「左中間に飛んだボールをレフトとセンターが同時に取りに行って衝突、そして落球」

もしもプロ野球の試合でこんなエラーが起きれば、当然のことながらそのレフトとライトの選手は厳しく批判され、珍プレーとして笑いのネタにもなるでしょう。

古くから「好プレー珍プレー集」がTV放送されてきたこともあって野球ファンはエラーを正しく認識し、それを楽しむ術を確かなものにしてきました。一つの文化として認知されていると言っても差し支えないでしょう。

1. エラーをエラーといえない日本サッカーの解説

ところが、これが日本のサッカー界となると様相が一変します。

エラーをエラーと言えない「空気」があり、誰に忖度しているのかわかりませんが、メディアはゴールの素晴らしさを声高に叫ぶだけで、守る側の明らかなエラーを指摘することは皆無です。

【Jリーグ分析】日本のサッカーが強くなるための「守備のセオリー」とは何か」にも書いた通り、正確な分析なくして改善は施しようがないのですから、常日頃から間違いを正確に、かつ客観的に指摘する必要があります。

今回もまた日本のサッカーメディアが諸手を挙げて称賛したプレーを別の角度から検証してみたいと思います。

分析対象試合

  • ジュビロ磐田vsサガン鳥栖 明治安田生命J1リーグ 第7節 2017/4/16

分析対象シーン

  • 動画の0:49〜0:57まで(8秒間)

分析の対象となるのは、「ジュビロ磐田vsサガン鳥栖(明治安田生命J1リーグ 第7節 2017/4/16)。

とり上げる理由は、この試合で見られた場面(ジュビロ磐田が1−1の同点に追いつく場面)に日本サッカーが抱える最も深刻な課題が凝縮されているとも言えるからです。

この場面における中村俊輔のプレーを日本のサッカーメディアは挙って礼賛していました。

それを要約すると、以下のようなトーンです。

  • アダイウトンのゴールの一連の動作には、しなやかさとキレがあった。
  • 磐田・中村選手のPA内での縦へのドリブルに追いすがる鳥栖・吉田選手がスライディングしたところで深く切り返し、左足裏を使ってボールをベストポジションに引き寄せる。
  • 中村選手がルックアップした先にはマイナス気味に動いて相手から離れたアダイウトン。
  • 「頭よりボレーの方がいいかなと思って、少し優しめに出した」というプレゼントパス。
  • 同点弾をアシスト。

ご覧の通り、これが礼賛一辺倒の典型的な例です。

中村俊輔が上手いのは紛れもない事実ですが、とはいえ、この場面において鳥栖の選手が見せた杜撰を極める守備であれば、中村俊輔でなくとも簡単にクロスを入れることができたでしょう。

これだけド派手にジャンピング・スライディングで滑ってくれれば、U16の選手でさえ容易に交わすことができます。

この場面、もちろんDFは滑ってはいけません。

しかし日本では育成カテゴリーから「飛び込んでボールを止めろ!」と教育されているせいか、この無謀な守備をむしろ奨励する風潮があります。

完全に誤った守り方であるというのに、なぜ今にしてもなお「スライディング」が過度なまでに多いのか。育成組織やJの監督たちに問いたいと思います。

2. 滑る選手は危険な選手

フランチェスコ・トッティやロベルト・バッジョをも指揮した名将、カルロ・マッツォーネは、今から21年前、私にこう言いました。

「ジョカトーレ・シボローゾ、ジョカトーレ・ペリコローゾ(滑る選手は危険な選手)」。

つまり、簡単にスライディングする選手は、(味方を窮地に陥れるという意味で)危険な選手である、と。

事実、DF・吉田が「滑った」からこそ鳥栖は窮地に陥り、中村俊輔は十分な時間を得た上で容易くアシストを入れることができたのです。

スライディングとは、あくまでも最後の手段。この認識が広く浸透することを願うばかりです。

3. Jリーグにおける野球でいうところの「珍プレー」

そして、冒頭で述べた「左中間に飛んだボールをレフトとセンターが同時に取りに行って衝突、落球。」に酷似するのが、映像の0:49秒。

ここで鳥栖のCB(センター・バック)2枚が同時にヘッドで競りに行っています。これは、セオリーに照らして言えば、極めて“恥ずかしいプレー”です。

結果的に、このCB2枚から中村俊輔にパスが通っています。

しかし、ここでもそのエラーを指摘するメディアは皆無でしかありません。このままではいけないと考えるのが妥当ではないでしょうか。

参照資料