食品やガソリンなどの値上げが止まりません。本来、物価の値上げは賃金の上昇とセットで起こるべきものです。
しかし日本の平均年収はここ30年ほど伸び悩んでおり、実質的な生活レベルは厳しくなる一方です。
現役世代であれば、転職や副業、あるいは残業などで多少の収入コントロールは可能です。しかし年金生活になればどうでしょうか。
一定の収入の中でやりくりすることを考えると、物価の上昇は大きな不安要素となるでしょう。
そこで知っておきたいのが、年金の受け取り方の1つである「繰下げ受給」です。繰下げ受給を選択することで、受給額をアップさせることが可能です。
最大で84%も増額できるため、厚生年金の平均並みである月額15万円を受給する場合、なんと27万6000円に増額できることに。
今回は、そんな繰下げ受給の概要やメリット、さらにデメリットについて解説します。
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1. 「繰下げ受給」とはみんなが知らない「年金の受け取り方」
厚生年金や国民年金といった公的年金は、基本的に65歳から受給開始となります。
65歳よりも後に受給開始年齢を遅らせることで、受給額を増やすことができます。これを年金の繰下げ受給といいます。
しかし厚生労働省の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、実際に繰下げ受給を選択した人はここ数年1%台しかいないのです。
制度が知られていないことも原因の1つとされています。このため、繰下げ受給は「みんなが知らない受け取り方」と言われています。
1.1 繰下げ受給したら実際にどれくらい増額できる?
繰下げ受給をする場合、1ヵ月受給を遅らせるごとに0.7%増額されます。区切りがいい1年ごとの増額率を見てみましょう。
- 66歳0ヵ月:8.4%
- 67歳0ヵ月:16.8%
- 68歳0ヵ月:25.2%
- 69歳0ヵ月:33.6%
- 70歳0ヵ月:42%
- 71歳0ヵ月:50.4%
- 72歳0ヵ月:58.8%
- 73歳0ヵ月:67.2%
- 74歳0ヵ月:75.6%
- 75歳0ヵ月:84%
最大75歳まで繰下げた場合、なんと84%もの増額になります。仮に月額15万円の場合、27万6000円に増える計算です。
しかし、ここで「75歳まで受給をずらすと、その分回収できるのか?」という疑問がわいてくるかもしれません。
確かに受給期間が短ければ増額してもトータルでは損をするという考え方もできます。そこで次では、損益分岐点のシミュレーションをしてみましょう。