2022年6月7日に行われた、株式会社東邦システムサイエンス2022年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社東邦システムサイエンス 代表取締役社長執行役員 小坂友康 氏

目次

小坂友康氏:株式会社東邦システムサイエンス代表取締役社長の小坂です。当社の決算説明のサイトにアクセスいただき、誠にありがとうございます。ご視聴いただいているみなさまには、この動画を通じて少しでも当社に興味を持っていただければ幸いです。

本日はご覧の流れでご説明します。参考資料については、別途ご覧ください。

当期の経営環境

まず2022年3月期の業績をご説明します。2022年3月期の日本経済は、ウィズコロナが定着する中で徐々に回復の動きが見られました。しかし、ロックダウンを実施する国があったり、ロシア・ウクライナ問題等が新たに発生し、不安定な状況となりました。

我々の属する情報サービス業において、2021年度はITバブルの年であったと感じています。背景としては、コロナ禍を奇貨に、やや必要に迫られてではありますが、社会全体のシステム化が一気に加速したことが挙げられます。

また、新型コロナウイルス感染症が発生した2020年度は、案件の延期や中止が相次ぎましたが、この反動で2021年度がSIバブルになったと感じています。

注力した取り組み事項

このような中、当社が注力した取り組み事項はスライドのとおりです。主要なお客さまごとに組織を束ねてアカウント戦略を強化し、コミュニケーション能力に長けた有能なSEを営業にシフトして受託率を上げてきました。

業務・ITそれぞれに強化担当を割り当て、マネジメントに長けた役員をPMO責任者に任命し、チェック体制を強化するとともに、現場を知りコミュニケーション能力に長けたSEを採用に抜擢し、採用部門も強化しました。

また、持ち帰り開発によって人的リソースの有効活用と人材活用を図り、経営会議の中でM&Aの対象となる企業をピックアップし、検討してきました。

2022年3月期 業績ハイライト

このような取り組みの結果、2022年3月期の業績は、売上は前期比16.6パーセント増、営業利益も同23.3パーセント増となり、売上、営業利益ともに過去最高業績を更新しました。

セグメント別売上高

セグメント別売上高です。ここには記載していませんが、売上のうち非金融の占める割合が、21.5パーセントから24.5パーセントに3ポイント上昇しており、当社としてDX開発に注力する過程で非金融の比率が上昇しています。

業種別売上高 (ソフトウェア開発)

業種別売上高です。例年、若干の濃淡はありますが、2022年3月期はすべての業種で前期比プラスとなりました。その中でも、銀行が62.4パーセントと伸びが大きく、非金融の通信、その他も伸びました。

業種別売上分析(ソフトウェア開発)

続いて、業種別の売上分析です。銀行は、制度改定対応に加え、当社が担当する市場系業務で保守領域が拡大したため売上が増加しました。証券は、勘定系、モバイル系のエリアが拡大しました。

生命保険は、ペーパーレスによる効率化等を狙った基幹系システムの刷新や、非対面ビジネスを狙ったフロント系システムの開発により売上が拡大しました。損害保険は、一部のお客さまの統合案件に加え、別のお客さまで新しい基幹システムがスタートし、プラス基調となりました。

非金融では、通信プラットフォーマーのお客さまにおいて、クラウドやアジャイル、データ分析などのDX案件が非常に活況な状況です。非金融のその他では、医療福祉系業務で自動化を図る大規模なテーマ開発を行っており、また、公共系のマイナンバー案件が受注でき売上が伸びました。

営業利益分析

営業利益分析です。前年度からの増減としてご説明します。グラフの左から、まず前年度より売上が20億円増えたため、その増収効果で3億5,900万円の増益となりました。続いて売上総利益率が上がったことで、100万円の増収となりました。一方、販管費は採用部門、教育部門、PMO部門を強化したため、1億1,000万円ほど増えています。

以上の結果、営業利益は前年度よりも2億5,100万円増え、増減率としてはプラス23.3パーセントとなりました。

【トピックス】CHEER証券システム運用サービス受託

1つトピックスをご紹介します。東海東京フィナンシャル・ホールディングスさまのグループ会社で、スマートフォン専業証券会社であるCHEER証券さまがこのたび新規開業し、そのシステム運用を当社が受注しました。

今後は運用だけでなく、業務システムのコンサルから開発、運用、保守まで、CHEER証券さまのDX戦略をトータルで支援していきます。

当社を取り巻く環境(概況)

