4月19日は「養育費の日」、年々注目度が高まる背景は?

4月19日は「養育費の日」です。御存知でしたか? これは母子家庭を支援するために設立された非営利活動法人(NPO法人)の「Wink」が制定した日です。

その名の通り、語呂合わせ(よういく=419)から、養育費について考える日ですが、2004年4月19日に民事執行法が改正されたことにも起因しています。従来は養育費の支払いが遅れるたびに裁判所に給与等の差押えの強制執行を申立てる必要があったのですが、この法改正により、一度の手続きだけで将来にわたって差押えができるようになりました。

法改正後の現在は、相応のシンポジウムも実施されるなど、世間一般に定着した感があります。そして、「養育費の日」が定着した背景には、離婚件数の増加や養育費の未払いなど、深刻な社会問題があると言えましょう。

「養育費」とは何か?

まず、「養育費」とは何でしょうか?

民法などによる定義としては、「未成熟子が社会自立をするまでに必要とされる費用」とされています。「未成熟子」や「社会自立をするまで」など具体的な年齢や期間が曖昧になっていますが、“子供が成人するまで”と考えられます。

そして、その多くが、“離婚した後、子供を養育しない他方の親が支払う費用”となります。なお、養育費は離婚の際に問題となる「親権」と直接的な関係はありませんが、現実的には、“親権を持つ=子供を養育する”となるようです。

離婚件数はピークを打った後も高水準で推移

養育費の発生起因は離婚です。日本の離婚件数は、高度成長期は年間7万件前後で推移していました。しかし、1965年頃から徐々に増加し始め、2002年にはピークとなる29万件を記録しました。約37年間で4倍超に増加したわけです。

その後は、婚姻件数の減少や景気低迷などもあり、緩やかな減少傾向にありますが、2015年実績の22万6千件は依然として高水準と言えましょう。

ちなみに、婚姻件数を見ると、ピークは1972年の約110万件でした。その後はほぼ一貫した漸減傾向にあり、2015年実績は63万5千件まで減っています。

養育が必要な子供のいる離婚は全体の6割水準か?

離婚の際に大きな問題となるのが、子供の養育です。少し古い統計データですが、2008年の離婚件数25万1千件のうち、養育を行わなければならない子供がいる比率は57%でした。

その後の推移は不明ですが、ザックリ考えると、離婚する夫婦のうち約6割に子供の養育が発生すると思われます。

養育費の支払いは、あくまで当事者間の決め事

その際に決められるのが養育費の支払いです。ただ、離婚時における養育費の支払いに法的義務はありません。あくまでも、当事者間による決め事であることに注意が必要です。

前述したように、養育費は、“子供を養育しない他方の親”が“養育をする他方の親”に支払う費用です。従来は、前者が主に「夫」、後者が「妻」という構図でしたが、最近はこれが逆になるケースも少なくないようです。つまり、母子家庭ではなく、父子家庭が増えているということです。

養育費には詳細なケースに分類された「相場」が存在

さて、養育費はどのくらいかかるのでしょうか? 実は、養育費は養育する子供の人数、年齢、支払者(従来は「夫」)の年収、養育者(従来は「妻」)の年収、給与収入か自営年収かなど、詳細な条件ごとに“相場”が決まっています。

これは、東京家庭裁判所のホームページに「養育費・婚姻費用算定表」が掲載されており、そこで調べることができます。離婚裁判で調停が必要な場合は、この算定表が用いられているようです。

具体例を見てみましょう。たとえば、離婚した夫(支払者)の給与年収が800万円で、扶養者(妻)の給与年収が250万円、14歳未満の子供が1人の場合を見ると、夫が支払う毎月の養育費は6~8万円です。また、子供が15~19歳の場合は8~10万円となっています。

決定要因が「所得」ではなく、「収入」となっていること等から、この金額は負担が大きいと言えるのではないでしょうか。

支払者の経済破たんで養育費の未払が多発

さて、最近大きな問題になっているのが、この養育費の未払です。冒頭に記したように、現在は養育費の未払に対しては給与の差し押さえ等がしやすくなっています。

ところが、景気低迷に伴う収入減やリストラなどによる失業により、支払者(主に「夫」)の支払能力が著しく低下するケースが多発している模様です。現在の養育費支払いは、支払者の年収が大きな決定要因になっており、言い換えると“支払者が払える範囲内で支払う”という前提なのです。

良し悪しは別として、支払者も一定限度は保護されていると言えます。

最大の被害者は子供、救済する社会システムが必要不可欠

そうなると、養育者(主に「妻」)には大きな負担がかかり、貧困化の大きな要因となります。しかし、このように生活苦に陥る扶養者を救済・支援する社会システムは、ほとんど整備されていないと言えましょう。「養育費の日」にあたり、改めてこうした支援制度の拡充を真剣に考える必要があります。

確かに、離婚は当事者間の問題ですが、最大の被害者はその子供です。支援・救済するのは、支払者でもなく、扶養者でもなく、何の罪もない子供であることを今一度認識することが重要と考えます。

LIMO編集部