4月から加速した食品を中心とした値上がりは、まだまだ止まる兆しがありません。5月も家計は厳しくなることが予想されます。
「物価があがるなら給料も上がるべき」そう考える方も多いのではないでしょうか。
残念ながら日本の給与水準はここ30年ほど伸び悩んでおり、すぐに上昇する見込みはありません。
ただし「年金収入」の場合、受け取り方を工夫することで受給額が上がることもあります。
ここではみんなが知らない年金の受け取り方をご紹介するとともに、デメリットもしっかりお伝えします。
【注目記事】「厚生年金の月平均が14万円」実はウソ⁈年金制度には落とし穴があった
1. みんなが知らない年金の受け取り方「繰下げ受給」とは
厚生年金や国民年金といった公的年金は、基本的に65歳からの受給となります。
しかし、繰下げ受給といって「受給開始年齢を遅らせる」ことで、「受給額を増やす」ことができます。
1.1 繰下げ受給したらどれくらい増額できるのか
繰下げ受給では1ヵ月受給を遅らせるごとに0.7%増額されます。1年ごとの増額率を見てみましょう。
- 66歳0ヵ月:8.4%
- 67歳0ヵ月:16.8%
- 68歳0ヵ月:25.2%
- 69歳0ヵ月:33.6%
- 70歳0ヵ月:42%
- 71歳0ヵ月:50.4%
- 72歳0ヵ月:58.8%
- 73歳0ヵ月:67.2%
- 74歳0ヵ月:75.6%
- 75歳0ヵ月:84%
最大75歳まで繰下げた場合、なんと84%もの増額になります。仮に月額10万円の場合、18万4000円に増えるのでかなりお得に思えますよね。
2. 年金の「繰下げ受給」本当にお得?損益分岐点を検証
年金を繰下げ受給した場合、本当にお得なのでしょうか。ここまで読んだ方の中には「早く亡くなると損になる」と感じた方もいるでしょう。
そこで、年齢ごとにシミュレーションしてみます。
厚生労働省の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額は約14万円。
ここから年金月額を14万円と仮定して、ざっくり試算してみましょう。(1万円未満の端数切り捨て)
2.1 繰り下げ受給せず65歳から年金を受け取る場合
- 70歳時点:840万円
- 75歳時点:1680万円
- 80歳時点:2520万円
- 85歳時点:3369万円
- 90歳時点:4200万円
- 95歳時点:5040万円
- 100歳時点:5880万円
2.2 70歳から年金を受け散る場合
- 70歳時点:0円
- 75歳時点:1192万円
- 80歳時点:2385万円
- 85歳時点:3578万円
- 90歳時点:4771万円
- 95歳時点:5964万円
- 100歳時点:7156万円
2.3 75歳から年金を受け取る場合
- 70歳時点:0円
- 75歳時点:0円
- 80歳時点:1545万円
- 85歳時点:3091万円
- 90歳時点:4636万円
- 95歳時点:6182万円
- 100歳時点:7728万円
上記の単純なシミュレーションにおいては、80歳時点までは65歳受給がお得、85歳時点からは70歳受給がお得、95歳時点では75歳受給がお得ということになりました。
ただし、何歳まで生きるのかは人によって異なります。寿命は誰にもわからないので、最後は自分で判断することになるでしょう。
3. 年金の「繰下げ受給」デメリットを3つ確認
「長生きできるかわからない」ということ以外にも、繰下げ受給にはデメリットが存在します。
厚生労働省の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、実際に繰下げ受給を選択した人はここ数年1%台しかいません。
制度が知られていないため、普及されない繰下げ受給。しっかり理解できるようあえて「デメリット」をご紹介します。
3.1 年金受取までの収入確保が必須
年金の受給を遅らせるのであれば、その間の収入を確保することが必須です。貯蓄を切り崩してしまっては、その間不安は募るばかりです。年金額を増やしても貯蓄が減るのであれば、あまり意味がありませんよね。
繰下げ受給を選択するには、長く働き続けるか不労所得を得る見込みがある必要があるのです。
健康面や家族の介護などにより、働きたくても働けない可能性はゼロではないので、慎重に選択しましょう。
3.2 年金額が増えれば税金や保険料もあがる
実は年金にも所得税や住民税、健康保険料、介護保険料などがかかります。非課税ラインだった方が課税される額になった場合、負担感が増すでしょう。
額面が増えても手取りがあまり増えないこともゼロではありません。「思った以上に増えなかった」ということもありうるのです。
3.3 加給年金が受け取れない
繰下げ受給を選択すると、加給年金が受け取れなくなります。
加給年金とは年金の扶養手当にあたるもので、条件を満たす配偶者や子どもがいる場合に上乗せされる年金のこと。
家族がいる方にとっては十分に考慮すべき点ですね。
4. 老後のことは「年金」以外にも考えておきたい
繰下げ受給についてまとめてきました。
年金を増額することにメリットはあるものの、「75歳まで働き続ける」にはさまざまな制約があります。
健康面や家族の介護状態などにより、必ず希望通りにいくとは限らないでしょう。
老後の備えでは、年金受給額だけでなく「貯蓄」という視点も必要となります。
例えば一時期話題になった「老後2000万円問題」では、年金以外に2000万円の貯蓄があると発表されました。
しかしこちらの報告では住居費用が1万円台で想定されています。もし老後も賃貸住まいを続けるのであれば、単純に家賃を上乗せして準備することが必要になるでしょう。
つまり、大事なのは個別のシミュレーションです。いくら必要になるのかについて、一度じっくり考えておきたいですね。
5. まとめにかえて
年金保険料は毎月支払っているものの、残念ながら「年金だけで生活できる」とは言えません。
老後の備えを考えるのであれば、「年金受給額をあげる」「老後資金を作る」という2つの視点が必要になるでしょう。
老後まで数十年ある現役世代では、資金を作る時間的猶予があります。貯蓄はかけられる時間が長いほど有利になるので、少しずつ準備を始めていきましょう。
参考資料
太田 彩子
