業績の上方修正を発表

2017年4月21日、東京株式市場の引け後に、ソニー(6758)は2017年3月期通期予想の上方修正を発表しました。

発表資料によると、売上高は従来予想が据え置かれたものの、営業利益は2,850億円(従来予想2,400億円)、税引前利益が2,500億円(同1,960億円)、当社株主に帰属する当期純利益が730億円(同260億円)へと上方修正されています。

また、今回の発表から逆算される第4四半期(1-3月期)の営業利益は、907億円(従来予想457億円)となります。2014年3月期から2016年3月期第4四半期の営業利益は3年連続で赤字となっていましたが、これで第4四半期としては4年ぶりの黒字ということになります。

なお、営業利益の上方修正については、コンポーネント分野を除く全ての分野が想定を上回ったとされています。その理由としては、半導体分野を中心に費用が想定を下回ったことや、金融分野でソニー生命保険の繰延保険契約費償却額などが減少したことなどが挙げられています。

ポジティブニュースと考えることができる3つの理由

ソニーは4月28日に決算を発表する予定です。このため、決算内容の詳細な分析はそれまで待つ必要がありますが、現時点で筆者は、以下の3点から今回の発表はポジティブに受け止めてよいと考えています。

第1の理由は、今回の利益の上方修正が売上の上振れではなく費用の想定比での減少であったこと。つまり、コストコントロールの進展が確認できたことです。

かつてのソニーには、液晶テレビなどで規模(売上)を追い求めすぎた結果、業績が大幅に悪化した苦しい時期がありました。そうした過去の経験をもとに、現在のソニーは「一律には規模を追わない収益性重視の経営を進める」ことを経営方針としています。

今回の上方修正は、その成果が着実に表れてきたことを示すものとして、ポジティブに捉えることができると思います。

第2の理由は、第4四半期(2017年1-3月)の平均為替レートは1ドル113.7円、1ユーロ121.1円と、従来予想の前提為替レート(1ドル118円前後、1ユーロ123円前後)よりも円高で推移したにもかかわらず、上方修正が行われたことです。

この背景には、ゲーム、スマホ、液晶テレビなどでドル建ての調達部品が多いために、円高はむしろ利益面でプラスに働くという、一般的な輸出企業とは対照的な収益構造によるためです。今回の上方修正で、そのことが改めて確認できたことになります。

第3は、ソニーのなかで円高のマイナス影響を受ける半導体事業やデジカメについても想定を上回ったことです。これらの事業だけは日本での生産が多いために円高のマイナス影響を受けますが、それでも想定を上回っています。

その理由は、これまで述べてきたとおり、コストコントロールの進展が大きいためですが、製品ミックスの改善など製品競争力強化による効果もあったのではないかというのが気になるところです(その点は決算で確認したいと思います)。

今後の注目点

以前の記事『【株価好調!強いソニー復活へ-20年ぶりの最高益更新は可能か】』でも述べたとおり、2018年3月期はソニーの「第二次中期計画」(2015年3月期~2018年3月期)の最終年度にあたる非常に重要な年になります。

ソニーは経営数値目標として、営業利益5,000億円以上というターゲットを掲げていますが、4月28日に予定されている2017年3月期決算において、どのような新年度の予想が開示されるか大いに注目したいと思います。

また、株価のテクニカル面では、この記事『【ソニーの株価をテクニカル分析。4,000円超えの実現なるか?】』にあるように、4,000円付近にある節目に注目したいと思います。

ソニーの過去10年間の株価推移

和泉 美治