4. 商船三井の株式のリスクとは
足元で株価が堅調で、配当利回りも高く、株主優待も拡充。
こんなにポジティブ材料のある商船三井について、今から株式を買おうか検討されている投資家の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、今から買ううえで、ぜひ頭に入れておきたいリスクがあります。
4.1 リスク1:不安定な業績
商船三井に限らず、海運ビジネスはもともとハイリスクな事業です。
世界各国の資源需要の波の影響を大きく受けるほか、タンカーの製造リードタイムが長く、需要量の変化に対して供給力の柔軟な調整が難しいといった点が理由として挙げられます。
結果として、商船三井の売上高の推移は下図のように基調が読みづらいです。
また、営業損益については下図のように黒字・赤字を転々としています。
とりわけ、ここ数年の業績にフォーカスすると、売上高は減少傾向にあり、営業損益も悪化のトレンドにあります。
この実績と足元の株価推移を見比べると、方向感にミスマッチさが感じられるのではないでしょうか。
もちろん、「事業環境の改善に伴って、業績回復を見越した買いが先行して株価を押し上げている」といった可能性もあるでしょう。
しかし、3.7倍近くの株価上昇を踏まえると、「市場が抱いている期待は過大過ぎないか?」という点についても、意識を払うことが重要ではないでしょうか。
4.2 リスク2:株主優待に関する不安定な環境
商船三井は株主優待の拡充を発表しましたが、実は株主優待についても、世の中の動向は不安定となっています。
2022年に入って、日本たばこ産業・JT(2914)やオリックス(8591)といった、優待が人気な企業が相次いで優待の廃止を発表しました。
理由について両社は「株主還元の公平性を高めるため」と説明しています。
株主優待は、機関投資家と個人投資家で受ける恩恵に差の出る制度です。
東証が機関投資家を意識した市場改革を行うなど、金融市場全体でコーポレート・ガバナンスへの意識が高まる中、優待は廃れていく可能性があります。
商船三井ももしかしたら近い将来、株主優待を廃止するかもしれません。