オバマケア代替法案の米下院採決断念で米国株が下落した1週間

先週(2017年3月20日-3月24日)の世界の株式市場は、トランプ政権の公約であるオバマケア代替法案の米下院採決が撤回され、米国株と日本株の下落が目立つ週でした。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースでTOPIXが▲1.4%、米S&P500が▲1.4%、独DAXが▲0.3%、上海総合が+1.0%となりました。

先々週は、FRBの利上げペースが想定ほど加速しないことが認識され米ドルが下落し長期金利も低下しましたが、米国株は値を保っていました。しかし先週に入ると、オバマケア代替法案の採決が困難であることが明らかになるにつれて、あらためて米ドル安、長期金利低下が進むとともに米国株は値を崩しました。

先週のポイントは、①トランプ大統領の指導力に疑問符がつきトランプラリーの支柱である税制改革、規制緩和、内需振興策の実現リスクが意識されたこと、②米国株の下落が世界株全体の急落にはつながらなかったことです。

先週の米国株では公益セクターの上昇と金融セクターの下落が目を引きます。たとえば、ゴールドマンサックスの株価は週間で▲6%下落し、年初来のパフォーマンスもマイナスに転じました。利上げペースが加速しないことに加えて、規制緩和が進まないリスクを市場が嫌気しているようです。

また、コンセンサスを下回るガイダンスを示したフォードの株価は先週▲7%下落しました。金利上昇のマイナス影響や中古車市場の荷もたれ感などへの懸念があるなか、トランプ政権の高圧経済政策に疑念が生じ投資家心理を冷やしたと言えそうです。

原油価格を始め商品市況は再び下落し、資源関連株は世界的に下げました。しかし、米国株の変調が世界に波及したわけではなく、日本を除くアジア株は堅調、欧州株の下げは限定的でメキシコ株は上昇しています。オバマケア代替法案の断念は週末のニューヨーク市場であったことから時差の影響などを考慮すべきですが、連鎖安にはなっていないことは評価すべきでしょう。

また、3月の米国PMIが製造業、サービス業ともに頭打ちになる一方で、欧州では製造業、サービス業ともに改善基調が確認されました。トランプラリーの失速をケアしている構図です。

アウトルック:新興国株と欧州株が世界株を支えるか?

今週(2017年3月27日-3月31日)はトランプラリーの失速を世界で支えることができるのかがポイントです。

米国での焦点はトランプラリーの支柱である税制改革などに移ります。議会の対応は法案毎に是々非々になると考えられるため、オバマケアのような顛末が繰り返されると考えるのはやや早計かもしれません。3月コンファレンス・ボード消費者信頼感指数、2月個人消費支出とコアデフレーターなどの指標、イエレンFRB議長発言とあわせて注意深く推移を見守るスタンスが続きそうです。

一方、改善基調の欧州では3月の独Ifo景況感指数と欧州消費者物価指数が注目です。中国の3月製造業PMIをあわせて世界経済の体温が高まることが確認できれば、欧州を起点に債券から株式へのシフトが一歩進みそうです。

椎名 則夫