銀行に預けるよりもアマゾンギフトカード、という時代も近い?

泉田良輔氏の著書「銀行はこれからどうなるのか」を読んでいて、思わず「えー!」と声が出た。

毎月の生活費に使うお金としてチャージタイプのアマゾンギフトカードを買うとしたらどうなるか、というくだりだ。アマゾンのギフトカードはチャージタイプなら入金額に応じてポイントが付与されるのだが、それが銀行の普通預金金利と比べると、とんでもなく魅力的な数字だという。まったく気付いていなかった。

どうせ使うお金なのだからアマゾンギフトカードを買ってアマゾンで買い物をしたらお得じゃないか。生鮮食品の配達も始まったし対象地域も広がるかもしれない。銀行に預けておいてもお金が増えるわけでもなし、むしろATM手数料で何年分の利息が吹っ飛ぶ時代だし!

と、思わず興奮したのだが、もちろんこの本はこうしたお得情報を紹介するものではない。本書が明らかにしようと試みるのは、銀行の未来である。

かつて銀行は大きな再編を繰り返してきた。30代後半以降の方で、いわゆるメガバンクをメインバンクとして利用している人なら特に実感できるのではないか。口座を開設したときと同じ名前の銀行など、ほぼないはずだ。

見かけ上、再編の嵐は落ち着いたかのように感じられる。しかし、再び嵐が来るとしたら、一体何が嵐を呼んでくるのか。 泉田氏は、銀行が今再び岐路に立たされており、再編の嵐を連れてくるのはテクノロジー、つまりFinTech(フィンテック)だと指摘する。

FinTechは日本の銀行に再び嵐を呼ぶのか

FinTechは日本で長らく当たり前だと思われてきたお金の流れを簡単に変える可能性がある。たとえば、もしアマゾンがもし金融業に乗り込んできたら? 個人の預金が少しでもお得なほうへ、お得なほうへと流れていったら?

こうした流れが大きくなり、嵐になれば、それに巻き込まれるのは長く地方の雄としてその地位とその名を守ってきた地方銀行も例外ではない。むしろ地方銀行にこそ厳しい戦いが待っているというのが泉田氏の予測だ。

FinTechが変えるのは銀行の事業だけではなく、私たちとお金の関係性すべてである。そして、その競争は国内にとどまらず、グローバルに広がる。その時、日本の銀行はどうなるのか。 FinTechは銀行の何を変えようとしているのか。このような点に本書はさまざまなデータに基づいて鋭く切り込み、その全容を明らかにしようと試みている。

泉田氏は投信1の取材に対して「海外での取り組みを紹介する点にもっとも力を入れた」と語った。確かに、今後の競争が国内の銀行間のみならず異業種や海外とも行われると考えれば、銀行の未来を語るうえで日本より先行する海外の取り組みを知ることは欠かせない。

20年前と今では銀行の姿は大きく変わった。FinTechの登場はさらにその姿を加速度的に変貌させる可能性を私たちに想像させる。もしかするとその未来は10年、20年というような先ではなく、すぐそこなのではないか。本書は金融関係者だけでなく「私たちとお金との接点」がどう変わっていくのかに興味がある人にも読み応えのある一冊となるだろう。

銀行はこれからどうなるのか

著者:泉田良輔
出版社:クロスメディア・パブリッシング
単行本、 255ページ

LIMO編集部