経済学は未完の学問
経済学は、様々な極端な仮定を置いて、何が起きるかを考えよう、という学問です。たとえば人間はすべての情報を知っていて必ず合理的に行動し、取引コストがかからないとすれば何が起きるのか、といった具合です。
有名なのは、一物一価の法則でしょう。世界中の店のリンゴやミカンの値段は同じである、というものです。他の店より高い値段をつけた店は客が全く来ないので値下げをせざるを得ないから、という事のようです。これだけ見ても、経済学が未完で、現実を説明できるレベルに達していない事がよくわかりますね。
ひとたび「人間は衝動買いをする事がある」という条件を加えようとすると、どういう場合にどのような衝動買いをするのか、といった事を細かく定義しなければならず、とても複雑になってしまうので、現在の経済学では扱えていないのです。
高校でニュートンの法則を習いました。「引力と空気抵抗がなければ、投げたボールは真っ直ぐ飛んでいく」というものです。もちろん、これは初級物理学であって、実際には上級物理学を使って宇宙ロケットを飛ばしたりしているわけですね。
人間の世界では「完全な情報を得ることは難しい」「取引コストが存在する」「人間はまちがえる」「人間の心理が経済活動に影響する」といった事が経済現象を複雑にしているわけですが、物理の世界にはそういう事がありませんから、物理学は簡単に上級レベルまで進化したわけです。物理学者が羨ましいです(笑)。
経済学は、今はニュートンより少し進んだ程度のレベルでしょうが、あと100年もすれば、心理学との共同研究などが進んで、経済が理解できる学問になっていると期待しています。