2022年6月8日に公開された、新田ゼラチン株式会社2022年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:新田ゼラチン株式会社 代表取締役社長 執行役員 尾形浩一 氏

2022年3月期決算説明

尾形浩一氏:みなさま、こんにちは。新田ゼラチンの尾形でございます。本日は、2022年3月期の決算と2023年3月期の業績予想について説明いたします。

目次

本日の内容はこちらになります。

会社概要

会社概要については、上場取引所はプライム市場へ移行しました。

1. 2022年3月期 実績

まず、2022年3月期の実績について説明いたします。

業績推移①:売上高

売上高は317億8,300万円、前年同期比で4.2パーセント、12億6,800万円の増収となりました。後ほど詳しく述べますが、日本での売上増加と、北米やアジアでのコラーゲンペプチドの需要増が大きく寄与して、前年度の接着剤事業の売上減少分を補ったかたちとなりました。

連結売上高増減要因(前年同期比)

こちらは売上高の増減要因を示したものです。前年度は接着剤事業の売上高が約20億円ありましたが、事業譲渡に伴いこの分は減少しています。一方で、日本では需要の回復に加えて、原料費や輸送コストの上昇分を価格に転嫁し、増収となりました。

北米では景気回復によるゼラチン、コラーゲンペプチドの売上増加により、11億円あまりの増収となりました。インドは昨年度、売上高が最も伸びており、アジアにおいては、中国で厳しい状況が続きましたが、東南アジアや韓国でコラーゲンペプチドの売上高が伸びたことから増収となりました。

業績推移②:営業利益

営業利益は、前年同期比15パーセント増益の15億6,000万円となりました。北米、インドの増収に伴う増益が大きく、日本では価格改定が進みましたが、急激な輸送コストの上昇を完全には吸収できず、わずかながら減益となりました。

連結営業利益増減要因(前年同期比)

営業利益の増減要因です。接着剤事業は前年度が赤字であったため、その分が増益の要因となります。北米、インド、アジアでの需要は旺盛で、売上が伸びたことから増益となりました。

業績推移③:経常利益

経常利益については、営業利益の増加と為替差益の影響で、前年同期比3億6,900万円増加の17億3,400万円となりました。為替差益は、子会社への貸付金等が円安により増加したためです。

業績推移④:親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比1,500万円減少の7億2,600万円となりました。インドが大きく増収増益となり、法人税の支払いが増えたことや、合弁相手や一般株主分の非支配株主帰属利益が増加したことから、前年度並みにとどまりました。

各地域ごとの市場の変化

市場の変化を地域ごとにまとめました。

日本では新型コロナウイルス変異株の感染拡大がありましたが、店舗販売等は回復しています。一方、外食産業は依然として厳しい状況です。

北米では、健康意識の高まりからコラーゲンペプチドなどのサプリメント需要が伸びていますが、競争も激化しています。日本から北米に輸出している牛骨ゼラチンは、海上輸送の大混乱の影響で売上高が減少しました。インドでは相変わらず原料の価格は上昇していますが、旺盛な需要に支えられて売上高は伸びています。

アジアでは美容用途のコラーゲンペプチドの需要が韓国、台湾、タイなどで非常に好調で、売上高が増加しました。

販売区分

ここからは各販売区分の実績について説明いたします。

当社の事業セグメントはコラーゲン事業の1セグメントですが、販売区分別に食品用途のフードソリューション、健康・美容・医薬用途のヘルスサポート、その他のスペシャリティーズの3つに分けています。

販売区分別 売上高

フードソリューション、ヘルスサポートとも売上高は増加しました。スペシャリティーズの減少は、接着剤事業の売上がなくなった影響です。

フードソリューション

フードソリューションでは、日本でのグミ用や業務用などの売上が増加し、北米でもグミ用をはじめ食品用途が伸びました。一方で、家庭向けは需要が落ち着いてきました。その結果、売上高は125億200万円と前年同期比8億4,900万円の増加となりました。

ヘルスサポート

ヘルスサポートでは、日本、北米、アジアでコラーゲンペプチドの売上高が増加しました。カプセル用ゼラチンの需要も堅調で、インドでは大きな売上の伸びにつながりました。

ただし、流通の混乱から日本や北米では供給が追い付かないこともありました。バイオメディカルについても、日本での売上が増加し、売上高は154億8,000万円で、前年同期比プラス10パーセント、14億900万円の増加となりました。

スペシャリティーズ

スペシャリティーズでは写真用ゼラチンの販売は増加しましたが、接着剤の売上がなくなったため、前年同期比で9億8,900万円売上高が減少しました。

貸借対照表 (B/S)

連結貸借対照表の増減要因について、簡単に説明いたします。

現金・預金は30億4,600万円で、前年同期比9億7,800万円の減少となりました。前年度は新型コロナウイルス感染拡大による不測の事態に備えて積み増ししましたが、状況が落ち着いてきたため、通常のレベルにまで減らしています。

たな卸資産の合計は104億5,700万円で、前年同期比16億300万円の増加となりました。こちらは物流混乱に対応するため、在庫を積み増しています。有形固定資産の増加、その他流動負債の増加は共に、新研究棟「みらい館」建設に伴うものです。

キャッシュ・フロー計算書 (C/F)

キャッシュ・フロー計算書です。

営業活動によるキャッシュ・フローは、在庫積み増しによるたな卸資産の増加により減少しています。投資活動によるキャッシュ・フローについては、前期に事業分離による収入があったため減少しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済により減少しました。