続いて、2023年3月期の業績見通しです。まず概況ですが、今後の日本経済は新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かい、持ち直す動きが見られるとのことです。一方、物流の停滞や原材料価格の高騰など、先行きは依然として不透明な状況です。

情報サービス業界においては、プラス面として、当社が強みを持つ金融機関のIT投資が増加傾向にあります。一方、マイナス面として、売上高の伸展率が若干下降気味であること、また依然として技術者不足であることが挙げられます。

当社を取り巻く環境(当社)

そのような中、当社を取り巻く環境は表のとおり、昨年度に引き続き堅調な状況とみています。金融領域においては、統合案件やマイグレーション対応に加え、モバイルや非対面といったビジネス変革を図るフロント系システムの刷新が活況です。非金融領域においては、DXにかかわる要素技術を扱う業務を中心に大きく進展する見込みです。

業種別 受注残高(前期比)

業種別の受注残高です。全社では前年度よりも3億6,000万円ほど受注残が増えています。よい傾向として見ているのは、全業種が伸びている点です。足を引っ張る業種がないため、戦略を立てやすくなっています。その中でも大きく伸びているのが非金融のその他ですが、こちらは比較的規模の大きなマイナンバー案件を受注したためです。

当社としては通信、公共領域を金融に次ぐ柱に育てるべく事業展開を図っており、戦略どおりではありますが、概況で説明したように今期は金融のシステム投資が活況であり、さまざまなバランスを考慮した上で事業を推進していきます。

2023年3月期 計画

2023年3月期の計画は表のとおりです。売上高の伸び率と比較して営業利益の伸び率を若干低く設定していますが、これについては後ほどご説明します。

最重点推進事項

今期の重点事項は6点です。1点目は「開発パワーの増強」、2点目は「DX開発推進センターの設置」、3点目は「事業ポートフォリオの変更」、4点目は「顧客、パートナー、ベンチャー企業とのリレーション強化」、5点目は「株式流動性の確保、ガバナンス、リスク対応強化」、そして6点目は「サステナビリティ経営の推進」です。

攻めの投資

重点事項を推進する中で、今期は未来の業績確保を狙い、攻めの投資を積極的に行っていくことを決断しました。

まず人的投資については、採用の投資をアップさせます。新卒は60名以上、中途も10名以上採用すべく投資を行っていきます。そして初任給、ライン手当、スキル手当をアップさせます。若年層、壮年層を中心に給与をアップさせ、モチベーションの向上とともに社員の流出を防いでいきます。

また、人財マネジメントシステムも構築していきます。これにより計画的な人的リソースの増強と配置、そしてDX技術力・業務力の徹底向上を図っていきます。

前期は健康保険組合連合会より「銀」認定を取得しました。今期は「金」認定を取得し、さらに働きやすい環境を作っていきます。

事業向け投資においては、DX開発推進センターの設置に伴い、フロアを増床していきます。また新規事業の推進も積極的に行い、営業費も投資を強化していきます。そして他社との協業、M&Aも推進していきます。

業務の効率化の観点では、クラウドを用いた作業環境の構築、セキュリティの強化、BCP対策などを進めます。将来の業績確保に向け、今年度はしっかりとした足場を作っていきます。

株主還元施策

配当についてです。2022年3月期は中間配当を5円増配し、年間30円としました。配当性向は38パーセント台です。2023年3月期も引き続き年間配当30円を予定していますが、2023年3月期から始まる中計では配当性向40パーセント程度をうたっているため、今後攻めの投資をしっかり行いながらも業績を確保し、株主のみなさまの期待に応えていきたいと思います。

当社の目指す姿 (背景)

ここからは、今般策定した長期経営ビジョンならびに中期経営計画について説明します。変化の激しい時代の中で当社としての存在意義、あるべき姿を検討し、それを長期経営ビジョンとして策定しました。

策定の背景として、みなさまもご存じとおり、この数年でビジネス環境が大きく変化しています。

まずはDX化の加速です。人口減少社会における労働力の不足、コロナ禍を奇貨とした消費者のニーズや価値観の変化、市場のグローバル化などにより、より一層業務の効率化や新しいサービスの創出が求められるようになりました。

IT技術者に求められる役割も変わってきました。具体的には、IT技術者は、これまでのようなお客さまから依頼された業務を完結する任務完結型から、課題解決型・価値創造型に変わる必要があります。

