2. 知られざる年金請求の「時効」

年金には時効があり、これを過ぎると年金を受け取る権利が消滅してしまいます。

きちんと請求するまでは、あくまでも「年金を受ける権利(基本権)があるだけ」という状態なのです。

この年金を受ける権利(基本権)は、権利が発生してから5年を経過したとき時効により消滅する」と定められています。(国民年金法第102条第1項・厚生年金保険法第92条第1項)

実際に老後の要となる年金を請求し忘れることは少ないですが、それでもゼロではありません。特に請求漏れが発生しやすいポイントをご紹介します。

2.1 繰下げ受給をするとき

国民年金も厚生年金も、最大75歳まで繰下げ受給をすることで受給額が割増になる制度があります。

もし繰下げ受給を選択する場合、「年金の時効」という落とし穴に注意が必要です。

例えば老齢基礎年金も老齢厚生年金も同時に繰り下げることを決めたのであれば、繰下げ受給を希望する時期に「繰下げ請求書」を提出することで受給開始となります。

しかし繰下げ待機を選択した場合であっても、繰下げ受給を選択せず、65歳からの年金をさかのぼって受け取ることが可能なのです。

このとき、70歳以降に65歳からの年金をさかのぼって受け取ることを選択した場合は、手続き時点から5年以上前の年金は時効により受け取ることができなくなる点※に注意しましょう。

※令和5年4月1日以上に年金請求を行う方を対象とした、年金を受け取る権利が発生してから5年経過後に、繰下げ受給の申出を行わず老齢基礎(厚生)年金をさかのぼって受け取ることを選択した場合は、請求の5年前に繰下げ受給の申出があったものとみなして増額された年金を一括で受け取ることができるという特例があります。

またどちらかの年金のみを繰下げ受給する場合など、状況により必要なステップが異なります。手続きが複雑になるため、請求が漏れないように注意する必要があります。