2. 日本電産の2022年3月期の業績
関氏が降板となった理由は、「業績が悪かったから」なのでしょうか。
ここで、2022年3月期の業績を見てみましょう。
2022年3月期の連結業績について、売上高は1兆9181億円(前期比18.5%増)、営業利益は1714億円(同7.2%増)となり、そろって過去最高を更新しました。
ただ、営業利益は会社予想の1900億円を下振れる着地となりました。
永守氏も説明会で「決して満足できるものではない」と発言しており、最高を更新しながらも諸手を挙げて万歳という結果ではなかったようです。
3. 日本電産のCEO交代の背景にあるのは「株価へのこだわり」
決算説明会で永守氏は、「今の株価は私には耐えられん」「(株価表示に向かって)石投げて壊したろかというぐらい」と発言しました。
永守氏としては、業績以外に、株価(または時価総額)に対する懸念も大きかったようです。
筆者は上場企業向けにIRのコンサルティングを提供していた経験を持っていますが、大企業・成熟企業の中には株価に対する意識が非常に低い企業も少なくない印象です。
「株価は市場が決めることだから」
「今は相場がよくないからね」
「利益が伸びていれば、とりあえずよし」
といったように、自社の株価や時価総額に対してどこか冷めていたり、他人事感を抱いていたりするケースは割と見る印象です。
一言で言えば、「ガバナンス意識が低い」ということになります。
半面、日本電産(もしくは永守氏)からは、株価への強いこだわりを感じることができるのではないでしょうか。
トップからこういった発言が出てくれば、投資家の中にも安心感・期待感を抱く人は少なくないのではと思います。
執筆者
1991年生まれ。新潟県新潟市出身。2022年に株式会社モニクル傘下の株式会社ナビゲータープラットフォームに入社し、現在はメディア事業部・メディアグロース企画推進室マネージャー。くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」を中心に、多くの読者の方に幅広いコンテンツを届けるための戦略立案に従事している。
それ以前は、LIMO編集部にてアシスタント・コンテンツマネージャー(ACM)として従事。第一報として報道されるニュースを深堀りし、読者の方が企業財務や金融に対する知的好奇心を満たしたり、客観的データや事実に基づく判断を身に付けられたりできる内容の記事を積極的に発信していた。
入社以前は、株式会社フィスコにて客員アナリストとして約20社を担当し、アナリストレポートを多数執筆。また、営業担当として、IRツール(アナリストレポート、統合報告書、ESGレポートなど)やバーチャル株主総会サービス、株主優待電子化サービスなどもセールス。加えて、財務アドバイザーとしてM&Aや資金調達を提案したほか、上場企業向けにIR全般にわたるコンサルティングも提供。財務アドバイザリーファームからの業務委託で、数千万~数十億円規模の資金調達支援も多数経験。
株式会社第四銀行(現:株式会社第四北越銀行)、オリックス株式会社でも勤務し、中小・中堅企業向け融資を中心に幅広い金融サービスを営業した。株式会社DZHフィナンシャルリサーチでは、日本株アナリストとして上場企業の決算やM&A、資金調達などのニュースと、それを受けた株価の値動きに関する情報・分析を配信。IPOする企業の事業・財務を分析し、初値の予想などに関するレポートを執筆。ロンドン証券取引所傘下のリフィニティブ向けに、週間・月間レポートで、日本株パートを執筆。経済情報番組「日経CNBC」にて毎月電話出演し、相場や株価の状況も解説していた。
新潟県立新津高等学校を経て、2013年に慶応義塾大学商学部を卒業。学部では、岡本大輔研究会にて企業評価論、計量経営学を専攻していた。
最終更新日:2023/11/03