5. JTやオリックスなどが株主優待を廃止する理由③:流動性改善に対する意識の向上
最後に、流動性の観点から。
今回、東証は「流通株式」を以下のように定義づけました。
『流通株式とは、上場有価証券のうち、大株主及び役員等の所有する有価証券や上場会社が所有する自己株式など、その所有が固定的でほとんど流通可能性が認められない株式を除いた有価証券を言います』
『東証では、以下の者が所有する株式を流通性の乏しい株券等として定めています。
- 上場株式数の10%以上を所有する者又は組合等
- 上場会社(自己株式)
- 上場会社の役員
- 上場会社の役員の配偶者及び二親等内の血族
- 上場会社の役員、役員の配偶者及び二親等内の血族により総株主の議決権の過半数が保有されている会社
- 上場会社の関係会社およびその役員
- 国内の普通銀行、保険会社、事業法人等
上記の他、当取引所が固定的と認める株式は、流通株式数から除かれます』
かなりカッチリ定義づけていますが、ポイントは最後の「上記の他、当取引所が固定的と認める株式は、流通株式数から除かれます」です。
新たな市場の取り組みは始まったばかりでもあり、含みを持ったこの表現には、「今後新たな定義が増える」可能性も示唆されているのではないでしょうか。
東証は本質的に「市場に出回る株式を増やす」ことを目指しています。
一方、株主優待を最大の目的に株を保有する個人投資家の中には、「株価変動に関係なく株を持つ」という考えの人もいます。
実際、吉野家ホールディングス(9861)が2022年3月4日に発表した個人株主のアンケート調査によると、株式の保有方針について「継続保有(株価水準によらず売却予定は当面ない)」が80.3%と極めて高い結果となりました。
「株価に関係なく優待目的で何年・何十年も保有される株式」も、東証のいう「所有が固定的でほとんど流通可能性が認められない株式」に本質的には該当するのではないでしょうか。
優待で人気のJTやオリックスが優待を廃止する背景には、こういった先回りのケアがあるのかもしれません。