また、サスティナビリティ経営では、今後は経済のみではなく、社会や環境に配慮した経営が求められます。

さらに、2022年4月に東京証券取引所の市場区分の再編が行われたため、各企業は将来の方向性が問われてきました。

当社の目指す姿 (Vision)

このような大きな時代のうねりの中で、BtoBをターゲットとする当社が目指す方向、あるべき姿を検討し、今般、スローガンとビジョンを新たに策定しました。「お客様と共に未来を創る」をスローガンに、「お客様が求める価値を共に創造し実現すると共に、その先にある社会課題の解決を図り、持続可能な未来社会を創造する。」をビジョンとして活動します。

当社の目指す姿 (全体像)

全体像としては、スライドに記載の図のとおりです。縦軸を経済的な価値、いわば継続的な事業拡大、横軸を社会的な価値、いわば社会課題の解決とし、この両軸の価値を当社は地球環境を含むさまざまなステークホルダーとの関わりの中で向上させ、企業価値の最大化を図ります。

当社の目指す姿 計数目標

2030年に目指す事業指標は、スライドに記載のとおりです。売上高は250億円、営業利益率は10パーセント以上、ROEは15パーセント以上、配当性向も40パーセント以上に引き上げます。

当社の目指す姿 (マテリアリティ)

当社にとっての重要課題についても議論し、4つのマテリアリティとしてまとめました。我々の仕事は、自社活動やお客さまに提供するシステムを通じて、豊かな未来社会、安心・安全な未来社会、いきがいのある未来社会を作ること、そして透明性の高いガバナンスの効いた会社になることです。これを定義することで、我々が何のために仕事をするのか考え、また日々の仕事を単なる作業から付加価値へと変えます。

課題認識

今までお話しした「長期経営ビジョン2030」のマイルストーンとして、2期6年にわたる中期経営計画を策定したため、それについてご説明します。当社にとっての課題を6点にまとめました。

1点目は、「技術者不足への対応」です。新卒・中途の採用を強化し、まずは社員の絶対数を増やします。そして、DX開発推進センターを活用し、DX技術者をOJT育成します。

2点目は、「活況なデジタルビジネスへの対応」です。データ分析や非接触、非対面という価値創出ビジネスを受注します。

3点目は、「事業ポートフォリオの見直し」です。今時点、DX需要が高いのは非金融分野です。金融の強みを維持しながらも通信、公共の事業を拡大します。

4点目は、「人月ビジネスからの脱却」です。今回立ち上げた運用ビジネスのように、サービス提供型となり得るビジネスを構築し、収益の安定確保を図ります。

5点目は、「株式流動性の確保とガバナンス強化」です。当社はプライム市場を選択しましたが、今時点で2つの基準に抵触しています。まずはその対応を図りながら、それのみではなく正規のプライム基準を意識し、事業活動を進めます。

6点目は、「サスティナビリティ経営の推進」です。人権や環境等、非財務活動にも配慮して経営を進めます。

戦略基本方針

このような課題を解決すべく、基本方針として4本の柱を定めています。1つ目は、「トラディショナルITビジネス2.0」です。お客さまの大切なソフトウェア資産を品質高く維持管理します。

2つ目は、「デジタルITビジネス2.0」です。お客さまが構築する新しい付加価値サービスの支援をします。

3つ目は、「クリエイトITビジネス2.0」です。自分たちが生み出すサービスで企業や社会に貢献します。

4つ目は、「経営基盤の強化2.0」です。DX人材の確保・育成、高い株式流動性の確保、ガバナンス強化、サスティナビリティ推進に力を入れます。

計数目標

中期経営計画期間における計数目標です。今回の中期経営計画は2期6年を設定しており、2024年度までに売上高は165億円、営業利益は15.8億円、2027年度までに売上高は200億円、営業利益は20億円を目指します。CAGRとしては、おおむね7.4パーセントです。

現在、企業のデジタル経営志向の高まりから、DX投資が大きく加速しています。その流れを確実に捉え事業を拡大させ、そしてプライム企業に求められる非財務活動についても推進し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ります。

以上、2022年3月期の決算についてお伝えしてきました。応援してくださるみなさまに少しでも恩返しできるようにこれからも精進しますので、今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。これをもって、2022年3月期の決算説明を終了します。長時間にわたりご視聴いただき、誠にありがとうございました。

記事提供: