経済学者の言っている事が理解できるようになる

経済学者が経済政策について語る時、自信満々に語る人も多いので、「偉い先生が言っている事だから、この経済政策は正しいに違いない」と思っている人も多いようですが、そこをしっかり見極めるためには、情報の受け手が経済学の基本的な考え方を知っている必要があります。

経済学を学んだ経験があれば、その政策が導かれた時の経済学者の思考回路が理解でき、その政策が推進すべきものか否かを判断する事が出来るようになるでしょう。

一例をあげると、主流派の経済学者は失業を気にしません。筆者が若手銀行員として景気の予想に従事していた頃、高明な経済学者と雑談をする機会に恵まれました。「円高で失業が増えて大変ですね」と申し上げた所、「円高で輸出企業の社員が失業しても、気にする事はない。彼らは輸出企業以外の職場で働けば良いのだから」と言われたのです。

精緻な経済学理論としては、「失業した人はいつまでも無収入であるよりも、安い賃金でも働けるところで働くはずだ。だから失業者は特に対策をとらなくても時間とともに減っていく」ということになるらしいのです。それを知っていた筆者は、彼がそう発言した理由は理解できましたし、彼が現実を見つめていないという事も理解できたのでした。

本稿は、以上です。なお、本稿は拙著「大学の常識は、世間の非常識」の内容の一部をご紹介したものであり、内容はすべて筆者の個人的な見解です。筆者が大学で感じた違和感が綴ってありますが、海外旅行の旅行記のように、「違いの説明」であって、批判ではありません。

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塚崎 公義