貯蓄1000万円では「老後の生活」も安心できない
貯蓄1000万円では足りないのは、「老後の生活」を考えても明らかです。「老後には年金収入以外に2000万円が必要」という「老後2000万円問題」が記憶に新しい方もいるでしょう。
しかし最近では、2000万円でも足りないという声があります。原因はいくつかありますが、決して現役世代がシニアよりも浪費している(生活費が多い)わけではありません。
物価上昇や「住宅を購入できない=家賃を支払い続ける」などにより、老後の必要生活費はあがる一方なのです。
たとえ現時点で貯蓄が1000万円あったとしても、それ以上に貯めなければなりません。子どもの大学進学費用で貯蓄を削ることを考えると、さらにお金が必要になるでしょう。
先ほどのデータでは、1000万円ある貯蓄のうち半分以上が預貯金でした。しかし、現在の銀行預金では高い金利が期待できません。
今の60代や70代が資産を築いたように、「銀行に預けるだけでお金を増やす」ことは難しいのです。
その代わり、今の時代には無理のない範囲で取り組める少額投資なども出てきました。現役世代にとっては、こうした金融商品を駆使することも一つといえるでしょう。
投資と聞くと「博打」のイメージを持つ方もいますが、「リスクの高い投資先に一括で資産を注ぎ込む」ということはする必要がありません。
あくまでも分散をイメージすることで、大事に育てていくことは可能です。
とは言え、元本保証がないことはデメリットといえます。流行っているから安心と捉えるのではなく、自分にとって許容できるリスクや投資先をしっかり考えることが大切です。
年収や貯蓄額にまどわされず、我が家にあった貯蓄計画を
「年収600万円だからプチ裕福」「貯蓄が1000万円もあれば十分」と捉えるのは、楽観的だといえます。
ライフステージの中には「お金がかかる時期」というのが確実に存在します。時には年収を上回る支出が立て込む年もあるでしょう。
こうした時にあわてないためにも、ライフプランやキャッシュフローを意識した貯蓄計画が大切です。
「あの時は貯蓄の黄金期だったのに…」と後悔しないためにも、今のうちから自分に合った貯蓄スタイルを確立しておきましょう。
貯蓄においては現代に合った方法、そして自分が許容できるリスクの中で取り組むことが重要です。それぞれの貯蓄手段について、まずは情報収集から始めてみましょう。
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
参考資料
- 国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」(令和3年9月)
- 総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)」(2022年5月10日)
- 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日)
太田 彩子