2. JTやオリックスなどが株主優待を廃止する根本的な背景:東証の市場改革
株式優待の廃止が続くきっかけは、東京証券取引所が実施した市場改革である可能性があります。
東証の市場改革では、市場の名前が変更となったほか、上場に関する様々なルールが変更となりました。
以下、東証1部市場とプライム市場について、変更点の一部(流動性)をご紹介します。
まず、投資の世界で「流動性」というと、1日当たりの売買代金や発行済み株式総数に占める浮動株割合など様々な意味合いで使われますが、平たくいえば「市場で株が盛んに売買されている度合い」となります。
東証は上場基準における流動性について、「株主数」「流通株式時価総額※」「時価総額」という3つの尺度を設けており、市場改革ではここの一部にメスが入れられました。
※流通株式とは、保有が固定的でほとんど流通可能性が認められない分を除いた株式。
具体的には、以下のようになります。
- 株主数:2200人以上(旧)→800人以上(新)
- 流通株式時価総額:10億円以上→100億円以上
- 時価総額:250億円以上(変更なし)
株主数の最低ラインは2200人から800人と、6割減。
一方、流通株式時価総額の最低ラインは10億円から100億円へと、10倍に。
数字の変化を見るに、市場改革はかなり抜本的な見直しだったことがわかります。
では、この改革がなぜ「優待の廃止」のきっかけとなるのでしょうか。
執筆者
1991年生まれ。新潟県新潟市出身。2022年に株式会社モニクル傘下の株式会社ナビゲータープラットフォームに入社し、現在はメディア事業部・メディアグロース企画推進室マネージャー。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」を中心に、多くの読者の方に幅広いコンテンツを届けるための戦略立案に従事している。
それ以前は、LIMO編集部にてアシスタント・コンテンツマネージャー(ACM)として従事。第一報として報道されるニュースを深堀りし、読者の方が企業財務や金融に対する知的好奇心を満たしたり、客観的データや事実に基づく判断を身に付けられたりできる内容の記事を積極的に発信していた。
入社以前は、株式会社フィスコにて客員アナリストとして約20社を担当し、アナリストレポートを多数執筆。また、営業担当として、IRツール(アナリストレポート、統合報告書、ESGレポートなど)やバーチャル株主総会サービス、株主優待電子化サービスなどもセールス。加えて、財務アドバイザーとしてM&Aや資金調達を提案したほか、上場企業向けにIR全般にわたるコンサルティングも提供。財務アドバイザリーファームからの業務委託で、数千万~数十億円規模の資金調達支援も多数経験。
株式会社第四銀行(現:株式会社第四北越銀行)、オリックス株式会社でも勤務し、中小・中堅企業向け融資を中心に幅広い金融サービスを営業した。株式会社DZHフィナンシャルリサーチでは、日本株アナリストとして上場企業の決算やM&A、資金調達などのニュースと、それを受けた株価の値動きに関する情報・分析を配信。IPOする企業の事業・財務を分析し、初値の予想などに関するレポートを執筆。ロンドン証券取引所傘下のリフィニティブ向けに、週間・月間レポートで、日本株パートを執筆。経済情報番組「日経CNBC」にて毎月電話出演し、相場や株価の状況も解説していた。
新潟県立新津高等学校を経て、2013年に慶応義塾大学商学部を卒業。学部では、岡本大輔研究会にて企業評価論、計量経営学を専攻していた。
最終更新日:2023/11/03