株式分布変化

2022年3月末時点では、個人株主の株式数が大きく増加し、その分証券会社の割合が減少しました。株主数は約1万1,600人となりました。

株主還元

配当に関しては、中間配当金7円をお支払いしました。期末配当金は7円を予定しており、年間14円を予定しています。株主優待については、スライドに記載のとおり継続していく予定です。

連結 売上高、営業利益 実績・見込み推移

連結売上高、営業利益の推移を示しています。事業譲渡等で売上高、営業利益を減らしましたが、今期はその前の水準まで回復する見込みです。

2. 2023年3月期業績予想

2023年3月期の業績予想について説明いたします。

外部環境の認識

2023年3月期の業績予想をする上で、新型コロナウイルス感染症とロシアのウクライナ侵攻の影響は考慮する必要があります。

新型コロナウイルスの影響については、中国など経済活動が一部制限されている国もあり、物流の混乱もしばらく続くと思われます。また、ウクライナの紛争はエネルギー、食料価格上昇等、世界経済に影響する可能性があります。

一方で、コロナ禍による健康意識の高まりで、スポーツ関連製品や健康食品需要はさらに増加していくと思われます。円安による輸入原料価格やエネルギーコストの上昇も考慮する必要があります。

外部環境の認識 日本

日本では、人手不足が深刻化しており、手間をかけずにおいしく料理を作ることをサポートする製品のニーズが増加しています。健康意識の高まりの中で、重要な栄養素であるタンパク質の摂取も注目されてきています。

外部環境の認識 海外

海外では今後、新型コロナウイルス感染症との共生が進み、景気の回復に拍車がかかると思われます。ただし、ロシアのウクライナ侵攻は、エネルギー価格、穀物価格の上昇を招いています。

特にヨーロッパでは、穀物不足による牛や豚の飼育頭数の減少がすでに顕在化しており、我々の原料価格の上昇が懸念されます。

北米・アジアでは、景気の回復によってゼラチンやコラーゲンペプチドの需要は依然堅調に推移しています。

今後の戦略課題

以上のような我々を取り巻く環境から、2023年3月期はスライドにお示したような戦略課題を設定しました。

フードソリューションでは、タンパク質補給ニーズに対応した製品を発売し、拡販していきます。

ヘルスサポートにおいて、日本では、消費者向け製品のリブランディングやマーケティングの強化により直販事業の拡大を図ります。海外では、アジアや北米で美容用途のコラーゲンペプチドの販売拡大を目指します。

バイオメディカル分野では研究・生産の機能を集約した新研究棟「みらい館」を建設します。また「beMatrix」製品の販売をグローバルに拡大します。

2023年3月期 業績予想

2023年3月期の売上高は360億円としました。営業利益は、ほぼ2022年3月期並みの16億円を確保する計画です。経常利益は、為替差益を盛り込んでいないため15億円、当期純利益は、今のところ特別損失および特別利益は想定していないので、9億円としました。

販売区分別売上高予想

フードソリューションは、国内と北米の堅調な販売の継続を見込んで11.2パーセント増の139億円、ヘルスサポートは、国内及び北米、アジアでの美容用途のコラーゲンペプチドのグローバルでの拡販により14.0パーセント増の176億4,000万円を見込んでいます。

スペシャリティーズは、副産物等の売上高増加により、17.4パーセント増の44億6,000万円とします。

設備投資

設備投資額は、新研究棟「みらい館」の建設費の一部、約8億円を含む20億円を予定しています。その他は、日本、北米、インドの各工場の生産性向上と環境保全対応の設備が主なものです。

3. トピックス

トピックスをいくつか紹介いたします。

“イージープロテインBBP”新発売

成長が著しいタンパク質補給食品市場では、食品メーカーの商品開発をサポートすべく、コラーゲン由来のタンパク質素材『イージープロテインBBP』を2022年5月から発売しました。

「イージープロテインBBP」は、乳清タンパク質や大豆タンパク質など、ほかのタンパク質原料と比較し、低粘度で溶解性に優れており、さまざまな加工食品に加えても風味や物性を損なわない特長があります。お客さまのタンパク質補給食品の開発を支援しながら、拡販を目指します。

北海道大学 産学・地域協働推進機構内『バイオマテリアル構造部門』開設

今年の4月に、北海道大学産学・地域協働推進機構内に『バイオマテリアル構造部門』を開設し、「世界初のコラーゲン人工腱」の研究開発に取り組むことを発表しました。

前十字靭帯の断裂はスポーツ選手に多く見られるケガですが、今までは自分の体から腱を切り取ってつなぐ必要がありました。コラーゲンによる身体にやさしい人工腱ができれば、治療法は劇的に変わる可能性があります。

厚生労働省より「えるぼし認定(2つ星)」認定取得

厚生労働省から女性が活躍する職場に贈られる「えるぼし認定(2つ星)」を取得しました。今後も引き続き、女性が能力を発揮できる労働環境を整えて女性活躍の推進に努めていきます。

モーニングサテライト[TV東京系列]で紹介

今年1月に、テレビ東京の『モーニングサテライト』の取材を受けました。当社は「プライム市場の上場基準適合に向けた計画書」を東京証券取引所に提出していますが、その適合へ向けた事業活動が紹介されました。

新田ゼラチンコラーゲンチャンネル配信開始

より多くの消費者の方にコラーゲンがもっと身近なものとして興味を持ってもらう目的で、「Twitter」の当社公式チャンネル「新田ゼラチンコラーゲンチャンネル」を昨年11月に開設し、発信を開始しました。ぜひ覗いてみてください。

私からの説明は以上です。

ご覧いただきありがとうございました。

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