欧米の金利上昇が進んだものの株高につながらなかった1週間
先週(2017年3月6日-3月10日)の世界の株式市場はまちまちでした。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースでTOPIXが+1.0%の上昇でしたが、米S&P500が▲0.4%、独DAXが▲0.5%、上海総合が▲0.2%の下落でした。
世界のその他の国々も見ると、韓国、オーストラリア、インド、シンガポールなどが上昇し、ブラジル、タイ、メキシコ、イギリスなどが下落となています。
先週のポイントは、①欧州と米国の金利が上昇したこと、②ユーロが上昇したこと、③原油価格が急落し資源価格が軟調だったことです。
欧州中央銀行の金融政策は据え置かれましたが、金融環境に対する認識が改善し2017年の予想インフレ率を引き上げ「平時」体制に戻りました。先週最大の注目だった米国の2月の雇用統計は非農業部門の雇用者数が堅調に増加し、今週開かれるFOMCにおいて利上げの実施を支持する内容になりました。
こうした環境を受けて欧米の長期金利は上昇しました。10年国債の利回りは米国で+10ベーシスポイント、ドイツで+14ベーシスポイント上がっています。また、主要通貨に対して軟調だったユーロも欧州における金融政策の方向転換で久々に底入れの兆しをみせました。
昨今の市場の習いに従えば、債券から株式への資金シフトが進んでもおかしくないのですが、結果は米株、欧州株ともに軟調に終わっています。欧州では中央銀行の金融政策の方向転換が金融株の急騰を演出しましたが、これだけでは力不足でした。米国では利上げ期待が一層高まったにもかかわらず銀行株が伸び悩みました。また需給緩和によってNY原油価格は約▲9%下落し石油関連株や資源株を押し下げました。自動車株も軟調でした。
ブラジルなどの資源国の通貨と株価の下げも目立った週でした。中国の人民元と上海株は小動きでしたが、物価指標、貿易統計、金融システムリスクに対する当局の発言など、今後注意を続けるべき材料が並びました。
先週、こちらの記事では当面の柱が出てくるのかどうかと述べましたが、米スナップも株高が続かず、柱不在だったとまとめられるでしょう。
アウトルック:利上げ後の米株上昇シナリオが見えてくるか
今週(2017年3月13日-3月17日)は、米国の連邦公開市場委員会(FOMC)と予算教書、日本の金融政策決定会合、中国の2月のマクロ指標、G20、オランダ総選挙などが材料になるでしょう。商品価格の落ち着きどころも気になります。
最大のポイントは引き続き米国です。米国の利上げはほぼ確定と言えますので、イエレン議長の発言のなかから今後の利上げのペースと連銀のバランスシート縮小にむけた展望について新たな手掛かりが出るのか注目をしたいと思います。また、トランプ政権初の予算教書が提出されますが、今回税制関連で踏み込んだものは出ないと予想されます。債券から株式への資金シフトがもう一歩進むには、米国の企業業績の拡大期待につながる大統領のツイートが待たれる局面でしょう。
日本株については、日銀からドル高期待を削ぐようなコメントや施策がでないかどうかがカギになりそうです。
椎名 則夫