達成するための方策を進めています。
CX2023 初年度レビュー
金原:初年度レビューも先ほどお伝えしたとおりです。
売上高・利益・各種指標推移 (実績および見通し)
金原:業績推移と見通しです。一番右側が2023年3月期の見通しで、売上高は1,500億円、営業利益は82億円、当期純利益は54億円としています。5年間の推移を並べていますが、当社の売上高は約1,400億円から1,500億円、営業利益は約80億円、当期純利益は約50億円から60億円の推移になっています。
セグメント別見通し
金原:2023年3月期セグメント別見通しについて、上段が売上高、下段が営業利益です。売上高に関しては4事業セグメントともに前年を上回る見通しになっています。
ただし、営業利益に関しては、建築資材事業セグメント、環境資材事業セグメントで前年を上回る見通しですが、高機能材事業セグメント、機能フィルム事業セグメントでは下回る予想です。昨年から現在も継続的に原材料価格が上昇している中で、当社としてもコストダウンに自助努力し、製品価格への転嫁も行っていますが、やはりタイムラグが生じるため、このような見通しを立てています。
配当予想
金原:配当予想についてです。2023年3月期決算の配当に関しては、22円を予定しており、中期経営計画期間中は、配当性向40パーセントを安定的に維持する方針で進めています。配当利回りは6月20日で少し古いですが、こちらの株価で配当利回りを計算すると、4.16パーセントになっています。
坂本:東証プライム市場の配当利回りの平均は2パーセントくらいのため、かなり高い利回りかと思います。配当性向40パーセントについて、中計期間中はとりあえず維持するというかたちでしょうか?
金原:そのとおりです。特殊損益が発生した時は訂正しますが、基本的には配当性向は40パーセントを維持という方針で進めていきます。
株価推移
金原:株価推移です。さまざまな理由はありますが、残念ながら直近の株価は少し低迷しており、6月20日の株価は529円です。原因としては、原材料高騰による影響の懸念をはじめ、新型コロナウイルスやロシアとウクライナの情勢の影響も織り込まれていると考えています。
今後とも、事業活動に限らずIR活動に関しても積極的に展開して株価の向上に寄与できるようにがんばっていきますので、よろしくお願いいたします。
質疑応答:原材料高騰の見通しと影響について
坂本:原材料高騰の見通しと影響について教えてください。
金原:基本的にはメーカーですので最優先でコストダウンに注力しています。ただし、昨年から続いている原材料高騰は従来になかったレベルのため、価格転嫁していますが、3ヶ月から6ヶ月くらいのタイムラグが発生します。
坂本:かなりのタイムラグがあるのですね。
金原:原材料価格が上昇し、それを後追いで製品価格に反映させていくため、価格高騰の影響は相応にあると考えています。
質疑応答:円安について
坂本:為替もかなり円安に振れましたが、こちらはいかがでしょうか?
金原:先ほど海外売上高比率を17.7パーセントと説明しましたが、比率としてはそれほど多くない数字です。多少の影響はありますが、為替に関しては大きな影響はありません。
坂本:バランスがとれているということですね。
質疑応答:伊藤忠商事グループにいるメリットについて
坂本:御社は伊藤忠商事が55.54パーセントの比率で株主になっていますが、伊藤忠商事グループにいるメリットを教えてください。
金原:伊藤忠商事は総合商社でワールドワイドな組織を持っているため、2つのメリットがあります。
1つは、当社は海外からの輸入品も扱っていますが、海外原材料調達でさまざまなサポートをいただいています。ただし、価格に関しては適正価格で交渉しています。
2つ目は海外事業展開です。当社はこれからも海外展開に力を入れていく考えのため、伊藤忠商事の力は非常に期待できると考えています。
質疑応答:成長事業について
坂本:事業内容について、さまざまなセグメントがあるとお話しいただきましたが、そのうちの成長事業はどれにあたるのかを教えてください。
金原:4事業セグメントがありますが、特に、現在は半導体分野のウエートが高い高機能材セグメントが非常に好調で、これからも拡大していく方針です。
また、機能フィルム事業セグメントにはシュリンクフィルムやサンジップテープがありますが、実は新規製品もいくつか開発中のため、用途的には成長分野だと考えています。
残り2つの建築資材事業セグメントと環境資材事業セグメントに関しても、全体としては成熟分野にはなりますが、この中でも新規で取り組んでいるものや伸びているものがあります。
4つの事業すべてとは申し上げませんが、半導体だけではなく、4事業セグメントとも成長分野がありますので、注力しています。
質疑応答:国内外の比重と海外市場の成長イメージについて
坂本:海外売上高比率を2割にしたいというお話でしたが、国内市場が頭打ちと言いながらもセグメントでは伸びる事業がありました。今のお話を踏まえて、成長分野の戦略の軸は国内と海外のどちらに比重を置くのでしょうか? また、海外市場の成長イメージを教えていただければと思います。
金原:今後、日本は人口が減少していく中で、海外展開は強化していく必要がありますが、約18パーセントは海外展開で、残り約82パーセントは国内のため、当然今後も国内をベースとして注力していきます。
そのような意味で、成長分野の戦略の軸はどちらもということになりますが、海外展開はやはり新型コロナウイルスによる約3年の影響であまり進展していません。今、徐々にその影響は沈静化しつつありますので、今後は非常に力を入れて取り組んでいこうと考えています。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:原材料高の高騰の影響の見通しは、いかがでしょうか?
回答:不安定な世界情勢や昨年から継続している原油高により、引き続き原材料の高騰を予測しています。当社としては、段階的な製品値上げや、製造原価低減を実施することで、業績へのインパクトを軽減すべく事業活動を行っていきます。
<質問2>
質問:床材が「ビニル」と称されるということは、塩化ビニルということですか?
回答:防滑性ビニル床シートの「ビニル」は、塩化ビニル樹脂のことを表しています。
<質問3>
質問:農業用フィルムは大量のプラスチック廃棄物と化するものではないですか? プラ廃棄物削減にどう取り組みますか?
回答:農業用フィルムリサイクル促進協会や農業用生分解性資材普及会の一員として使用済の農業用フィルムの完全循環システム構築を目指した諸課題への対応と、生分解性プラスチックを使用した資材の開発・利用・普及を促進しており、今後もプラスチック資源循環に向け継続して取り組んでいきます。
<質問4>
質問:東京湾アクアラインのトンネルで用いられている水膨張防止材について、もっと知りたいです。例えば中央リニア新幹線などにも用いられますか?
回答:具体的な案件名についてはお答えすることができませんが、トンネル工事での採用事例は多く、これまでも同様な案件へ採用いただいています。